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後日談

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 今日は、ジェフの従妹で有るリラの結婚式だ。

 仕事でドレファンに行っていたジルギリスやマーウィンも、この日の為に、数日前から一時帰国している。

 レオンはまだ子供なので、結婚式のリハーサルには出席してないが、叔父で有り、後見人でも有るエドワルドの結婚式な為、参列を許されていた。

 叔父の着る衣装の襟や裾、袖口には、花嫁の衣装と同じ物なのだろうレースが施されているようだが、幾何学的な模様に見える上、ワンポイントといった具合なので、格好良くすら見える衣装だ。

 大聖堂の正面に位置する道の端で佇むエドワルドが、懐中時計を何度も取り出し、何度も時間を確認する。

 そんな傍目からもイライラしてる姿のエドワルドを見て、レオンはこっそりと叔父上、変わったなぁと思っていたら、花嫁を乗せているであろう馬車が近付いて来る。

 今日は王弟公爵で有るエドワルドの結婚式だから、王都でのこの時間に、エドワルドの花嫁を乗せた馬車以外の馬車を走らせる事自体が禁止されているのだ。

 それに、ジルギリスとジーン、リラと初めて会った時に傍に居た、護衛らしき男が居るのだから、間違いは無いだろう。

 因みに、王族で有るアレクシスとアナスタシア、レオンが居る場所は、大聖堂へと続く階段の中央に位置する踊り場で、他の貴族達は階段下の広場に居る。

 他国の大使達は大聖堂の控え室で、式が始まる直前まで待機する事になっている。

 少し遠目では有るが、エドワルドを含む人々の表情は、ハッキリと見える場所だ。

 ジルギリスとジーンが、馬車の足場の横に左右分かれて付き、扉を開けてジルギリスが馬車内に手を差し伸べている。

 その中から出て来たのは、この世の者とは思えないような美女。

 目付きの鋭さは消え、別人かと思えるような雰囲気で、とても美しく微笑んだのだ。

 そう。花婿で有るエドワルドを見て。

 そして、泣きそうな顔で失敗したとばかりに叫んでしまったリラの言葉は、レオンの所までギリギリ届き、レオンの心を完膚無きまでに抉る。

 エドワルドがリラを軽く抱き締め言った言葉や、その後の会話は聴こえなかったが、顔を真っ赤に染め、恥じらう花嫁姿のリラは艶かしくも美しい。

 そんなリラにエドワルドが跪き、プロポーズをしている光景が続き、一生エドワルドの傍に居るとの返事が風に乗り聴こえ、更にはエドワルドの額に口付けを落として真っ赤になる姿まで見せ付けられて、レオンは涙目だ。

(酷いっ!ズルいっ!!羨ましい~っっ!!!)


「今更後悔した所で遅いのですよ。リラはエヴァンス家の宝。悪評や噂に惑わされるような馬鹿共に、私の可愛い従妹が心惹かれる事は無いのだから」


 レオンの横で冷ややかに貴族達を見下ろすジェフに、アナスタシアはレオンをチラッと見て、笑顔でジェフの言葉に追随する。


「相手の本質を知ろうともせずに、散々リラ様を虚仮にして置きながら、今更悔やむのは虫がいい話ですものね」


 レオンの心は再度、深く抉られたのは言うまでも無い。
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