上 下
264 / 804
本編

213

しおりを挟む
 リラは早々に仕度を済ませ、ダンとレベッカ、双子達を連れて王宮へと向かい、父親のジルギリスに面会を求める。

 ルナは今回お忍びでは無いので、ルネとお揃いの色違いで、所々にレースやリボンの付く、女の子用ペアルックの服装だ。

 暫くするとジルギリスが現れ、人払いをする。

「どうしたんだい?突然」

「今日届いた物なのですが……」


 ジルギリスの問いに、リラはソッと例の書簡を差し出す。


「?レオン君の紋章だね」


 ジルギリスはそれを手に取り中を確認する。


「……。これは、早々に教育をし直す必要が有りそうだね。仕方無い。王妃にも許可を頂いて、アレクシス君と同等の(恐怖)教育を施さないと。有難うリラ、教えてくれて。こんな失礼な呼び出し状に応じる必要はないよ?」

「ですが、王太子の呼び出し状を無視したと取られてしまうでしょうし、エドワルド様に迷惑が掛かりそうなので、一応お会いしてみますわ」

「そう……。ダン、王太子が目に余る様なら、教育的指導をしても構いませんよ。後で報告を入れなさい。それとこれの中身だけは、私が預かって置くからね」


 ジルギリスは、リラに封筒だけを渡し、レオンの書簡を軽く振る。

 封筒の方はレオンの紋章が有る為、通行書にもなるからだ。


「了解です」

「今は子供で済むかも知れませんが、学院生活が終わっても、子供気分で居られては困りますからね。王族は特に権力の象徴ですから」

「それではわたくし、行って参りますわ」


 ジルギリスは笑顔でリラを見送った後、レオンの後見人である、エドワルドの執務室に足を向けた。

(ここは大好きな叔父からも、レオン君のその迂闊さに喝を入れて貰わないと……)

 そしてリラは、レオンの呼び出しの場所へと向かう。

 そこは、王族のプライベートな空間で、前は王妃であるアナスタシアの部屋だったが、今度は王太子、レオンの部屋が有る居住区の、広間に当たる部屋だ。

 その部屋に案内されて直ぐに、王太子のレオンが現れ人払いを命じ、リラの連れであるダンやレベッカ、双子達を一瞥し、リラに言葉を掛けてくる。


「貴女がエヴァンス侯爵令嬢ですね?内密の話が有ります。その者達も下げて頂きます」

「お言葉ですが、王太子様。それは致し兼ねますわ」


 リラがきっぱり言い切り、レオンは眉を寄せる。


「王族の私が望んでいるのに、ですか?」

「王太子様、わたくしはこれでも婚約者のいる未婚の娘。婚約者以外の男性と二人切りになる事は禁じられておりますの。それは喩え、社交界に出席していない子供だろうと、お年を召した高齢の男性だろうと、大した違いは有りません。王族だと仰るのなら、もっと慎重に行動をなさいませ」


 リラは初っ端から、レオンに苦言と言う名の駄目出しをした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...