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本編

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 朝食を食べ終え、リラはエドワルドと共に少し離れた街へと馬車で向かう。

 勿論ダンは護衛として、馬で同行しているが、双子もレベッカもお留守番をして貰う事にした。

(折角のデートなのですもの!二人切りでお出掛けをしたいのは山々ですが、さすがにそういう訳にはいきませんので、ダンだけ、少し離れて同行して貰うのです!)

 街に着いて馬車を降りる時も、エドワルドが手を貸し、降りてからもエドワルドの腕を取れば、いつも以上の視線に晒される。

(うぅ……。これは絶対、何故これ程の美貌の男性に、わたくしのような平凡以下の娘が並んでいるのかと、皆不思議に思っているのですわ……。兄様やダンが一緒の時も視線が強かったですけれど、エドワルド様の方が一番強いです……。ですが、負けるものですか!!)

 リラは無表情でいるものの、ピンと張り詰めた空気を放ち、エドワルドの腕を離さないようにと密着させる。


「……リラ?どうかしたのかな?」

「なっ、何でも有りませんわ、エドワルド様!先ずはあちらに行きましょう!」


 リラは、エドワルドの腕を引くように歩き出す。

 エドワルドとしては、リラの柔らかな胸が腕に当たり、役得感が半端ないのだが、それでもリラが緊迫感を醸し出すので、少し考え、周囲に目を配り、この視線の多さが原因だろうかと推測し、リラに声を掛ける。


「リラ。リラは随分と領民に好かれているのだな」

「?どうしてそんな事を思うのですか?」

「どうしても何も、この視線は私がリラに相応しいかどうかの品定めなのだと思うよ?」


 リラは立ち止まり、警戒している為か、無表情のままでエドワルドを見返しているものの、普段の表情豊かな姿を見ていた為か、それはないのではないかと思っているのが何となく解ってしまう。


「リラの婚約が、領民には知らされているかどうかは私は知らないけれど、今のこの状況を見れば、私が婚約者か恋人だと、直ぐに思い至るだろう。ただし、私を知らない領民からすれば、どこの馬の骨だと思うのではないかな?」

「うっ、馬の骨だなんてそんな!!」

「仕方が無い事だと思うよ。私は所詮余所者だからね。でも、だからと言って、引く訳にはいかないよ。リラの隣は私の物だから」


 エドワルドは、ニッコリとリラに優しく微笑む。

(そっ……そんな筈無いです!エドワルド様はどこからどう見ても紳士でいらっしゃるもの!!それなのに、どうしてそんな風に……?)


「人の見方なんて、個々に違う物だよ。私は他のどんな女性よりも、リラが一番綺麗で可愛い。私を知らない他の者からすれば、私はただの、顔だけの男かも知れないよ?」

「そんな事はーー」

「無いとは言えないよ。そう言った者も、私は知っているからね。ああ、心配はいらないよ。私は相手に顔だけの男では無いと言う事をきっちりと解らせているからね」


 勿論頭を使って、とは声には出さず、リラが持つ腕とは逆の手の指で、トントンと頭に当てて見せたのだった。
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