出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 カルラはヒューリーとザアイの分を順番に作り、二人に渡す。

 ティファを含め、三人が輝かしい笑顔で食べているが、対するカルラは複雑だ。料理と言いたくない程手抜きの料理、誰が作っても似たような味にしかならない材料だというのに、何故ここまで喜べるのか。

 まぁ、そのままかじっていたのだから、当然といえば当然だが。

 カルラは携帯食をあまり多く持たない。街や村に着く前に捕らえられてしまった事と、元々山や川で、現地調達する能力もあるからだ。

 ティファはともかく、守護者である他の三人に、誰一人そういった知識がない事にカルラは呆れるしかない。

 育ちが良いからといえば聞こえは良いが、要は世間知らずな非常識だ。そんな彼等が何の目的があって旅をしているのか知らないが、よくこれまで旅して来れたなと、呆れるばかりだ。

 (まぁ、顔は良いし腕も立つしで街中では問題なかったんだろうけど、野宿は保存食を丸かじり生活なんて、軍隊や傭兵じゃあるまいし、ティファが可哀想過ぎるわよ)

 他の三人は、カルラの実年齢とそれ程変わらないように思える。多少違った所で子供と呼べる年齢でない事は確かだ。だからこそ、男達に同情する気は一切ないが、そんな彼等に付き合わされた子供のティファが可哀想でならない。とはいえ、赤の他人のカルラが口出しするような事でもないので、今後の予定を聞いておく。


「人拐いのアジトからは大分離れたと思うけど、まだ移動する気?」

「何だ、疲れたのか?」


 エンヤが忌々しそうに聞いてくるが、疲れてない訳がない。

 カルラは人拐いのアジトで複数の能力を使用しているのだ。鍵開け、監視カメラ乗っ取り、そして、時間稼ぎをする為に、アジトを出た後、外から一人でもアジト内に入らない限り、中にいる者は誰一人出られないよう魔力を施した。

 これは元々あった警報装置の魔力を弄ったもので、それ程の魔力は使わない。

 ただし、この中で最も魔力使用の対価が激しいのは監視カメラの乗っ取りだ。

 魔力を使用する為に、拐われてから殆どの時間を睡眠に回していたから、極度の睡眠不足状態ではないものの、それなりに眠い。

 その上、馬に乗った事もないのに乗せられて、疲れるなと言う方が無理である。

 そんな状態で地面に座り込めば、睡魔に襲われるのは当然だ。普段ならもう、寝入ってる時間なのだから尚更ともいえる。


「あたしを、あなたと一緒にしないでくれる?あたしは身体を鍛えてる傭兵でも軍隊入りした兵士でもないんだから!」
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