6 / 11
第6話 魔王様、満腹です!
しおりを挟む
「ところで、蘇った場所はどこだった?」
俺は思い切ってヘルヘレナに尋ねてみた。生き返った場所から何らかの傾向がつかめるかもしれん。それに、他にも同じような境遇がいるかもしれない。かつて四天王と呼ばれたあいつらなら、可能性は高い。
「普通に墓場でしたわ。土の中からそれはもうもっさりと。てっきりアンデッド族として再生してしまったかと思い、悲嘆に暮れておりましたが、どうも体が腐っている様子は無いし、何ならむしろかつての瑞々しい体を取り戻したかのように体は軽く、それでいて魔力はかつての蛇神だった頃と大差なく。夢でも見ているのかと」
「なるほど、俺もだ。お前たちを従えていたころは肉体の衰えは激しかったものの、知識量、魔力量では最高の値だった。それが、どうだ。今や若き肉体にそれと遜色ない魔力が宿っている」
なるほど、状況はよく似ているようだ。しかし、四天王たちは俺の目の前で倒されている。当然そのあと俺も襲われたので、墓など作って弔う暇はなかったはずだ。
「墓……。それはお前たちのモノか?」
「いえ、我々幹部の間で作っていた共同墓地のようなものです。勇者一行に葬られた者たちを祀っておりました。とはいえ、我々の肉体は滅びると魔素に還るので遺体を回収できたものはおりませんが」
そうか。そういえばそうだった。俺も滅びる時は粉々に砕け散ったはずだ。どおりで城に死体が無いはずだ。
「お前の周りに棺のようなものはあったか?」
「ええ、それと土を腐食させてどうにか脱出しましたが」
いよいよ本格的に謎は深まるばかりだ。もしかするとその共同墓地とやらから他の者も蘇ってくるのか? ニホンでの生活を経て? だとすると三人寄ればなんとやらではないが、ニホンの暮らしの再現が非常に楽になる。いや、もうこのエンドヴァルドをニホンと呼んで暮らすことすら夢ではない。
……いや、なんでニホン限定なんだ。アメリア合衆国にも最先端の技術はある。チキュウの人間ならほとんどの国の者は大歓迎だ。チキュウでは言語が障壁になっていたがそれこそこちらの世界では言語理解は原初の魔法の一つで、今ではほとんど魔力消費すらせずにどこの国の者だろうと会話できる。
「うむ。何が起こっているのかさっぱりわからんが、同志がいることは心強いこと極まりない。これからこの世界を生きていくにあたり、最大限協力していこうではないか!」
「もちろんでございます! ああ、また以前のようにミルド様にお仕えできるなんて光栄の至り……!」
これは力強い仲間を得たぞ。まぁ、ストーキングに関しては黙っておこう。勇者一味に対してまだ恨みの感情があるかもしれんしな。
「そういえば、ニホンではどのような暮らしを? そもそも共通認識のつもりでいたが俺達のニホンは確かに同じニホンなのか?」
「そうですね。その辺は気になっておりました。まず、私が生まれたのはショウワで天寿を全うしたのはレイワでした」
「なんと! それではほとんど同じ時代を生きているではないか! どこ住みよ!? 俺はトウキョウに暮らしていたが生まれはサイタマだ」
「あ、私は……その……実はキョウト生まれでして……」
「何!? ということは本当はカンサイ弁なのか!?」
「そうですね。意識せんかったらカンサイ弁になってしまいますね」
おお! 方言女子! エルフの外見にカンサイ弁を搭載するとは中々思い切った采配! この状況を作り出した者、なかなかの策士ではないか。
「いやぁ、カンサイ弁もえぇですけど、なかなか敬語では使われへんのです」
「ハハハ、もうすっかりカンサイ人に見えてきたぞ! なるほど、西京焼きや味噌汁が旨いわけだ!」
「漬物も漬けたいんですけど、もうちょっと試行錯誤せんとあかんみたいです。こっちにはお米もありませんからね」
いやぁ、ともあれお茶漬けの夢は意外と早く叶いそうだ。
「うむ、情報の引き出しについては俺の方でも研究してみよう。クックポッドにつながることができたら食材さえあればどんな料理も思うがままよ!」
「この世界に蘇った時はどうしようかと思いましたが、ミルド様と再び相まみえることが出来て、私は幸せ者です……」
何これ! 第三の人生最高かよ! ちょっと上手くいきすぎてない!? ラノベの読みすぎじゃない!?
「ヘルヘレナ。お前は再度魔族として人間界に進攻したいという気持ちはあるか?」
「ミルド様……。お叱りを受けることを承知で申し上げます。ニホンでの暮らしを経て、私にはもう……、人間を敵と思うことは出来ません……。叶うなら、ただのハーフエルフ、エレナとして生きとうございます」
「ヘルヘレナよ。いや、エレナ。安心しろ。俺もだ。俺ももうこの肉体とは裏腹に人間を憎むことは出来ん。よくぞ言ってくれた。これで俺達は同じ志を持ってこの世界を生きていくことが出来る」
だがしかし、懸念はある。疑問もある。何よりこの城はこのままでは危険にさらされる。ここは一度場所を移した方が良さそうだな。
「エレナ。勇者が魔王を倒した今、この城及びエンドヴァルドには多数の兵が派遣されてくるだろう。統率を失った魔族、魔獣、魔物を狩るために」
「そう……、そうですね。生き残った魔族に見つかるのも厄介です。どこかでそれらを凌ぐことができれば……」
「フフフ、案ずるなエレナよ。実は私が蘇った墓の下に我が城Ver.2を建設中だ」
エレナの目はこれまで以上に輝きを帯びている。
「ミルド様! なんと聡明で抜かりなく利発なお方!」
「来るか?」
「お断りする理由が何一つ見当たりません!」
見方によっては安いナンパのようにも見えるがまあいいだろう。
「では、ヘルヘレナ改めエレナよ。久しぶりのニホン食、真に美味であった。ご馳走様!」
「お粗末様でした」
こうして、仲間を得た俺は我が城Ver.2に帰還するのだが、その前に今のうちにどうしても確かめなければいけないことが二つほどあった。
俺は思い切ってヘルヘレナに尋ねてみた。生き返った場所から何らかの傾向がつかめるかもしれん。それに、他にも同じような境遇がいるかもしれない。かつて四天王と呼ばれたあいつらなら、可能性は高い。
「普通に墓場でしたわ。土の中からそれはもうもっさりと。てっきりアンデッド族として再生してしまったかと思い、悲嘆に暮れておりましたが、どうも体が腐っている様子は無いし、何ならむしろかつての瑞々しい体を取り戻したかのように体は軽く、それでいて魔力はかつての蛇神だった頃と大差なく。夢でも見ているのかと」
「なるほど、俺もだ。お前たちを従えていたころは肉体の衰えは激しかったものの、知識量、魔力量では最高の値だった。それが、どうだ。今や若き肉体にそれと遜色ない魔力が宿っている」
なるほど、状況はよく似ているようだ。しかし、四天王たちは俺の目の前で倒されている。当然そのあと俺も襲われたので、墓など作って弔う暇はなかったはずだ。
「墓……。それはお前たちのモノか?」
「いえ、我々幹部の間で作っていた共同墓地のようなものです。勇者一行に葬られた者たちを祀っておりました。とはいえ、我々の肉体は滅びると魔素に還るので遺体を回収できたものはおりませんが」
そうか。そういえばそうだった。俺も滅びる時は粉々に砕け散ったはずだ。どおりで城に死体が無いはずだ。
「お前の周りに棺のようなものはあったか?」
「ええ、それと土を腐食させてどうにか脱出しましたが」
いよいよ本格的に謎は深まるばかりだ。もしかするとその共同墓地とやらから他の者も蘇ってくるのか? ニホンでの生活を経て? だとすると三人寄ればなんとやらではないが、ニホンの暮らしの再現が非常に楽になる。いや、もうこのエンドヴァルドをニホンと呼んで暮らすことすら夢ではない。
……いや、なんでニホン限定なんだ。アメリア合衆国にも最先端の技術はある。チキュウの人間ならほとんどの国の者は大歓迎だ。チキュウでは言語が障壁になっていたがそれこそこちらの世界では言語理解は原初の魔法の一つで、今ではほとんど魔力消費すらせずにどこの国の者だろうと会話できる。
「うむ。何が起こっているのかさっぱりわからんが、同志がいることは心強いこと極まりない。これからこの世界を生きていくにあたり、最大限協力していこうではないか!」
「もちろんでございます! ああ、また以前のようにミルド様にお仕えできるなんて光栄の至り……!」
これは力強い仲間を得たぞ。まぁ、ストーキングに関しては黙っておこう。勇者一味に対してまだ恨みの感情があるかもしれんしな。
「そういえば、ニホンではどのような暮らしを? そもそも共通認識のつもりでいたが俺達のニホンは確かに同じニホンなのか?」
「そうですね。その辺は気になっておりました。まず、私が生まれたのはショウワで天寿を全うしたのはレイワでした」
「なんと! それではほとんど同じ時代を生きているではないか! どこ住みよ!? 俺はトウキョウに暮らしていたが生まれはサイタマだ」
「あ、私は……その……実はキョウト生まれでして……」
「何!? ということは本当はカンサイ弁なのか!?」
「そうですね。意識せんかったらカンサイ弁になってしまいますね」
おお! 方言女子! エルフの外見にカンサイ弁を搭載するとは中々思い切った采配! この状況を作り出した者、なかなかの策士ではないか。
「いやぁ、カンサイ弁もえぇですけど、なかなか敬語では使われへんのです」
「ハハハ、もうすっかりカンサイ人に見えてきたぞ! なるほど、西京焼きや味噌汁が旨いわけだ!」
「漬物も漬けたいんですけど、もうちょっと試行錯誤せんとあかんみたいです。こっちにはお米もありませんからね」
いやぁ、ともあれお茶漬けの夢は意外と早く叶いそうだ。
「うむ、情報の引き出しについては俺の方でも研究してみよう。クックポッドにつながることができたら食材さえあればどんな料理も思うがままよ!」
「この世界に蘇った時はどうしようかと思いましたが、ミルド様と再び相まみえることが出来て、私は幸せ者です……」
何これ! 第三の人生最高かよ! ちょっと上手くいきすぎてない!? ラノベの読みすぎじゃない!?
「ヘルヘレナ。お前は再度魔族として人間界に進攻したいという気持ちはあるか?」
「ミルド様……。お叱りを受けることを承知で申し上げます。ニホンでの暮らしを経て、私にはもう……、人間を敵と思うことは出来ません……。叶うなら、ただのハーフエルフ、エレナとして生きとうございます」
「ヘルヘレナよ。いや、エレナ。安心しろ。俺もだ。俺ももうこの肉体とは裏腹に人間を憎むことは出来ん。よくぞ言ってくれた。これで俺達は同じ志を持ってこの世界を生きていくことが出来る」
だがしかし、懸念はある。疑問もある。何よりこの城はこのままでは危険にさらされる。ここは一度場所を移した方が良さそうだな。
「エレナ。勇者が魔王を倒した今、この城及びエンドヴァルドには多数の兵が派遣されてくるだろう。統率を失った魔族、魔獣、魔物を狩るために」
「そう……、そうですね。生き残った魔族に見つかるのも厄介です。どこかでそれらを凌ぐことができれば……」
「フフフ、案ずるなエレナよ。実は私が蘇った墓の下に我が城Ver.2を建設中だ」
エレナの目はこれまで以上に輝きを帯びている。
「ミルド様! なんと聡明で抜かりなく利発なお方!」
「来るか?」
「お断りする理由が何一つ見当たりません!」
見方によっては安いナンパのようにも見えるがまあいいだろう。
「では、ヘルヘレナ改めエレナよ。久しぶりのニホン食、真に美味であった。ご馳走様!」
「お粗末様でした」
こうして、仲間を得た俺は我が城Ver.2に帰還するのだが、その前に今のうちにどうしても確かめなければいけないことが二つほどあった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる