英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~デ・フォン領域~

レノ兄の依頼と過去の事件

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「ラル、少しいいか?」

 手元の書類を見ながら僕に話し掛けてくるレノ兄。

「うん、どうしたの?」
「デ・マームの地下中心部にある古代遺跡の地下通路を覚えているな?」
「勿論。忘れる訳ないよ」



 僕が7ファルレの時、孤児達を使って合成体キメラを造り出してた人間がいた。
 僕はラファス兄に連れて来てもらってデ・マームにいたんだけど、たまたま知り合った孤児の子達に、孤児達が消えると言う噂を聞いて、孤児じゃないなら一人でいるなと言われたけど、気になって一人で調査した。
 元々孤児が消えるって話自体は、どこにでもある珍しくも何ともない事だったけど、何か引っ掛かったんだよね。
 10才以下の子供の中でだけ流れる噂だった為、特部の兄さん達に言って相手に感付かれても意味がないからって理由で、一人だけで調べだしたんだけど、僕に忠告した子が何かを知ってるようだったから、その子の近くをわざと目立つように彷徨うろついてたら、変な男が釣れた。『お金が欲しくないか?』『一緒に来るなら仕事をあげるよ』と言ってきたので、付いて行ったら地下に連れていかれた。
 その場所は周りに古代語の残る、本来なら治療目的の部屋である空間なのに、混じり合う不穏な魔力が充満していたから、その男に色々問い掛けたら、案の定自慢気に『合成体を造ってる』『知ったからには君もここで合成体になるんだ』『怖い事はない』『意思も残るし既に成功もしている』『誰にも負けない強さが欲しいだろう?』『強くなれば、誰も君をしいたげない』とか、色々戯れ言吐いたから、その男を捕まえようとしたんだけど、孤児が僕の邪魔をしたんだ。僕に忠告してくれた子が。
 彼はもう、人間じゃなくなってた。その上男の命令で、人の姿ですら取れなくなって、意思も僅かに残ってるけど、それすら時間の問題だった。
 その強さは、当時の僕より少し弱い程度。でも、街中で暴れれば間違いなく壊滅状態になるから、ラファス兄に助けてもらった。
 男が自慢気に話し出す少し前に、通信機でラファス兄に繋げて、特部の兄さん達にも状況を把握してもらっていたから、ラファス兄に合成体にされた子供の後始末をお願いしたんだけど、僕的には悔しくて、思わず泣いちゃった。
 だって、もう元には戻れないから殺す以外に方法はないけど、せめて知り合った僕がほうむってあげるのが一番筋が通るのに、僕がすれば街もある程度巻き込んでしまうから、叶わなかったんだよね。あの時は自分の力不足に泣けたよ。ウル兄は何か勘違いしてたみたいだったけど。
 勿論主犯の男は捕らえられ、幾人もの幼い命を弄んだ罪により処刑され、地下のあの場所だけはラファス兄が封印した。
 
「あの場所は入れないけど、あの辺一帯の地下通路は聖騎士団の管轄になったんだよね?」

 事後処理はラファス兄と特部の兄さん達にお任せしたけど、その後の報告で聖騎士団の管轄になるって聞いた筈。間違ってないよね?

「ああ。聖騎士団の管轄になっている。が、最近変な目撃情報が入って来ている。あの辺は古代語の影響が残る場所があると言っていたな?迂闊に彷徨くなと」
「うん。あの地下通路はあちこち仕掛けが施されているから、奥に入るなら僕かラファス兄が適任。僕とラファス兄ならそんなヘマしないけど、複数で行けば、触れちゃいけない壁に触れたり単なる会話で誤作動する可能性もあるからね。ラファス兄はまだ中央こっちに来てないだろうから、調査するなら僕一人でするよ?」

 あの地下通路、横路逸れると迷子になりかねないからね。僕は表記指示とか読めるから問題ないけど、他の人が行って迷子になったら捜すの大変だし、下手すりゃ餓死する可能性も出てくるからね。
 連れて行ったら間違いなく足を引っ張られるだけだから、最初から連れて行かない方が一番楽だ。特部の兄さん達でも迷ったら直ぐには出られないだろうからね。

「そうだな、頼む」
「うん、頼まれた。今から行った方がいい?」
「いや、明日でいい。ラルならそのまま行った所で問題ないだろうがな」

 うん?何か、レノ兄にしては変な言い回しだな?

「そーいや変な目撃情報って?」
「見た者は幽霊だとか言っている奴が多い」
「はぁ?幽霊?精霊とかでなく?」
「見た目は若い男で髪は長く、白衣を着ていたそうだ。追い掛けると忽然と姿を消したらしい」

 ……そーいや白衣って、あの事件を起こした男も白衣を羽織ってたなぁ。まぁ白衣着るのは、医学関連か錬金術師辺りだと思うけど。

「白衣ねぇ?その、姿を消したってのは、多分そこに扉があると思う。ラファス兄が作った簡易地図あるよね?どの辺か教えて。あのポンコツ学者みたいに古代語訳をする学者の方が多いんだろうけど、マシな人もいるからね。多分その人はマシな部類に入るぐらいの古代語訳が出来るんだと思うよ」

 因みにポンコツ学者は色々やらかしてくれてるのと、古代語訳出来る僕とラファス兄がいるから解雇したっぽい。いても役に立たないからね。あんなヘッポコなポンコツ学者。
 ただ、僕達は本部にいる事が少ないから、古代語に興味が尽きないような熱心な人を、学者、学生、一般人を問わずに募集した中で、僕の判断で僕とラファス兄との相性が良さそうな人に教える事になったんだよね。あまりにもポンコツが多いから。いなけりゃ次回に持ち越しって言ってたんだけど、一人だけ、当て嵌まる人物がいた。
 因みにスーヴェンさんも古代語は出来るけど、正体種族を隠してるから気付かれてない。
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