出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 カルラは見た目通りの女の子じゃないし、男三人ぐらい、怖くも何ともない。

 いざとなれば、鳥や虫になって、姿をくらます事すら出来る。ただ、魔力の消費対価が半端ないが。

 魔力を使う時には、必ず使用者の対価が必要になる。対価は人それぞれで、同じ能力を持つ者だろうと対価は違う。

 カルラの場合は睡眠。体内にある睡眠時間が対価となる為、あまり使用すると、睡眠不足状態に陥るのだ。


「ねぇ、そろそろこっち向いてくれる?」


 ヒューリーと呼ばれていた男がカルラに声を掛ける。

 (今直ぐ去りたい。はっきり言って迷惑)

 だが、カルラを慕う少女が離れてくれそうにないので、こればかりは仕方ないと、内心溜め息を吐きながら少女に声を掛けるカルラ。


「歩き出したりしないから、少しだけ離れてくれるかな?」


 カルラの言葉に、渋々といった感じで少女が離れる。

 本当は、ダッシュで逃げ去りたい。だが、さすがにそれはせず、身体の向きを逆にする。声のする男達の方へと、胡乱うろんな目を向けて。

 そして、名を名乗る代わりに質問をぶつける。嫌味と皮肉を込めて。


相手ひとの名を知りたい時は、まず自ら名乗れって、親や知り合いに教わりませんでしたか?」


 カルラは彼等の名を知っている。彼等が互いに呼び合ったからだ。

 でも、それとこれとは話は別だ。この世界の常識では、知ろうとする方から名を名乗り、それから相手の名を聞くのが普通。相手の名を知っていようが相手と交流を持ち、親交を深める気があるなら、自ら名乗るのが常識だ。

 それをしない特殊状況は、相手が罪人か、自身の奴隷や実験体モルモットぐらいのものだ。

 カルラが人拐いの仲間でないと分かった時点で、カルラに先に名乗らせるのは、どう考えても間違っているのだ。

 その事に気付いたヒューリーと呼ばれた声の主が、カルラに謝る。


「ごめん!確かにそうだ。僕はヒューリー。で、こっちの怖い顔のがエンヤで、もう一人がザアイ。君の名前を教えてくれる?」


 相手は下手に出たが、思わず偽名で名乗ってやろうかとカルラは思ってしまう。実際、カルラは旅の最中何度だって名前を偽っている。姿すら偽っているのだから当然だ。

 だが、ここには少女がいる。どこまで真眼で分かるのかが分からない為、極力嘘は吐かない方が良い。

 それに、カルラは少女が好きだ。喩え真眼持ちであろうとなかろうと、弟に似た本質を持つ少女に、嘘の名を名乗りたくはない。


「カルラ。あたしの名前はカルラよ」


 嫌々ながらもカルラは名乗る。勿論、あからさまに不機嫌な表情を浮かべて。
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