上 下
411 / 804
後日談

4

しおりを挟む
 そんなこんなでエヴァンス領へと入り、道中賊達に絡まれた事も有るには有るが、日程が遅れるような事も無く、予定通り前回と同じく十日間で着くと、報せを聴いていたキーツが出迎えてくれる。


「ようこそお越し下さいました。クルルフォーン公爵様、奥方様。お部屋はご要望通り、夫婦用のお部屋をご用意致しましたが、奥方様のお部屋もそのまま残しておりますので、どちらもご使用可能で御座います。一先ず、夫婦用のお部屋へと案内させて頂きますね」

「有難う。リラの部屋でも夫婦の部屋でも、沢山可愛がってあげるから、二人でたっぷりと愛し合おうね」


 エドワルドがリラに向かって、堂々と言い放つ物だから、リラはエドワルドとの情事を思い出さずにはいられなくなり、疼く身体を真っ赤に染めて、泣きそうな顔になりながらもエドワルドに抗議する。

「そそっ、そう言う事は、人前で宣言なさらなくとも良いのですっ!!」

「それでは私達が、仲の良い夫婦だと理解しては貰えないよ。令嬢だった頃の部屋を残すと言う事は、帰って来ても、いつでも居場所は有ると言う事だし、何か有れば、いつでも帰って来なさいと言う意味も有るのだから」

 勿論、一般的にはそうなのだが、実は前回の帰り際に、エドワルドはリラの知らない所で、リラの部屋を残して置いて欲しいと願い出ていたのだ。

 リラがエドワルドの元に来るまで過ごしたその部屋で、リラの記憶に、エドワルドとの情事の思い出を記憶させ、自分の部屋を思い出した序でに、その場でエドワルドに抱かれたと言う記憶も思い出せば良いと言う思惑有っての事だ。

 エドワルド自身、令嬢時代のリラを抱くような疑似体験も出来るし、一石二鳥と思っている。

 要は、リラに実家へと帰らす気になんてさせなければ良いのだし、実家に居場所が有るのと無いのとでは、精神的な逃げ場の確保と、どちらの家族にも、必要と思われている事の実感が違うだろう。


「私はここに、リラを一人で帰す気は毛頭無いし、何が有っても手離す気は無いよ。他に帰る居場所が有ったとしても、リラの帰る居場所は、常に私の隣だから、それを忘れてはいけないよ」


 そんな事を愛する伴侶に言われて、嬉しくならない筈が無い。

 リラはエドワルドへと自ら抱き付き、小さな声で返事をする。


「はい……。わたくしの居場所は、エド様の隣だけです……」


 リラの愛らしさに煽られたエドワルドは、リラを抱き締めキーツに言う。


「済まないが、今直ぐ部屋に案内してくれ。私達は長旅故に疲れているから、夕食の時間までゆっくりと寝室で休ませて貰おう。良いね?リラ」


 明らかに色気が駄々漏れの、欲情した眼差しを向けられて、リラは疼く身体を持て余しながら、コクコクと頷くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お幸せに、婚約者様。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

【完結】好きな人に身代わりとして抱かれています

黄昏睡
恋愛
彼が、別の誰かを想いながら私を抱いていることには気づいていた。 けれど私は、それでも構わなかった…。

ヒョロガリ殿下を逞しく育てたのでお暇させていただきます!

冬見 六花
恋愛
突如自分がいる世界が前世で読んだ異世界恋愛小説の中だと気づいたエリシア。婚約者である王太子殿下と自分が死ぬ運命から逃れるため、ガリガリに痩せ細っている殿下に「逞しい体になるため鍛えてほしい」とお願いし、異世界から来る筋肉好きヒロインを迎える準備をして自分はお暇させてもらおうとするのだが……――――もちろん逃げられるわけがなかったお話。 【無自覚ヤンデレ煽りなヒロイン ✖️ ヒロインのためだけに体を鍛えたヒロイン絶対マンの腹黒ヒーロー】 ゆるゆるな世界設定です。

【完結】辺境伯令嬢は国境で騎士領主になりたいのに!

葉桜鹿乃
恋愛
辺境伯令嬢バーバレラ・ドミニクは日夜剣と政治、国境の守りに必要な交渉術や社交性、地理といった勉強に励んでいた。いずれ、辺境伯となった時、騎士として最前線に立ち国を守る、そんな夢を持っていた。 社交界には興味はなく、王都に行ったこともない。 一人娘なのもあって、いつかは誰か婿をとって家督は自分が継ぐと言って譲らず、父親に成人した17の時に誓約書まで書かせていた。 そして20歳の初夏に差し掛かる頃、王都と領地を往来する両親が青い顔で帰ってきた。 何事かと話を聞いたら、バーバレラが生まれる前に父親は「互いの子が20歳まで独身なら結婚させよう」と、親友の前公爵と約束を交わして、酒の勢いで証書まで書いて母印を押していたらしい?! その上王都では、バーバレラの凄まじい悪評(あだ名は『怪物姫』)がいつの間にか広がっていて……?! お相手は1つ年上の、文武両道・眉目秀麗・社交性にだけは難あり毒舌無愛想という現公爵セルゲウス・ユージーンで……このままだとバーバレラは公爵夫人になる事に! そして、セルゲウスはバーバレラを何故かとても溺愛したがっていた?! そのタイミングを見計らっていたように、隣の領地のお婿さん候補だった、伯爵家次男坊まで求愛をしに寄ってきた!が、その次男坊、バーバレラの前でだけは高圧的なモラハラ男……?! 波瀾万丈のコメディタッチなすれ違い婚姻譚!ハッピーエンドは保証します! ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも別名義で掲載予定です。 ※1日1話更新、できるだけ2話更新を目指しますが力尽きていた時はすみません。長いお話では無いので待っていてください。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完】前世で子供が産めなくて悲惨な末路を送ったので、今世では婚約破棄しようとしたら何故か身ごもりました

112
恋愛
前世でマリアは、一人ひっそりと悲惨な最期を迎えた。 なので今度は生き延びるために、婚約破棄を突きつけた。しかし相手のカイルに猛反対され、無理やり床を共にすることに。 前世で子供が出来なかったから、今度も出来ないだろうと思っていたら何故か懐妊し─

愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...