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後日談

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 ライラは何度もダンに突っ込んで行くが、全て剣を合わせる事無く、スルリと避けられる。


「がむしゃらに突っ込んで来た所で、反撃されたら終いだぞ?」


 ダンはライラの動きを、最小限でかわすのみ。

 その間も、的確な言葉でヤジを飛ばす。


「もっと相手をよく見ろ!狙いが甘い。お前、本っ気で俺を狙う気あんのか?俺ぁまだ、剣を一度も振って無いぞ?脇が甘い。やり直せ」


 そして、ライラの息だけが上がり、ライラは悔しくて堪らない。

(一矢を報いる所か、全く歯が立たないだなんて!!)


「マッド」


 ダンがマッドの名を口にすると、ライラは思わず振り返る。

 そしてその瞬間、ライラの喉に、ヒンヤリとした金属の感触が当たり、心底驚く。


「おい、本当にやる気あんのか?お前。たかがマッドの名を口にしたぐらいで、気を取られやがって。これが実践なら、お前は確実に死んでんぞ」


 ライラはその言葉に、騙された気分だ。


「おいおい、騙されたとか、生温い事考えてんじゃねぇだろうなぁ?じゃあ聞くが、お前は実践でマッドの名を聴きゃあ振り返ったりすんのか?マッドの声に気をとられて、敵に後ろを見せんのか?お前がそれで死んだら、マッドがどんな想いをすると思ってんだ?実践じゃなけりゃあ良いと思うなよ?実践ってのは、普段こうした手合わせの癖だろうと、充分影響すんだ。惚れた相手に気を取られて死にました、じゃあ、話にもなんねぇぞ」

「……えっ?」


 ダンの言葉に、ライラは呆然とダンを見返す。


「ああぁ?もしかして、無自覚か?」

「えっ……えっ?……ほっ……惚れ、た……相手?」

「そうだろが。何だよ、本当に無自覚か。お前の俺を見る目は嫉妬だろ。どうせあいつが無自覚で煽ったんだろが。俺ぁマッド程鈍くはねぇぞ。あいつは今までの事も有るから、無意識に恋情を避けようとするだろうが、気にすんな。碌な野郎しか居なかっただけだ。見た目の性別は違うが、お前はマッドの好みにドンピシャだぞ?」


 ライラはダンの言葉を、鈍った頭の中で、理解するまで反芻しようと努力する。

(ぼっ……ボクが、マッドさんを、好き?嫉妬?恋情?マッドさんの好み……。惚れた相手、マッドさん、この人に嫉妬……。じゃあ、あの、ムカムカやイライラ、モヤモヤしてたのって……)

 ダンの言葉にライラの中で、カチリと何かがピッタリ嵌まった。

 それは、無かった歯車を入れられ動き出したような、パズルのピースが揃ったような、そんな錯覚をライラにもたらした。
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