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後日談

49 (マディソン視点)

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 夜も更け、日付を跨ぐまで後二~三時間と言った頃合いの時刻に、王都へと着き、急ぎ馬車の中で正装に着替えた、顔色の頗る悪い貴族達が、王宮の門を叩く。

 年越しの夜会は、時間制限がされていない為に、日付が変わる時刻まで、閉ざされる事は無い。

 そうは言っても王都に住む貴族達は、親しい者達と早めに合流し、挨拶や情報交換の為に、夕方頃に集まるのが常識だ。

 国王陛下に挨拶する順番は、基本身分の高い者達からだが、入城しても居ない相手の事まで数に入れる訳も無く、そうなれば当然、遅れた者は長蛇の列の最後尾、つまりは下位の中に混じる事になる為、王都の貴族は時間を考慮しても、そんなギリギリな時間に来る事は無い。

 因みに、あの三人がそんな時刻に着いたのは、道中賊に襲われたり、物資調達に時間が掛かったり、休息を多く取ったり、時間配分を怠った事も含まれる。

 賊に関して言えば、賊の腕前がそれ程強く無かったのと、マディソンの腕前がそこそこ良かった事、街や村に立ち寄った際、その身から悪臭を漂わせていた事や、ヒステリックに喚き散らす異常な女を見て、儲けが少ないか、関わり合いにならない方が良い、と判断されたようだ。

 そしてマディソンはと言うと、この道中で、ほとほとサラに嫌気がさしていた。

 何せ、今まで見てきたサラは、可愛くて明るい健気な少女と言った感じの女性だったのに対し、あの夜会、エヴァンス侯爵子息の言う本性を表した後のサラは、自己中心的で人を物のように扱う女だった。

(それに比べると、あの時の彼女は物凄く綺麗だった……)

 あの夜会の時の、アシュリーの姿を思い出し、マディソンは激しく後悔していた。

 幾ら後悔したって、もう遅いと理解はしている。

 が、それでも、何故こんな女に引っ掛かってしまったんだとの思いが強い。

(彼女は、いつから笑わなくなっていたんだろう……)

 あの夜会以前の時で、アシュリーが笑っている姿を思い返してみると、それは随分昔の事で、明らかに最近では無い。

 ジーンの言葉と冷たい視線が嫌でも思い起こされ、時折背筋に寒気が走る。

(サラは、国王陛下に直談判すると言い張るが、した所でどうにかなるような事か?どう考えてもこちらが全面的に悪いのに。道中何度も無駄足になるのではと言ってみたけど、聞く耳を持たないし……)

 こんな事ばかりな為、ついついサラとアシュリーを比べてしまい、結果アシュリーの方が良かったと、心底思ってしまうのだ。

(……帰りたい。そして出来る事なら、アシュリーと婚約解消する前に戻って、もう一度やり直したい……)

 叶わぬ願いと知りつつも、マディソンはそんな事を思っていたのだった。
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