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第2章 魔犬ケルベロス編

(閑話)一方、その頃アルカディア・ボックスでは

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 ベルとローズは途方に暮れていた。次から次へと送られてくる新種の魔物たち。いったいどれほどのペースで魔王様とキーチローは捕まえているのだろうか。そして、この先どれほど送られてくるのだろうか。一番のネックは、作戦会議でもローズが指摘していた、

『キーチローが居ないと会話が出来ない』

 という点である。

 あの時点では、魔王様の対応もみんなの反応も間違ってはいなかったのだろう。そう、


<ローズ視点>
「ううう……。デボラ様とキーチローが出発してまだ数時間だよねぇ……」
「正確には3時間と46分ですね」

「ナニこの魔物の転送ペースは……」
「それほどに今、地獄は末期的な状況という事でしょう」

「でも、最初に送られてきたのヘルアントだよ? こんなのうちの庭にもいるよぉ」
「デボラ様の崇高なお志を疑ってはいけません。何か深きお考えあってのことでしょう」

 ベルったら相変わらずデボラ様一筋なんだから。堅くて融通の利かない、おまけに羞恥心のあるサキュバスなんてベルぐらいのもんでしょ。

「ところで、このアリさん達なんか訴えてるみたいだけど、どうする?」
「キーチローさんがいない事には何とも……。とりあえずエサを与えておけば問題ないのでは?」

 えーと。ヘルアントのエサって言ったら虫の死体とかだよね。虫の死体……。いけない! 私ったら! カブタン達の事見ちゃった。危うく触手のツッコミが来るところでした。

「キーチローさんの冷蔵庫から魚肉ソーセージでも持ってきましょう。確か肉は食べられたはずです」
「じゃあ、私取ってきまーす!」

 急いでキーチローの部屋に行ってゆっくり戻ってこなくちゃ!


<ベル視点>
「……全く。世話から逃げましたね」
「ん? 6番フィールドが輝き始めたという事は新種の魔物!?」

 なんという早いペース。やはりデボラ様は真に地獄の行く末を考えておられる。私も側近としてデボラ様の所業を支えてゆかなくては。とりあえず、6番フィールドに行ってみましょう。

「これは……ヒクイドリですか。なんと美しい羽の色。やはり地獄には紅《くれない》がよく映える」

 おや? さっきまでの魔獣や魔植物と違って理性的というか……。今こちらに向かってお辞儀をしたような……?

「あなた方は納得済みでこちらに来たようですね。キーチローさんの能力《ちから》のおかげかしら?」

 ふむ。通じたのかどうか知りませんが、羽を広げて大層友好的ではないですか。

 しかし……この羽の色。デボラ様の御髪おぐしを思い出す、何とも綺麗な羽の色! こっそりデボちゃんって呼んじゃおうかな。いや、ディアちゃんの方がいいかな。

 …………何を考えているのだ私は! なんたる不敬! あるじの名前をあろうことか飼育生物に付けるとは! ああ、しかしあの私の心を射抜くような瞳……。
燃え盛る炎のような意志を感じてしまう……。ディアちゃんて呼んだらダメかな……。嗚呼、駄目駄目。絶対に駄目! いくらなんでも意図が透けすぎる!

「何をこんなところでうずくまってモゾモゾしてるの?」

「ひゃいっ!」

「ひゃいって……。はい、魚肉ソーセージとってきたわよ!」
「ん゛っ! ゴホンッ! ありがとう。ローズ」

「いやーん! 新しい魔物、すっごいキレイ! この羽は……モフモフ? モフモフって言っていいかしら! サワサワしていいかしら!!」

 ……どうにか怪しまれずに済んだみたいですね。

「ローズ、どうもあなたのテンションに少し引いているようです。ナデナデ程度に留めておいてください」

「それにしても増える速度大丈夫かしらね」
「後でデボラ様に連絡しましょう。地獄の生物が増えるのは一向に構いませんが、作業員は二人のままですからね」
「そうね。作業員も今回の旅でひっ捕らえて送ってもらいましょう! フィールド⑦はイケメン作業員でお願いします! って」

 ……。ここまで欲望に忠実なのはある意味うらやましい感性だわ。

「それは自分で送ってください。さ、作業を続けますよ!」
「はーい」
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