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第6章 魔王降臨編
地獄の76丁目 地獄の滝修行 ~場所は煉獄~
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地獄の果て、天界へと続く巨大な山。比較的軽い罪の亡者を救済する断罪の山。七つの大罪を洗い清め天界を目指す山である。デボラの受け売りだが。
亡者はまず、山の麓にある滝で地獄の瘴気を洗い流す。それが天界へと至る第一歩だ。罪の重さで水量が、罪の質で水の色が変わるので“試しの滝”とも呼ばれているそうだが、果たして俺は何色の滝が降ってくることやら。
「あら、こんにちは。あなたがキーチローさんね? デボラさんから話は聞いておりますわ」
煉獄への入り口でデボラと別れた俺を出迎えてくれたのは金色の綺麗な髪が印象的なお姉さん。名札にはグレースと書いてある。地獄と同様、日に数十万の死者を受け入れている煉獄も巨大な建物が存在し、市役所のようにご丁寧に受付番号が存在していた。何時間待たされることかと思いきや、俺の話はすでにデボラから通してあったらしく、すぐに順番が回ってきた。
「あの、とりあえず俺は煉獄の頂じゃなくて滝行だけ受けに来たんですが」
「はい、体験コースのお申込みですね。こちらにお名前をご記入ください」
いや、なんだ体験コースって。フィットネスクラブじゃないんだから。渡された紙を見ると、“誓約書”と書いてあり、『裁判の結果と異なる判定により、滝の水量をもとに地獄に送り返されても異論はありません』と記載されていた。
なるほど、ごく稀に裁判の結果と違う反応をしてしまうことがあるのか。恐ろしい話だ。俺は裁判受けてないから不安でしょうがないが、とりあえず記入しない事には先に進めなさそうなので自分の名前を書き込んだ。
「はい、ありがとうございます。では、右手にあります棚から白装束をお選びいただき、あちらの更衣室で着替えを済ませてください。白装束はフリーサイズになってますが、あまりに窮屈な場合はお申し付けください」
まるで、健康診断のようだ。俺は案内された通り、白装束を選び、更衣室に入った。今の俺の姿は死んだ時のイメージらしく、着ている服は死んだ当時のままだ。ふぅ。しかし、力仕事を続けていたせいか少し筋肉がついたようだ気がするな。あのまま続けていたらモテボディが手に入っていたかもしれない。
着替えを済ませ、更衣室から出ると、さっきのグレースさんとはまた別の金髪の女性が立っていた。さっきのグレースさんはいかにも受付というようなおとなしい感じで制服を着た女性だったが、今度はインストラクターのようなはつらつとした女性だ。名札にはラファエラと書いてある。服装もどこかスポーティーなこれからランニングにでも出かけそうな装いだ。
「さあ! 行きましょう! キーチローさん! あ、私が担当のラファエラです! 宜しく!」
体験コースの専属なのだろうか。普通はいちいち担当なんて付けないだろうが。ラファエラさんはおもむろに両手を掴むと、ブンブンと握手を交わした。
「あ……安楽……キーチローです。宜しく……」
ラファエラさんはにっこり微笑むと、『試しの滝』と書かれた札を指してこう言った。
「試しの滝はこちらです! 張り切ってどうぞ!」
ラファエラさんの声は腹から出ているのか、すごく通りのいい声だ。悪く言えばすごく声が大きい。
「この、体験コースは地獄に落とされたものの内、しっかりと罪を償い、反省できているとみられる模範囚を試すのが本来の役目です! ここで、滝の量や質が煉獄に送られたものと遜色ないレベルであれば輪廻の輪に近づくことが許されます!」
なるほど。そのためにあったのか。通りで専属の担当が付いたりするわけだ。
「あなたの滝はどんな滝でしょうか! 私は色と量でその人となりが分かるこの修業が大好きなんです! さあ、着きましたよ!」
ラファエラさんが手を伸ばすとそこには穴の開いた崖があった。高さ10メートルぐらいだろうか大きな穴が開いているが、あそこから水が落ちてくるのだろうか。結構高い。首の骨大丈夫だろうか。
「では、ここに立ってください!」
「あ、この印の位置ですかね?」
「そうです! 手は拝むポーズで! はい! そうです! じゃあ、そのままの体制で少し待っててください!」
ラファエラさんは少し離れると操作盤らしきものをいじりだした。
「普通に流れてる滝じゃないんですね。なんか人工的というか……」
「はい! 余計なことは喋らない! 始めますよ!」
ラファエラさんがレバーを引くと、サイレンが鳴り響き放水が始まった。なんだかちょろちょろ頭にかかってるがまさかコレ? 流石、清廉けっぱ……
「あばばばばばばば」
突如、とんでもない量の水が落ちてきた。なんだコレ。少しピンクっぽい? 後、少し白い……?
「うーん、普通の量ですね」
ふ、普通の量!? これが!?
「いでででででであああああぶべっ」
「色は……怠惰少々、色欲少々。これもまあ、普通の人間レベルですね」
なら良かった。ということは、どピンクだった場合、色欲まみれって事か?危ねぇ!
「では、キーチローさん! 何でもいいんで叫び続けて下さい!」
「え!? えれべべばばぶへっ!」
「元気よく!!」
さ、叫べと言われても……何を……いででで
「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「いいですね! さあ、もっと!」
「ちくしょおおおおおおおお!」
「何がチクショウですか!?」
「強くなりたいぃぃぃぃぃ!」
「魂の叫び!! イイですね!!」
何だか知らないが、俺は強くなりたかったらしい。まさに極限状態における魂の叫びだ。無我夢中で叫んでいた。
「うおおおおおっ!」
「強くなりたいなら! 今ここでも修行できますよ! はいっ! スクワットぉっ!」
「うおぉぉぉっ! えべぇ!? ズグワッド!!!!?」
「強くなりたいならまず魂からですよ!!」
「ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!」
「もうワンセット!」
「あああああああ!」
無茶だ。無茶なことをやらされている。俺今筋肉無いのに筋トレをやらされている。ていうかあとどれくらい続ければ……。
「この放水量なら後5時間ぐらいで上がれそうですね!!」
「ごっ! ごびっ!! ごばべべばぁっ!! ジぬ!! ジんじゃう!!」
「大丈夫! もう死んでます!」
五時間後、俺は生体で言うところの瀕死状態で滝の噴き出していた場所からよろよろと抜け出た。途中からの事は余り記憶にない。ただひたすら叫ばされたり、筋トレをしたり地獄の特訓だった。いや、ここ煉獄だけど。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「よく頑張りました! あなたの魂は今、天界へと至る第一歩を踏み出しました!」
いや、俺が戻るの人間界なんスけど。
「俺……強くなれましたかね……?」
「さぁ……? 途中からノッてきちゃって色々無理難題行っちゃいましたけどあれ、通常のコースにはないんです……すいません」
俺は力尽きてその場に倒れ込んだ。
亡者はまず、山の麓にある滝で地獄の瘴気を洗い流す。それが天界へと至る第一歩だ。罪の重さで水量が、罪の質で水の色が変わるので“試しの滝”とも呼ばれているそうだが、果たして俺は何色の滝が降ってくることやら。
「あら、こんにちは。あなたがキーチローさんね? デボラさんから話は聞いておりますわ」
煉獄への入り口でデボラと別れた俺を出迎えてくれたのは金色の綺麗な髪が印象的なお姉さん。名札にはグレースと書いてある。地獄と同様、日に数十万の死者を受け入れている煉獄も巨大な建物が存在し、市役所のようにご丁寧に受付番号が存在していた。何時間待たされることかと思いきや、俺の話はすでにデボラから通してあったらしく、すぐに順番が回ってきた。
「あの、とりあえず俺は煉獄の頂じゃなくて滝行だけ受けに来たんですが」
「はい、体験コースのお申込みですね。こちらにお名前をご記入ください」
いや、なんだ体験コースって。フィットネスクラブじゃないんだから。渡された紙を見ると、“誓約書”と書いてあり、『裁判の結果と異なる判定により、滝の水量をもとに地獄に送り返されても異論はありません』と記載されていた。
なるほど、ごく稀に裁判の結果と違う反応をしてしまうことがあるのか。恐ろしい話だ。俺は裁判受けてないから不安でしょうがないが、とりあえず記入しない事には先に進めなさそうなので自分の名前を書き込んだ。
「はい、ありがとうございます。では、右手にあります棚から白装束をお選びいただき、あちらの更衣室で着替えを済ませてください。白装束はフリーサイズになってますが、あまりに窮屈な場合はお申し付けください」
まるで、健康診断のようだ。俺は案内された通り、白装束を選び、更衣室に入った。今の俺の姿は死んだ時のイメージらしく、着ている服は死んだ当時のままだ。ふぅ。しかし、力仕事を続けていたせいか少し筋肉がついたようだ気がするな。あのまま続けていたらモテボディが手に入っていたかもしれない。
着替えを済ませ、更衣室から出ると、さっきのグレースさんとはまた別の金髪の女性が立っていた。さっきのグレースさんはいかにも受付というようなおとなしい感じで制服を着た女性だったが、今度はインストラクターのようなはつらつとした女性だ。名札にはラファエラと書いてある。服装もどこかスポーティーなこれからランニングにでも出かけそうな装いだ。
「さあ! 行きましょう! キーチローさん! あ、私が担当のラファエラです! 宜しく!」
体験コースの専属なのだろうか。普通はいちいち担当なんて付けないだろうが。ラファエラさんはおもむろに両手を掴むと、ブンブンと握手を交わした。
「あ……安楽……キーチローです。宜しく……」
ラファエラさんはにっこり微笑むと、『試しの滝』と書かれた札を指してこう言った。
「試しの滝はこちらです! 張り切ってどうぞ!」
ラファエラさんの声は腹から出ているのか、すごく通りのいい声だ。悪く言えばすごく声が大きい。
「この、体験コースは地獄に落とされたものの内、しっかりと罪を償い、反省できているとみられる模範囚を試すのが本来の役目です! ここで、滝の量や質が煉獄に送られたものと遜色ないレベルであれば輪廻の輪に近づくことが許されます!」
なるほど。そのためにあったのか。通りで専属の担当が付いたりするわけだ。
「あなたの滝はどんな滝でしょうか! 私は色と量でその人となりが分かるこの修業が大好きなんです! さあ、着きましたよ!」
ラファエラさんが手を伸ばすとそこには穴の開いた崖があった。高さ10メートルぐらいだろうか大きな穴が開いているが、あそこから水が落ちてくるのだろうか。結構高い。首の骨大丈夫だろうか。
「では、ここに立ってください!」
「あ、この印の位置ですかね?」
「そうです! 手は拝むポーズで! はい! そうです! じゃあ、そのままの体制で少し待っててください!」
ラファエラさんは少し離れると操作盤らしきものをいじりだした。
「普通に流れてる滝じゃないんですね。なんか人工的というか……」
「はい! 余計なことは喋らない! 始めますよ!」
ラファエラさんがレバーを引くと、サイレンが鳴り響き放水が始まった。なんだかちょろちょろ頭にかかってるがまさかコレ? 流石、清廉けっぱ……
「あばばばばばばば」
突如、とんでもない量の水が落ちてきた。なんだコレ。少しピンクっぽい? 後、少し白い……?
「うーん、普通の量ですね」
ふ、普通の量!? これが!?
「いでででででであああああぶべっ」
「色は……怠惰少々、色欲少々。これもまあ、普通の人間レベルですね」
なら良かった。ということは、どピンクだった場合、色欲まみれって事か?危ねぇ!
「では、キーチローさん! 何でもいいんで叫び続けて下さい!」
「え!? えれべべばばぶへっ!」
「元気よく!!」
さ、叫べと言われても……何を……いででで
「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「いいですね! さあ、もっと!」
「ちくしょおおおおおおおお!」
「何がチクショウですか!?」
「強くなりたいぃぃぃぃぃ!」
「魂の叫び!! イイですね!!」
何だか知らないが、俺は強くなりたかったらしい。まさに極限状態における魂の叫びだ。無我夢中で叫んでいた。
「うおおおおおっ!」
「強くなりたいなら! 今ここでも修行できますよ! はいっ! スクワットぉっ!」
「うおぉぉぉっ! えべぇ!? ズグワッド!!!!?」
「強くなりたいならまず魂からですよ!!」
「ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!」
「もうワンセット!」
「あああああああ!」
無茶だ。無茶なことをやらされている。俺今筋肉無いのに筋トレをやらされている。ていうかあとどれくらい続ければ……。
「この放水量なら後5時間ぐらいで上がれそうですね!!」
「ごっ! ごびっ!! ごばべべばぁっ!! ジぬ!! ジんじゃう!!」
「大丈夫! もう死んでます!」
五時間後、俺は生体で言うところの瀕死状態で滝の噴き出していた場所からよろよろと抜け出た。途中からの事は余り記憶にない。ただひたすら叫ばされたり、筋トレをしたり地獄の特訓だった。いや、ここ煉獄だけど。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「よく頑張りました! あなたの魂は今、天界へと至る第一歩を踏み出しました!」
いや、俺が戻るの人間界なんスけど。
「俺……強くなれましたかね……?」
「さぁ……? 途中からノッてきちゃって色々無理難題行っちゃいましたけどあれ、通常のコースにはないんです……すいません」
俺は力尽きてその場に倒れ込んだ。
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