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第30話 ゲンカイジャー、代償と引き換えに覚醒す①
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「おい、イエロー! グリーン! ピンク! 応答しろ!」
ダメだ。返事が無い。配信コメントと通信から察するに強敵が現れたみたいだ。近くのスライムは粗方片付けたみたいだし、取り敢えずゴウと合流ダジャレじゃないしてどちらかへ向かわないと。
「ベアリー! 状況は!?」
『イエローがダークゴーレムに、グリーンとピンクがエビルスライムに苦戦中です!』
「佐渡島に通信繋げるか!?」
『はい!』
プップップッ……
『え? あ、佐渡島です。あ、コレ……もしかして配信のっちゃってますか? 困りますよ、珍しい名字なんですから。え、あれ? なんだか急に恥ずかしく……声、変じゃないですか?』
「今そういうのいいから! 残りのスライム処理頼めるか!?」
『もちろん。イレギュラーズはそのための組織です』
「じゃあ、俺は近い方に向かう! ベアリー! どっちだ!?」
『ブルーはエビルスライムへ! レッドはダークゴーレムに向かって下さい!』
「了解!」
『了解です!』
“佐渡島さんチーっス”
“佐渡島さん見てるー?”
“あー、あの佐渡島さんね”
“佐渡島人気に嫉妬”
通信を切ると、俺はすぐにイエローの下へ急いだ。
☆☆☆
『ブルー、レッド! UQを消化してから向かってください! 配信はカットしますから』
「間に合いますか!?」
『ダークゴーレムやエビルスライムの特性を考えると、少しでも強化してから向かった方がいいです!』
「分かりました!」
『了解だ』
ブルーは、胸の鷹の様な意匠にUQを消化させると、ピンクとグリーンが戦っている現場へ急行した。現場に駆けつけてみると、そこには倒れこむ一般人が一人とボロボロの姿になったピンクとグリーンの姿。エビルスライムは二人にトドメを刺すより動く標的を優先したようで、ブルーの方へのそりと移動を開始した。
流れるコメントの中には二人がどうやってやられたか、どのような状況かを示すコメントと、エビルスライムに対する憎悪のコメントで溢れ返っている。
「グリーン! ピンク! 動けますか!?」
「ボクは全然平気! と言いたいところだけどちょっと厳しい……かな」
「私も……にん」
二人は、から元気で答えるがダメージは深刻なようだ。何より、グリーンは地肌が露出してしまっている。満身装衣をあそこまで損傷させることができるとしたら、相当強力な敵だ、という評価は揺るがない。ブルーはともかく自身へ注意を引き付ける為に攻撃を開始した。
「さぁ、僕が相手だ! 掛かってこい!」
ブルーは間を置かずエビルスライムにゲンカイショットを打ち込んだが、トポン、トポンとエビルスライムの表面が波打つだけで、ダメージに至る様子は無い。
「厄介な……!」
「ウジュル……」
エビルスライムはゲンカイショットの連射もものともせずにブルーに迫る。ブルーも何か手はないかとエビルスライムの激しい攻撃を掻い潜るが攻撃の糸口さえ見つけられずにいた。黒い液体がうねるようにブルーを襲う。
「何か……何か手は!?」
「ウジュジュ!!」
業を煮やしたエビルスライムは攻撃の範囲を点から面に広げ、ブルーに襲い掛かった。そう、即ち、強酸の体でブルーを取り込もうとしたのだ。
「くっ、しまっ……!!」
ヘドロのようなうねりがブルーをあっという間に包み込み、そして、辺りは静寂に包まれた。
「ぶ、ブルー!」
「ブルーさん!!」
グリーンとピンクは満身創痍の体に鞭打って立ち上がろうとするが思いの外ダメージは大きく、体を起こすことさえ困難になっている。
“なぁ、これ……ヤバいんと違う?”
“ブルー! 負けるな!”
“ピンク! ピンク! ピンク!”
“応援しかできんなんて辛すぎる……”
“あかん、見てられん”
コメントもまた絶望的な場の空気に支配されていく。ブルーは強酸の海に囚われ、ピンク、グリーンは今や戦闘不能といっていい。誰もが祈るような気持ちで画面を注視していた。
「ぐっ……くっ……う、ああああっ!」
エビルスライムの中で藻掻くブルー。しかし、それをあざ笑うかの様に、悠然とエビルスライムはピンクとグリーンに近づいていく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
“ん? ブルーの様子がおかしくね?”
“酸にやられてるんじゃなくて?”
“何か別の事に苦しんでいるような”
『まさか、高濃度の魔素に曝されすぎて、魔素中毒が進行しているのでは!?』
配信音声を切ったベアリーが状況を分析するが、二手に分かれた今、助けを呼ぶことすらできない。悪化する一方の状況にベアリーも蒼白のまま画面を注視するしか無い。魔法で対処するには遠すぎる。
「くっ、うううう。ゔゔぅああぁぁぁあっ!!」
「ブルー!」
「ブルーさん!!」
ピンクとグリーンが悲鳴にも似た絶叫をあげた、その時。
「グゥルルルルル……」
「ウジュ?」
「グゥゥゥゥゥッ、ガァァァァッ!!」
エビルスライムは内部から破壊された様に激しく飛び散った。吠えているのは、真っ黒に染まったブルーらしきシルエットの戦士である。
「えっ? どういうコト?」
「な、何が起こった……の?」
“なんやアレ。ブルー……か?”
“真っ黒やぞ?”
“追加戦士……って訳じゃなさそうやな”
「ガァァァァッ!!!!!」
四散したエビルスライムをさらに粉々に粉砕していく、黒い戦士。いや、もはや魔獣とでも呼ぶべきソレは、目に映っているであろう全てのエビルスライムを踏み潰し、叩き潰し、捻り潰していく。
「ブルー……なの?」
ピンクが意思疎通を試みるが反応はない。ただ一つの戦闘マシーンのように食い散らかすようにエビルスライムの欠片を潰していく。
「ウジュゥ……ウジュゥ……」
“行け! 勝てるんなら何でもいい! 行け!”
“ブルーかブラックかしらんがやってしまえぇぇぇぇぇぇ!!!”
『いけない! これは魔素中毒の末期かもしれません!』
ベアリーとて、末期の魔素中毒を見たことがあるわけではない。しかし、エビルスライムの中に取り込まれた際に高濃度の魔素を浴び続けた可能性は高い。明らかな暴走状態だ。
今は、その敵意がエビルスライムに向いているがいつそれがピンクとグリーンに向けられるかわかったものではない。
「グォぉぉぉぉァァァァァっ!!」
やがて、全ての欠片を踏み潰した黒い戦士はピンク、グリーン、そして白馬をぐるりと見回すと、目標を見定めたかのように一直線に駆け出した。
「グゥアアアアアアアアッ!!!!」
「ダメ!! ブルー!!」
黒い戦士は、ピンクに向かって襲い掛かったのだ。
しかし、駆け出したその背中を捉えたのは他でもない、エビルスライムだった。粉々にされたはずだというのに、いつの間にか欠片を紡いで元の形に戻っていたのだ。
「ウジュルゥアァァァッ!!」
「グォぉああぁッ!!」
黒い戦士は、まるで喜んでいるかのように踵を返し、またエビルスライムと正対する。
「グゥウウ……」
さすがに今のままで勝てぬと判断したのか、黒い戦士は手の平に向かって力を凝縮させはじめた。
『まさか、魔法まで!?』
ベアリーのものとは違う、魔族による純然たる魔の力である。
「ガァァァァッ!!!」
黒い戦士の放った魔法は液体でできたエビルスライムを焼き尽くす程の業火だ。無限に再生するかに思われたエビルスライムが見る間に縮んで溶けて無くなっていく。
「ウジュルァ……ウジュルァァァァァッ!!」
「グッ、グッ、グッ……」
笑っているかのように黒い戦士はエビルスライムの消えゆく様を見つめている。
やがて、一筋の煙を残して、エビルスライムが消滅した時。改めて黒い戦士は、ピンクにその視線を合わせた。まるで、銃口を向けるように。
「ブルー、ブルーなんでしょ!?」
「ブルー、聞こえる? ブルーさん!」
“ブルー!? 落ち着け!?”
“あの、冷静沈着なブルーはどこいった?”
『ピンク! 逃げて下さい! それはもう……!』
「グルルルルルル……!」
黒い戦士がピンクに飛びかかろうとしたまさにその瞬間。
「やれやれ。世話の焼ける奴じゃ」
銀色の戦士が突如現れ、黒い戦士を一撃の拳の下倒すと、そう一言だけ呟いてブルーを担ぎ、そして去って行った…………。
ダメだ。返事が無い。配信コメントと通信から察するに強敵が現れたみたいだ。近くのスライムは粗方片付けたみたいだし、取り敢えずゴウと合流ダジャレじゃないしてどちらかへ向かわないと。
「ベアリー! 状況は!?」
『イエローがダークゴーレムに、グリーンとピンクがエビルスライムに苦戦中です!』
「佐渡島に通信繋げるか!?」
『はい!』
プップップッ……
『え? あ、佐渡島です。あ、コレ……もしかして配信のっちゃってますか? 困りますよ、珍しい名字なんですから。え、あれ? なんだか急に恥ずかしく……声、変じゃないですか?』
「今そういうのいいから! 残りのスライム処理頼めるか!?」
『もちろん。イレギュラーズはそのための組織です』
「じゃあ、俺は近い方に向かう! ベアリー! どっちだ!?」
『ブルーはエビルスライムへ! レッドはダークゴーレムに向かって下さい!』
「了解!」
『了解です!』
“佐渡島さんチーっス”
“佐渡島さん見てるー?”
“あー、あの佐渡島さんね”
“佐渡島人気に嫉妬”
通信を切ると、俺はすぐにイエローの下へ急いだ。
☆☆☆
『ブルー、レッド! UQを消化してから向かってください! 配信はカットしますから』
「間に合いますか!?」
『ダークゴーレムやエビルスライムの特性を考えると、少しでも強化してから向かった方がいいです!』
「分かりました!」
『了解だ』
ブルーは、胸の鷹の様な意匠にUQを消化させると、ピンクとグリーンが戦っている現場へ急行した。現場に駆けつけてみると、そこには倒れこむ一般人が一人とボロボロの姿になったピンクとグリーンの姿。エビルスライムは二人にトドメを刺すより動く標的を優先したようで、ブルーの方へのそりと移動を開始した。
流れるコメントの中には二人がどうやってやられたか、どのような状況かを示すコメントと、エビルスライムに対する憎悪のコメントで溢れ返っている。
「グリーン! ピンク! 動けますか!?」
「ボクは全然平気! と言いたいところだけどちょっと厳しい……かな」
「私も……にん」
二人は、から元気で答えるがダメージは深刻なようだ。何より、グリーンは地肌が露出してしまっている。満身装衣をあそこまで損傷させることができるとしたら、相当強力な敵だ、という評価は揺るがない。ブルーはともかく自身へ注意を引き付ける為に攻撃を開始した。
「さぁ、僕が相手だ! 掛かってこい!」
ブルーは間を置かずエビルスライムにゲンカイショットを打ち込んだが、トポン、トポンとエビルスライムの表面が波打つだけで、ダメージに至る様子は無い。
「厄介な……!」
「ウジュル……」
エビルスライムはゲンカイショットの連射もものともせずにブルーに迫る。ブルーも何か手はないかとエビルスライムの激しい攻撃を掻い潜るが攻撃の糸口さえ見つけられずにいた。黒い液体がうねるようにブルーを襲う。
「何か……何か手は!?」
「ウジュジュ!!」
業を煮やしたエビルスライムは攻撃の範囲を点から面に広げ、ブルーに襲い掛かった。そう、即ち、強酸の体でブルーを取り込もうとしたのだ。
「くっ、しまっ……!!」
ヘドロのようなうねりがブルーをあっという間に包み込み、そして、辺りは静寂に包まれた。
「ぶ、ブルー!」
「ブルーさん!!」
グリーンとピンクは満身創痍の体に鞭打って立ち上がろうとするが思いの外ダメージは大きく、体を起こすことさえ困難になっている。
“なぁ、これ……ヤバいんと違う?”
“ブルー! 負けるな!”
“ピンク! ピンク! ピンク!”
“応援しかできんなんて辛すぎる……”
“あかん、見てられん”
コメントもまた絶望的な場の空気に支配されていく。ブルーは強酸の海に囚われ、ピンク、グリーンは今や戦闘不能といっていい。誰もが祈るような気持ちで画面を注視していた。
「ぐっ……くっ……う、ああああっ!」
エビルスライムの中で藻掻くブルー。しかし、それをあざ笑うかの様に、悠然とエビルスライムはピンクとグリーンに近づいていく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
“ん? ブルーの様子がおかしくね?”
“酸にやられてるんじゃなくて?”
“何か別の事に苦しんでいるような”
『まさか、高濃度の魔素に曝されすぎて、魔素中毒が進行しているのでは!?』
配信音声を切ったベアリーが状況を分析するが、二手に分かれた今、助けを呼ぶことすらできない。悪化する一方の状況にベアリーも蒼白のまま画面を注視するしか無い。魔法で対処するには遠すぎる。
「くっ、うううう。ゔゔぅああぁぁぁあっ!!」
「ブルー!」
「ブルーさん!!」
ピンクとグリーンが悲鳴にも似た絶叫をあげた、その時。
「グゥルルルルル……」
「ウジュ?」
「グゥゥゥゥゥッ、ガァァァァッ!!」
エビルスライムは内部から破壊された様に激しく飛び散った。吠えているのは、真っ黒に染まったブルーらしきシルエットの戦士である。
「えっ? どういうコト?」
「な、何が起こった……の?」
“なんやアレ。ブルー……か?”
“真っ黒やぞ?”
“追加戦士……って訳じゃなさそうやな”
「ガァァァァッ!!!!!」
四散したエビルスライムをさらに粉々に粉砕していく、黒い戦士。いや、もはや魔獣とでも呼ぶべきソレは、目に映っているであろう全てのエビルスライムを踏み潰し、叩き潰し、捻り潰していく。
「ブルー……なの?」
ピンクが意思疎通を試みるが反応はない。ただ一つの戦闘マシーンのように食い散らかすようにエビルスライムの欠片を潰していく。
「ウジュゥ……ウジュゥ……」
“行け! 勝てるんなら何でもいい! 行け!”
“ブルーかブラックかしらんがやってしまえぇぇぇぇぇぇ!!!”
『いけない! これは魔素中毒の末期かもしれません!』
ベアリーとて、末期の魔素中毒を見たことがあるわけではない。しかし、エビルスライムの中に取り込まれた際に高濃度の魔素を浴び続けた可能性は高い。明らかな暴走状態だ。
今は、その敵意がエビルスライムに向いているがいつそれがピンクとグリーンに向けられるかわかったものではない。
「グォぉぉぉぉァァァァァっ!!」
やがて、全ての欠片を踏み潰した黒い戦士はピンク、グリーン、そして白馬をぐるりと見回すと、目標を見定めたかのように一直線に駆け出した。
「グゥアアアアアアアアッ!!!!」
「ダメ!! ブルー!!」
黒い戦士は、ピンクに向かって襲い掛かったのだ。
しかし、駆け出したその背中を捉えたのは他でもない、エビルスライムだった。粉々にされたはずだというのに、いつの間にか欠片を紡いで元の形に戻っていたのだ。
「ウジュルゥアァァァッ!!」
「グォぉああぁッ!!」
黒い戦士は、まるで喜んでいるかのように踵を返し、またエビルスライムと正対する。
「グゥウウ……」
さすがに今のままで勝てぬと判断したのか、黒い戦士は手の平に向かって力を凝縮させはじめた。
『まさか、魔法まで!?』
ベアリーのものとは違う、魔族による純然たる魔の力である。
「ガァァァァッ!!!」
黒い戦士の放った魔法は液体でできたエビルスライムを焼き尽くす程の業火だ。無限に再生するかに思われたエビルスライムが見る間に縮んで溶けて無くなっていく。
「ウジュルァ……ウジュルァァァァァッ!!」
「グッ、グッ、グッ……」
笑っているかのように黒い戦士はエビルスライムの消えゆく様を見つめている。
やがて、一筋の煙を残して、エビルスライムが消滅した時。改めて黒い戦士は、ピンクにその視線を合わせた。まるで、銃口を向けるように。
「ブルー、ブルーなんでしょ!?」
「ブルー、聞こえる? ブルーさん!」
“ブルー!? 落ち着け!?”
“あの、冷静沈着なブルーはどこいった?”
『ピンク! 逃げて下さい! それはもう……!』
「グルルルルルル……!」
黒い戦士がピンクに飛びかかろうとしたまさにその瞬間。
「やれやれ。世話の焼ける奴じゃ」
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