出会いと別れと復讐と

カザハナ

文字の大きさ
上 下
5 / 116

4

しおりを挟む
「バカじゃない?何が可愛いよ!あんた達、状況が分かってんの?あたし達は今、人売りに捕まって、明後日にはどこの誰とも知れない奴に身売りされるのよ?!」


 カルラは一つ溜め息を吐く。


「騒ぎを起こした所で、誰も助けに来ないって事は分かってるつもりよ」


 カルラが苛立つ少女に返答する。見た目だけなら同じ年齢に近い筈のカルラが、年齢にそぐわない大人びた口調で。

 ただ、その事が余計に少女の苛立ちを大きくしたのだが。


「何よ!大して可愛くもないのに余裕ぶっちゃって!あんたなんか安く買い叩かれて、酷い目に合えばいいんだわ!」

「大して可愛くないのは知ってるし、その事については認めるわ。でも、だからって他人に当たるのはどうかと思うけど?そんな暇があるなら体力温存して、逃げる方法でも考えたらどう?」


 逃げ道はない。何度考えても彼女等の考えた結果は変わらないだろう。


「そんなの、考えたってムダよ!どうやったって逃げられないんだから!」

「方法はある。と言っても?」


 そんなのは嘘っぱちだと叫ぼうと思ったが、カルラの落ち着きっぷりに口を閉ざす少女。そしてカルラの言葉に、その場にいた女性達がまさか、といった顔をカルラに向ける。

 その視線を一人一人返しながらカルラは告げる。


「だけど、それには皆の協力が必要なの。奴等が来てもさとられないで。今までと変わらず、売られるんだと思い込んでて」

「……どうやって逃げる気?」


 他の女性がカルラに訝しげに問い掛ける。


「それは、言えない。というかまだ知らない方がいい。もし怪しまれたとしても、知らないなら言い様がないでしょ?」


 彼女等は疑心暗鬼に囚われる。


「もし、失敗したら?あなた一人逃げる気じゃ?」

「そもそも、そんな方法無いんじゃないの?」


 彼女達がカルラを不安の目で見つめる。そんな彼女達にカルラは溜め息一つ。


「悪いけど、あたし一人ならいつでも逃げられたのよ。だけど、逃げなかった。何故だと思う?」

「え……」


 困惑する女性達にカルラが不敵な笑みを向ける。


「あいつ等に、痛い目見てもらう為よ。あなた達は知らなくていいわ、あたしが何者か、なんて」


 普通の子供には出せない迫力に、その場にいた女性達は固唾を飲む。


「今は身体を休めて明日に備えなさい」


 子供とは思えない口調と雰囲気に、誰もが口を閉ざし気圧される。

 (これで暫くは静かになるでしょうよ。そして、誰も私に深入りしたがらないわ)
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

あの夕方を、もう一度

秋澤えで
ファンタジー
海洋に浮かび隔絶された島国、メタンプシコーズ王国。かつて豊かで恵まれた国であった。しかし天災に見舞われ太平は乱れ始める。この国では二度、革命戦争が起こった。 二度目の革命戦争、革命軍総長メンテ・エスペランサの公開処刑が行われることに。革命軍は王都へなだれ込み、総長の奪還に向かう。しかし奮闘するも敵わず、革命軍副長アルマ・ベルネットの前でメンテは首を落とされてしまう。そしてアルマもまた、王国軍大将によって斬首される。 だがアルマが気が付くと何故か自身の故郷にいた。わけもわからず茫然とするが、海面に映る自分の姿を見て自身が革命戦争の18年前にいることに気が付く。 友人であり、恩人であったメンテを助け出すために、アルマは王国軍軍人として二度目の人生を歩み始める。 全てはあの日の、あの一瞬のために 元革命軍アルマ・ベルネットのやり直しファンタジー戦記 小説家になろうにて「あの夕方を、もう一度」として投稿した物を一人称に書き換えたものです。 9月末まで毎日投稿になります。

Gear-Theater(ギア・シアター)

小本 由卯
ファンタジー
ある事情により、幼い頃から一緒に暮らしている3人。 祖母譲りの工学技術を持つ女性、アンベル。 優れた身体能力を持つ青年、ノワルフ。 平凡だが冷静で素直な青年、ブランフド。 そして3人は、蒸気機関によって繁栄した街、オーロプラータへとやってきた。 そんな3人組と街の人々が織り成す物語。 ※カクヨム、ノベルアップ+、ノベルバ同時掲載作品。 キャラクター紹介 【アンベル・マゼノン】 工業区の第4工房に在籍する女性で、幼い頃に祖母から 工学技術を学んだ。 穏やかな性格とその技術で仲間を支える第4工房のリーダー。 幼かった自分の運命を変えてくれた祖母と親友2人に 感謝しながら今を生きている。 甘党。 【ブランフド・ルノージュ】 工業区の第4工房に在籍する青年で、過去に起きた事故で 彷徨っていた所をアンベルに救われる。 平凡だが冷静で素直な性格で、頼りになる親友2人を誰よりも 尊敬しており、自分なりに全力で支えたいと思っている。 【ノワルフ・カーラッテ】 工業区の第4工房に在籍する青年。 幼い頃にブランフドと共にアンベルに救われて以来 一緒に暮らしている。 長身で優れた身体能力を持ち、仲間の為なら自己犠牲もいとわない 勇気と優しさの持ち主である。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔法世界の綺沙羅

みちづきシモン
ファンタジー
この世界は魔法に溢れ、魔法に愛された者たちが生きる世界。 火、水、雷、木、光、闇の六つの魔法に区分けされ、人々の生活を豊かにしていた。 王国の中でも特に優秀な魔法使いが集まる鍵弦魔法高校に、魔力が少なく魔法を上手く使えない綺沙羅(きさら)という少年が通っていた。

処理中です...