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後日談

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 それから数日後、ミルド侯爵家は王都の邸を売り払い、領地に引っ込んだとの噂が流れるが、ミルド侯爵子息とミリアムの婚約が正式に破棄されたので、ルークスやローレン家には、最早関係の無い話だ。

 ルークスがエドワルドに都合の良い日を確認し、後日、ローレン邸を訪れローレン侯爵にそれを伝えていた時、ローレン邸に訪問者がやって来た。

 訪問者は、ルークスには馴染み深い者。要はローズウッド公爵夫妻だ。

 ローズウッド公爵夫妻は今朝、王都に着いたばかりだが、手紙でいつ頃になるかも記載していた為、数日早かろうが予想内で有り、ルークスもローレン侯爵も、慌てる事無く出迎えた。


「やあ、久し振りだねリウにルーク。元気そうで何よりだよ。ミリーの様子はどうだい?ルークの手紙では、ミリーが婚約を破棄され、ルネが新たな婚約者候補になったと書いて有ったが本当なのか?」

「義兄上、姉上、お久し振りです。それと、その話は本当です。私が相手の言葉を鵜呑みにしたばかりに……。ミリーは暫く邸に引き籠って居ましたが、ルークがミリーを連れ出してくれて、ルネ君と仲良くなり、すっかり元気になってます。ルークには世話になりっぱなしで、親として情けない限りです……」

「いや、リウの所為では無いだろう。ミリーを大切にすると言って置いて、約束を違える方が悪い。腹立たしい事では有るが、そんな家とは婚姻前に、縁が切れて良かったと思うべきだろう。それに、新たな相手がルネなら、私にとっても喜ばしいよ」

「最近は争い事が無い分、平穏呆けした令息令嬢が増えていると聞きましたが、まさか、衆目の中で婚約を破棄すると言う暴挙に出た考え無しな令息が、可愛い姪の婚約者だったとはね。シリー、ルーク、当然相手の有責を認めさせた上で、キッパリと縁を切ったのでしょうね?」


 セシルは笑顔では有るものの、その雰囲気は歴戦の騎士そのものだ。


「勿論です。叔父上、あれを」


 ルークスはローレン侯爵の持つ誓約書を、両親に手渡す。

 そこには相手のミルド侯爵の署名とローレン侯爵、シリウス=ローレンの署名がしたためられていた。

 セシルとバルトは、その書類の中身に全て目を通した上で、再度確認する。


「この書類の部数は?」

「ミルド侯爵、叔父上、アレクシス陛下へ各々一部ずつ、計三部数です」

「上出来だ、よくやった。後はエドワルド殿を交えて、正式な手続きを進めれば良いよ。あの二人が義甥と義娘になってくれるなんて、嬉しい限りだ。挨拶には勿論私も行くからね」


 ニコニコと上機嫌なバルトに、仕方無いわねといった表情でセシルが言う。


「ルークからの手紙を読んで、旦那様はずっとこの調子なの。放って置いたら、単身馬で、夜通し王都に駆け込んで行きそうな勢いだったわ」


 さすがにそれは周囲が何事かと驚くから止めたけれど、とのセシルの言葉に、ルークスは父上らしいなぁと苦笑していた。
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