出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 次の日の夜、世話係りの男が食事を持ってくる。


「ほらよ。今夜は宴だ、味わって食え。食器は明日の朝取りに来てやる」

 食器と言ってもスプーンやフォーク類は無い。自害や怪我をさせない為だろう。

 男が出ていくと、暫く経ってから一人の女性がカルラへと声を掛ける。


「ねぇ、いつ逃げる気なの?あいつはもう来ないわ。いい加減話して」


 他の女性達もカルラへと視線を向ける。


「先ずは食べてからよ。話はそれから」

「ダメよ。今までずっと我慢してたんだから、ちゃんと教えて!」


 懇願する彼女に、他の女性達も賛同するようにコクコク頷く。


「二、三時間は警戒しないと駄目よ。あの男も言ってたでしょ、今夜は宴だって。どうせなら多少は酔っ払ってもらわないと」

「でも、全員が酔っ払う訳じゃないわ。大丈夫なの?」


 不安そうに問う女性。


「そもそもこの檻やそこの扉には鍵が掛かっているのよ。それはどうするつもり?」


 カルラが突如立ち上がる。女性達はビクビクと怯え出すが、カルラはそれをただ見返し、檻の鍵の前へと移動する。

 そして、髪止めのピンを一つ取り、長く伸ばして鍵穴へと入れる。

 カチャカチャと少し動かしていたかと思うと、カチリと音がなる。

 まさかと思いながらもカルラを見ていると、カルラが檻の鉄格子を押し開け女性達に見えるように身体をずらし、彼女達の方へと向き直る。


「これで少しは安心したかしら?あたしにとってこんな鍵、有って無いような物だけど。でも、一応掛けとくわ。あいつ等の気まぐれで、覗きに来ないとも限らないし」


 そう言って、カルラはもう一度檻を閉め、鍵を掛ける。


「あなた……一体……」

「知らなくていいと言った筈よ?誰だって、これ以上の恐怖を味わいたいとは思わない筈だから」


 カルラはにっこりと口元を緩めるが、その瞳は笑っていない。

 カルラの得体の知れなさにゾッとするが、彼女なしでは逃げられない事実に口を閉ざす。


「ほら、出された食事はちゃんと平等に分けて。食べる食べないは個人の自由だけど、ここを出た後へばって動けません、なんて言っても面倒見きれないわよ?あたしが手助けするのはここから連れ出し逃がす事までだから」


 冷たいと言うなかれ。そもそもカルラに彼女等の面倒を見る義理はない。たまたま同じ人拐いに捕まり、同じ檻の中へと入れられただけの赤の他人でしかないのだから。
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