上 下
222 / 804
本編

171

しおりを挟む
「アナスタシア王妃、リラが困惑してるので、テンションを下げて頂けますか?」


 そんなジーンにアナスタシアは不満足顔だ。


「ジーン様もお人が悪いですわ!兄妹仲が頗る悪いとお聞きしましたが、そんな雰囲気、どこにも無いでは有りませんか。それに、もっと早くに接触して頂けたのなら、わたくしがジーン様を警戒せずとも良かったのでは無いですか!」

「そう言われましても、兄妹仲が悪いと見せ掛けるのが、一番都合が良かったのですよ。私にとっての最愛の妹を、権力や金目当ての、どこぞの馬の骨にやる気は有りませんし、利用しようと考える連中にも渡せませんので、嫁に出す気も有りませんでしたよ。時期を見て、領内で婿を迎えて結婚させたと言って置けば、王都に来させる必要も無くなる、と思っていたのに、エドワルド殿にしてやられましたよ。まぁ、条件的にも、婿入り以外は全てクリアしているので、仕方無いなと認めましたけどね。ただし、この事は内密に願いたいですね。未だにリラとエドワルド殿との縁談を潰せると思い込んでいる馬鹿もいるんですよ。私の名前を使ってまでね……」


 ジーンが不機嫌さを丸出しにした為、アナスタシアは口を閉じる。

 さすが賢いだけあって、状況の見極めが出来ている。

 リラは、愛称でお義姉様と呼んで欲しいと言われ、挙動不審になっている。呼びたい所だが、本心では無いのにと思われたらどうしようと思っているようだ。

 そわそわするリラを見て、首を傾げるアナスタシアに、ジーンがリラのフォローに回る。


「気にしないで下さい。リラはコミュ障なだけなので、アナスタシア王妃を本当に愛称や義姉と呼んでも良いのか悩んでいるだけですから。リラ、アナスタシア王妃が良いと言ってるんだから大丈夫だよ。それにここにはエヴァンス家の者達しかいないのだから普通にして大丈夫だよ」

「ですが……未来のお義姉様に、嫌われたくは無いのですぅ~……」


 シュンと落ち込んだリラの様子を見て、アナスタシアは驚くが、直ぐに笑顔で応じる。


「わたくし、リラ様とは仲良くしたいわ。あのエドワルド様が選んだ方なのだもの。他の令嬢には見向きもしないエドワルド様がリラ様を知った切っ掛けとか、色々知りたいですわ!ああ、ですが、無理に聞き出す気は無いので、言いたくなかったら言わなくて良いですからね?わたくし、リラ様がどんな方なのか、前から興味が有ったのですわ♪」

「……あまり、面白くも何とも無い、平凡な小娘でもですか?」

「わたくしからすれば、あの女嫌いなエドワルド様に、結婚したいと思わせるだけで充分ですわ♪わたくし、今日はリラ様とじっくりお話したいので、補佐官の方と入れ替わるのは、明日以降で構いませんか?」

「それは王妃が入れ替わりたい時で構いませんよ。ただし、男装の方は直ぐにお願いします。ファーニーを王妃に仕立てる時間もいりますので」

「分かりましたわ。今直ぐに寝室で着替えるので、女性の方に手伝って頂いても宜しいでしょうか?」


 ジーンは頷き、ファーニーは持参した男物をアナスタシアに手渡した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

結婚式で王子を溺愛する幼馴染が泣き叫んで婚約破棄「妊娠した。慰謝料を払え!」花嫁は王子の返答に衝撃を受けた。

window
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の結婚式に幼馴染が泣き叫んでかけ寄って来た。 式の大事な場面で何が起こったのか? 二人を祝福していた参列者たちは突然の出来事に会場は大きくどよめいた。 王子は公爵令嬢と幼馴染と二股交際をしていた。 「あなたの子供を妊娠してる。私を捨てて自分だけ幸せになるなんて許せない。慰謝料を払え!」 幼馴染は王子に詰め寄って主張すると王子は信じられない事を言って花嫁と参列者全員を驚かせた。

2度もあなたには付き合えません

cyaru
恋愛
1度目の人生。 デヴュタントで「君を見初めた」と言った夫ヴァルスの言葉は嘘だった。 ヴァルスは思いを口にすることも出来ない恋をしていた。相手は王太子妃フロリア。 フロリアは隣国から嫁いで来たからか、自由気まま。当然その所業は貴族だけでなく民衆からも反感を買っていた。 ヴァルスがオデットに婚約、そして結婚を申し込んだのはフロリアの所業をオデットが惑わせたとして罪を着せるためだった。 ヴァルスの思惑通りに貴族や民衆の敵意はオデットに向けられ遂にオデットは処刑をされてしまう。 処刑場でオデットはヴァルスがこんな最期の時まで自分ではなくフロリアだけを愛し気に見つめている事に「もう一度生まれ変われたなら」と叶わぬ願いを胸に抱く。 そして、目が覚めると見慣れた光景がオデットの目に入ってきた。 ヴァルスが結婚を前提とした婚約を申し込んでくる切欠となるデヴュタントの日に時間が巻き戻っていたのだった。 「2度もあなたには付き合えない」 デヴュタントをドタキャンしようと目論むオデットだが衣装も用意していて参加は不可避。 あの手この手で前回とは違う行動をしているのに何故かヴァルスに目を付けられてしまった。 ※章で分けていますが序章は1回目の人生です。 ※タグの①は1回目の人生、②は2回目の人生です ※初日公開分の1回目の人生は苛つきます。 ★↑例の如く恐ろしく、それはもう省略しまくってます。 ★11月2日投稿開始、完結は11月4日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。 辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。 王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。 8月4日 完結しました。

夫はオシドリ夫婦と評される※ただし相手は妻の私ではない

キムラましゅろう
恋愛
クロウ子爵家の一人娘リゼットには単身赴任中の入婿である夫がいる。 訳あって短期間だけ知人の娘に変身して魔法省にてバイトをする事になったリゼット。 奇しくもバイト先は夫の職場。 訳ありの訳ありであくまでも他人になりすまして仕事をするリゼットは単身赴任中の夫がオシドリ夫婦と評判なのだという事を知る。 ただしそれは妻であるリゼットではない同僚女性との間で評されているものであった……。 さてリゼット、どうする? 作者は元サヤハピエン溺愛主義でございます。 いつも無理やりこじつけからの〜捻じ曲げて元サヤに持って参りますので、アンチ元サヤの方はそっ閉じをお勧めいたします。 いつもながらの完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 誤字脱字も大変多いです(断言)何卒ご了承のほどお願い申し上げます。 そしてモヤり、イライラ等による血圧の上昇も懸念されます。 コレらの注意事項をよくお読みになられて、用法用量を守って正しくお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿しています。

【完結】長年の婚約者を捨て才色兼備の恋人を選んだら全てを失った!

つくも茄子
恋愛
公爵家の跡取り息子ブライアンは才色兼備の子爵令嬢ナディアと恋人になった。美人で頭の良いナディアと家柄は良いが凡庸な婚約者のキャロライン。ブライアンは「公爵夫人はナディアの方が相応しい」と長年の婚約者を勝手に婚約を白紙にしてしまった。一人息子のたっての願いという事で、ブライアンとナディアは婚約。美しく優秀な婚約者を得て鼻高々のブライアンであったが、雲行きは次第に怪しくなり遂には……。 他サイトにも公開中。

政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈 
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので 結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中

処理中です...