出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 雑貨屋で、一通りを買い揃え、宿屋に戻り、少しだけ服の裾上げ等をしてから街の大浴場へと向かう。勿論、昨日と同じようにして。

 ティファは昨日と同じく、女性達に見守られながら、服の脱ぎ着に挑戦し、浴場内でも一人で湯を浴び身体も洗う。


「昨日よりも上手く出来てるよ。出来る事が増えて良かったね」


 カルラがそう言って微笑めば、ティファは本当に嬉しそうな顔をする。

 それを見て、周囲の女性達が悶えているのだが、その気持ちは分かるので、カルラは気付かない振りを決め込む。

 (もう少しのんびりしたいのは山々だけど、私はのんびりしてられないからなぁ)

 カルラは実験体モルモットの中でも稀少な能力を持っている為、逃がさないようにと、特殊な薬を投薬されている。その為定期的に取り入れないと、魔力が毒素に変わり、幻覚を見せ激痛を伴った後に、もがき苦しみながら死ぬと言う未来しか無い。

 薬は研究所にしか無く、大量に作れる物では無い為、次の研究所を目指さなければならないが、時間に余裕があるからと、のんびりしていられる程、この世界は甘くない。

 いつ何時なんどき、人災や天災等に巻き込まれるか、知れたものでは無いからだ。

 (十年程前までは、普通の村人だったってのに、まさかこんな事になってるとはね……)

 それもこれも、あの日、故郷であんな事が起きなければ、カルラは今も村で暮らしていたか、ヴィートの花嫁になっていたかのどちらかだった筈だ。

 それは、研究所が無ければ起こらなかった出来事。研究員達あいつらが、戯れと見せしめに村を選ばなければ起きなかった消滅破壊。

 カルラが復讐者になった事で、救われた者達は多いし、これからも増え続けるだろう。だが、カルラは他人を救う為に復讐者になった訳じゃないと言い切るだろう。自分の為の復讐だと。

 魔力研究所の本部は大都市のど真ん中に有り、たちの悪い事に、独立国として機能している。

 各国は本部との交渉で、有能な能力者を借り、他国を脅し、国民を脅し、逆らう者達を従える。本部は能力者達を提供する代わりに莫大な資金をて、研究資金を手に入れる。

 本部が壊滅すれば、本部と癒着していた各国は、虐げられていた国々や国民達からの攻撃は避けられず、無理矢理服従させられている能力者達も従う理由は無くなるだろう。

 世界は大混乱を巻き起こすだろうが、カルラの知った事では無い。

 本部は支部と比べ物にならないぐらいの規模だから、カルラが本部を壊滅したその日が、カルラの命日となるのだから。
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