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カルラはクッキー生地を先ず作り、均一の厚さに伸ばす。
「ティファ、見ててね♪これをギュッと上から押し付けて、そのまま真上に抜くと、ほらね、綺麗に取れた。で、これを優しく指で押し出しこのトレーの上に乗せる。はい、やってみて」
型抜きをティファに手渡す。
恐る恐るカルラに言われた通りを繰返し、ソッとトレーの上に乗す。
「上手に出来たね、さすがティファ。それを繰返してこのトレーを一杯にしてくれる?」
カルラの言葉にティファが頷きせっせと作り出すので、カルラは違う事をする。
簡単な作業をティファに任せ、力仕事はヒューリーに。そんな感じで作業を進め、焼き上がった物や出来上がった料理を少しずつだけ取り分ける。
「これは味見と試食。手伝ってくれたお礼だから他の二人には内緒でね。物にも寄るけど、その殆どは出来上がりが一番美味しいのよ。ただし、熱いから充分注意して食べてね。ティファが口の中を火傷したなんて事になったら、エンヤさんが『キッチン手伝い禁止!』とか言い出し兼ねないからね。ティファだってそれは嫌でしょ?」
それは嫌だとコクコク頷き、気を付けながら食べるティファを、カルラは満足そうに見守る。
「……本当、お嬢って、ティファの扱い上手いよね」
関心したようにヒューリーが呟く。カルラは少しだけ首を傾げ、ああ、そうかと思った事を口にする。
「そう言えば、言ってなかったわね。あたし、ティファに似た感じの弟がいたのよ。大好きな死んだ弟と同じような行動を取るティファが可愛くて、懐かしい気持ちになるのよ。あたしがよく面倒を好んで見てたから尚更ね。女姉妹も欲しかった事もあるし。だから、可愛がるのは良いけど成長の芽まで摘んでるエンヤさんがムカついて。つい、喧嘩を売り買いしてしまうのよね」
さらっとカルラは言うが、その事実であるらしい言葉にヒューリーが固まる。
今この場でカルラが嘘を言ってるようには見えないし、嘘を吐く理由も無い。カルラはティファを好きでいるが、ヒューリー達に対しては鬼門と言い切り本気で関わりたくないと、口と態度で示すからだ。
(僕、もしかしてお嬢の地雷、ぶち抜いたぁーーー??!)
以前、シーラと呼ばれた女がカルラの逆鱗に触れたであろう事を思い出す。
「おっ、お嬢ごめん!そんな気は無かったんだ!本当、ごめん!!」
「分かってるわよそんな事。それより早く食べて。片付かないから」
「はい……」
ヒューリーはカルラからは冷たい視線を、ティファからは非難の眼差しを受ける事になった。
「ティファ、見ててね♪これをギュッと上から押し付けて、そのまま真上に抜くと、ほらね、綺麗に取れた。で、これを優しく指で押し出しこのトレーの上に乗せる。はい、やってみて」
型抜きをティファに手渡す。
恐る恐るカルラに言われた通りを繰返し、ソッとトレーの上に乗す。
「上手に出来たね、さすがティファ。それを繰返してこのトレーを一杯にしてくれる?」
カルラの言葉にティファが頷きせっせと作り出すので、カルラは違う事をする。
簡単な作業をティファに任せ、力仕事はヒューリーに。そんな感じで作業を進め、焼き上がった物や出来上がった料理を少しずつだけ取り分ける。
「これは味見と試食。手伝ってくれたお礼だから他の二人には内緒でね。物にも寄るけど、その殆どは出来上がりが一番美味しいのよ。ただし、熱いから充分注意して食べてね。ティファが口の中を火傷したなんて事になったら、エンヤさんが『キッチン手伝い禁止!』とか言い出し兼ねないからね。ティファだってそれは嫌でしょ?」
それは嫌だとコクコク頷き、気を付けながら食べるティファを、カルラは満足そうに見守る。
「……本当、お嬢って、ティファの扱い上手いよね」
関心したようにヒューリーが呟く。カルラは少しだけ首を傾げ、ああ、そうかと思った事を口にする。
「そう言えば、言ってなかったわね。あたし、ティファに似た感じの弟がいたのよ。大好きな死んだ弟と同じような行動を取るティファが可愛くて、懐かしい気持ちになるのよ。あたしがよく面倒を好んで見てたから尚更ね。女姉妹も欲しかった事もあるし。だから、可愛がるのは良いけど成長の芽まで摘んでるエンヤさんがムカついて。つい、喧嘩を売り買いしてしまうのよね」
さらっとカルラは言うが、その事実であるらしい言葉にヒューリーが固まる。
今この場でカルラが嘘を言ってるようには見えないし、嘘を吐く理由も無い。カルラはティファを好きでいるが、ヒューリー達に対しては鬼門と言い切り本気で関わりたくないと、口と態度で示すからだ。
(僕、もしかしてお嬢の地雷、ぶち抜いたぁーーー??!)
以前、シーラと呼ばれた女がカルラの逆鱗に触れたであろう事を思い出す。
「おっ、お嬢ごめん!そんな気は無かったんだ!本当、ごめん!!」
「分かってるわよそんな事。それより早く食べて。片付かないから」
「はい……」
ヒューリーはカルラからは冷たい視線を、ティファからは非難の眼差しを受ける事になった。
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