英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~デ・フォン領域~

専門家の忠告無視ると、大変危険な目に合いますよ?

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 中央デ・トルト大陸にある東の砂漠は、デ・フォン領域とフォルゼン領域の境目に近いアルタの北東、アルタの街の高い所からなら、うっすら見える距離の場所から横に長く伸び、中央大陸の端の海岸まで続いている。
 僕達はデ・マームを南に進んでアルタ付近の砂漠から出発する。

「何でアルタの近くから?デ・マームをそのまま東に向かってから南に進めば良いんじゃないの?」
「ここの砂漠は、植物や魔物が場所によって異なるんだよ。同じ砂漠内でも全然違う種が見れるし、ここだけの個有種もいる。砂漠内を横断した方が楽しめるし、ここには砂漠の民って言う砂漠の専門家スペシャリストがいるんだからね」

 この東の砂漠なら、トゥー兄は水の在処ありかや、各種の動植魔物の分布地等、隅から隅まで知ってるからね。しかも腕は聖騎士団特殊部隊の聖騎士と言う名の保証付き。本来なら、こんなにも簡単に応じてくれる人じゃないだろうけど、そこは仲が良いからと言う事で。

「この砂漠でエーダは使わないよ。岩石地帯が多いのと、砂地では砂地獄を作り出す魔物がいるからね。サンドワームはいないけど、その分砂地獄を作り出す魔物がサンドワームと同様に手強いな。一般人では普通の砂地との見分けが難しいらしいから、ボクとラルの前を歩かないように。後、ボクかラルの見える場所にいるように」

 トゥー兄が、突然足を止める。勿論僕も。アーヤとセスも止まるけど、あの兄さんだけはそのまま進む。

「……あれ?何で皆来な……ぃうわぁぁぁーーーっっ!?!」
「ほらね?忠告を聞かなかったり破ったりすると、ああなるから」

 僕達の目の前にあった砂が、段々地面に吸い込まれて行くかのように減っていく。勿論僕達の場所には全く影響の無いままで。
 因みに、あの兄さんは吸い込まれる砂に巻き込まれて下に下にと下って行き、もがいても、もがいても這い上がれない。

「ちょっ、見てないで、助けてーーーっっ!!!」

 僕はその言葉に返答する。

だ」
「もう少し反省しなよ。死ぬ前には助けてやるから」

 僕の後にトゥー兄も追随する。

「大丈夫なのか?!あれ!」
「まだ全然平気。奥に砂が一番凹んでる所分かる?あそこが魔物の巣で、あそこから魔物が出るんだよ。鉄鋼石と同等の硬さの鎧みたいな身体で、魔法も効かない。あの兄さんには良い薬だよ」
「まぁ、半端な腕じゃ、あいつは倒せないけど、ボクがいるから大丈夫。取り敢えず姿が見えないと倒せないから、あれを囮にして充分引き付けてから倒すよ」

 トゥー兄が一撃で仕留めてくれるようだ。
 因みにこの魔物は、額部分に魔石のような目を持ち、ピンポイントでそこを狙い倒すと、特殊なアイテムをドロップする。ただし、その標的である目は人間のこぶし程の大きさで、図体は、大体一軒家と同じぐらい。個体差もあるけど、標準がそれぐらいになるから、図体の割にはとても小さい。
 このような倒し方を出来る者自体が稀で、通常は魔物の関節部分を狙って、長時間掛けて倒すのが一般的だ。関節部分は鎧部分と比べると軟らかなので、鉄鋼石を壊す事が出来ない腕の持ち主でも、時間を掛ければ何とかなる……筈。それまでに魔物に殺されなきゃの話だけどね。

「兄さん、あんまこっちばっか見てると、背後から攻撃受けるよ~。身動きが取れなくなる粘液吐くから気を付けて~」
「ちょっ、そんな事は早く言って!じゃなく、早く助けて!!」
「嫌だって言ってるじゃん。そっちに降りると魔物を倒さない限り、下降し続けるんだから」

 勿論降りても倒せるけど、弱点ピンポイント狙いし辛くなるし、最初にトゥー兄の忠告を聞かなかった兄さんが悪い。僕は砂地獄に嵌まっても、出るコツ知ってるけど、人に教えて出来るようなもんじゃないし、下降し続けても倒す事が出来るから前を歩いても問題ないけど、それを真似されちゃあねぇ。今回はトゥー兄が倒してくれるって言ってくれてるし、僕は高見の見物さ。

「アーヤとセスは運が良いよ。トゥー兄程の腕前を直で見れるなんて、中々無い事だからね。特に紐使いは少数で、鉄鋼石を壊す事の出来る人なんて滅多にいないから。そんな人の技が直で見れるのは奇跡に近いよ」
「そう言うラルは、しょっちゅう見てるけどね」
「うん。だって僕はトゥー兄に手合わせして貰えるからね!僕ラッキー♪トゥー兄いつも有難う~♪」
「そう言う事をいつも言うからラルは可愛いんだよね~。ボクの弟と取り替えたい」
「ちょっとぉ!僕の事忘れてない?!」

 下から兄さんの声がする。
 勿論、忘れてないよ?無視ってただけで。ってか、あれそのままにして、魔物に食わせた方が世の中の為にならないかなぁ?

「黙って囮になってなよ。あんまり五月蝿いと、そのまま魔物の餌にするよ?」

 トゥー兄の脅しに漸く下からの声が静かになった。
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