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本編

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 翌日、リラは早朝から張り切り、本宅の厨房に顔を出す。


「厨房を少し借りても良いかしら?」

「リラお嬢様!ええ、勿論ですよ!」


 料理長の許可を取り、リラはお菓子作りに励むのだ。

 エドワルドや家族の分と、昨日の祝福の言葉と沢山の花束のお礼に、使用人達全員の分も作る為だ。

 数は多くなるだろうが、本宅のオーブンは大きいし、数台を同時に使えば、一度に沢山作れるから、王都で作るよりも時間は掛からずに済む。


「お手伝いしましょうか?」

「いいの。これはわたくし一人で作りたいから、手は出さないで」

「解りました」


 リラはクッキーを数種類とパウンドケーキを焼き、冷めた物から袋詰めをして、家族とエドワルド、専属の者達以外の名前を書き記した袋を料理長へと渡して、名前の通りに配って欲しいと頼む。

 料理長は快く引き受けてくれたので、厨房を後にして庭に向かうと、エドワルドとダンが手合わせをしていた。

(庭の手入れを手伝おうと来てみたら、思いもよらぬ収穫が!!エドワルド様が、剣を握っています~!普段も勿論格好良いし、あの優しい顔も大好きですが、剣を握るキリッとした顔も大好きです!!近くで見たいです!もっと見たいです!!でっ、ですが、エドワルド様と遭遇するなんて思っていなかったから、汚れても良いような格好ですし、邪魔になるからと、手袋も外しています!近くに行きたいけれど、格好がぁ~!!)

 リラは咄嗟に近くの大樹に身を隠しながら、顔を少しだけ覗かせ、手合わせを見ているが、屋敷内からはリラの姿が丸見えだ。

 そんなリラの姿を見て、使用人達が悶えてるとも知らずに。


「公爵様、もっと腰を下げろ。重心を下に!」

「分かった!」


 エドワルドはダンの指示に従いながら剣を振るい、受け止める。


「相手が賊なら、正攻法とは限らねぇぞ!」


 ダンはそう言って足元の砂を巻き上げ、視界を奪おうとしたので、エドワルドは距離を取る。


「うし、良い反応だ!これでラスト!!」


 そう言ってダンはエドワルドに突っ込み、一撃を加えようとするのを体勢を崩しながらも何とか受け止めた。


「今日はここまでだ」

「「ダン、する、次~♪」」

「ああ、はいはい。次は双子達なぁ。で?嬢ちゃんはいつまで隠れてんだぁ?」


 ダンはリラの方は見ずに声を掛け、その言葉にエドワルドは周囲を見回し、大樹の後ろにから、こっそりとこちらを覗くリラを見付けた。


「リラ、お早う」

「おっ、お早う御座います、エドワルド様!」


 だが珍しくリラが寄って来ない。


「リラ?どうしたの?」

「あのっ、そのっ……いっ、今は汚れても良いような、みすぼらしい格好なので……」

「?リラならば、どんな格好をしていても構わないよ。さぁ、こっちにおいで?」

「でも……」

「私もかなりラフな格好だからね、おあいこだよ?」


 確かに、言われて見れば、エドワルドにしては珍しく、かなりの軽装だった。
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