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本編
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年越しのパーティー当日、エドワルドは王宮へと向かう三時間前に、エヴァンス邸へとやって来ていた。
これは、ジーンやジルギリスが指定した時間で、エドワルドがリラ会いたさに、時間を無理矢理前倒しした訳では無い。
まぁ、勿論エドワルドとしても、少しでも早くリラに会えるのは嬉しい事だが、女性の身嗜みに掛ける時間を、とやかく言う気は無いし、自分の為に着飾ると言ってくれるリラが、可愛いと思う事はあっても、どうでもいいと思う事はない。
あまり着飾られると、他の男連中がリラをジロジロと見て来るのが非常に不愉快だが、それでもエドワルドの為に着飾るのだと言われると、優越感と独占欲が満たされる。
「女性は着飾るのにどうしても時間が掛かるけど、それもまた楽しみだよね。自分の為に少しでも綺麗にしようとする姿がまたいじらしいというか……。そう思うよね?エドワルド君も」
「はい。自分の為と聞かせられると、また格別な喜びが湧いてきますね」
ジルギリスがエドワルドに同意を求め、エドワルドもそれに頷く。
普段、着飾ることをあまりしないリラだからこそ、余計にそう感じてしまうのかも知れないが、そんなリラがエドワルドの為にと一生懸命に着飾ってくれているのだから、喜ばない訳がない。
そのままでも充分可愛いが、婚約のお披露目をしたあの夜会の時の美しさは息を吞む程で、皆が皆、リラに注目をし、男共はエドワルドに羨ましそうな視線を向けてくる者もいたのだ。
エドワルドが、ジルギリスとボードゲームをしていたら、少し離れた場所からリラの声が聴こえてきた。
「……お父様、ズルいです……エドワルド様を独り占め……。わたくしだって、エドワルド様が前以て来ると聞いたから、急いで仕上げて貰ったのに……」
リラが、扉付近から恨めしそうにこちらを見ているが、その姿はお披露目の夜会の時と大差ない仕上がりで、一人では絶対に歩かせてはいけない姿だ。
そして、その胸元と髪を飾るのは、リラが毎日付けると言って、実際に毎日欠かさず使用しているエドワルドの瞳の色をした、エドワルドから贈られたお気に入りの装飾品だ。
日常で使用しても、華やかな場所で使用しても、おかしくならないデザインは、リラにとってはとても嬉しい物。
会えない時でもエドワルドの想いに触れているようで、寂しさを紛らわせてくれた物でもあった。
「もっと一緒にいたいのに……」
リラのいじけた姿を見て、エドワルドは大いに悶えたのだった。
これは、ジーンやジルギリスが指定した時間で、エドワルドがリラ会いたさに、時間を無理矢理前倒しした訳では無い。
まぁ、勿論エドワルドとしても、少しでも早くリラに会えるのは嬉しい事だが、女性の身嗜みに掛ける時間を、とやかく言う気は無いし、自分の為に着飾ると言ってくれるリラが、可愛いと思う事はあっても、どうでもいいと思う事はない。
あまり着飾られると、他の男連中がリラをジロジロと見て来るのが非常に不愉快だが、それでもエドワルドの為に着飾るのだと言われると、優越感と独占欲が満たされる。
「女性は着飾るのにどうしても時間が掛かるけど、それもまた楽しみだよね。自分の為に少しでも綺麗にしようとする姿がまたいじらしいというか……。そう思うよね?エドワルド君も」
「はい。自分の為と聞かせられると、また格別な喜びが湧いてきますね」
ジルギリスがエドワルドに同意を求め、エドワルドもそれに頷く。
普段、着飾ることをあまりしないリラだからこそ、余計にそう感じてしまうのかも知れないが、そんなリラがエドワルドの為にと一生懸命に着飾ってくれているのだから、喜ばない訳がない。
そのままでも充分可愛いが、婚約のお披露目をしたあの夜会の時の美しさは息を吞む程で、皆が皆、リラに注目をし、男共はエドワルドに羨ましそうな視線を向けてくる者もいたのだ。
エドワルドが、ジルギリスとボードゲームをしていたら、少し離れた場所からリラの声が聴こえてきた。
「……お父様、ズルいです……エドワルド様を独り占め……。わたくしだって、エドワルド様が前以て来ると聞いたから、急いで仕上げて貰ったのに……」
リラが、扉付近から恨めしそうにこちらを見ているが、その姿はお披露目の夜会の時と大差ない仕上がりで、一人では絶対に歩かせてはいけない姿だ。
そして、その胸元と髪を飾るのは、リラが毎日付けると言って、実際に毎日欠かさず使用しているエドワルドの瞳の色をした、エドワルドから贈られたお気に入りの装飾品だ。
日常で使用しても、華やかな場所で使用しても、おかしくならないデザインは、リラにとってはとても嬉しい物。
会えない時でもエドワルドの想いに触れているようで、寂しさを紛らわせてくれた物でもあった。
「もっと一緒にいたいのに……」
リラのいじけた姿を見て、エドワルドは大いに悶えたのだった。
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