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後日談

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「今日は婚約者を蔑ろにして、身の破滅を招いた王族の話をしましょうか」


 議題は違うものの、ほぼ毎日そんな語り方でレオンの特別講義が始まり、その後の顛末を語り終えた後は、ジルギリスはこう締め括る。


「こうなりたくなければ、確り学んでくださいね」


 この言葉で、その日の講義が終了する合図となるのだが、その頃には、レオンはいつも真っ青な顔色になっている。

 因みに、この特別講義には、最初の通過儀礼と呼べる体験学習が有る。と言っても正確には見学と呼べる物だが。

 それは、王宮に有る、調理前の動物を解体する解体場所だ。

 その場所で、動物の解体が行われていたのだが、ジルギリスはレオンの横で、レオンにのみ聴こえるように言う。


「人間も動物ですから、体内の構造は多少の違いは有れど、似たような物です。さすがに人をかっ捌く事は出来ませんからねぇ」


 因みにこの通過儀礼、過去のマーウィンは嬉々としてガン見していたが、レオンは気を失い、意識を取り戻すと嘔吐した。

 そんなレオンをジルギリスとマーウィンは、冷ややかに見る。


「マーウは解体される動物を見た後でも、普通に肉料理を食べていたそうです。それに、アレクシス君は吐きそうにはしてましたが、ちゃんと意識も有り、我慢はしてましたよ。当時のアレクシス君は、レオン君よりも幼かったのですがね……。ああ、因みにレオン君の知っているルナとルネは、七才ぐらいで既に鳥を狩り、捌いていたそうですよ」

「情けない。これが私の孫だとはなぁ」


 きっとレオンがあんな事をやらかさなければ、もっと優しい言葉を掛けられていただろうし、人を連想させる事も言われなかっただろう。

 だが、レオンは選りにも選って、やってはいけない人の愛娘にやらかしたのだ。

 そうしてその日の特別講義が終わった後は、昼食時間になるのだが、勿論レオンに食欲は無く、ジェフが来る頃には昼食を抜く事が多くなっていた。


「世の中には食べたくても食べられない者が居ると言うのに、残すなんて贅沢な話ですね。知っていますか?最近、王宮の料理人達があの手この手で貴方に食べて貰おうと、料理に工夫を凝らしているのを。貴方が食べないのは、料理人達の腕が落ちたからと囁かれているのを。彼等は食欲減退の理由を聞かされてはいますが、貴方が美味しそうに食べていないからと、その噂を否定もせずに居ると言うのに。この調子だと、彼等は不当に職を失い兼ねませんが、それでも良いと思って居られるのですかね?」


 そんな事になっているなんてと、ジェフの冷たい言葉にレオンはより顔色を青ざめさせて、首を横に振る。


「貴方は周囲の迷惑を少しは考えなさい。下手をすれば、毒を盛られたとの憶測をされていた可能性も有り得るのですから」


 レオンはジェフの言葉に依り、自分の認識の甘さを再度自覚させられるのだった。
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