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本編

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 頑なに拒むエドワルドに、何となくその理由に思い当たったダンは、リラをけしかける事にする。


「嬢ちゃん、ちょっとこっちに来い。公爵様はそこで待機。悪いようにはしねぇよ」


 リラをあっさりエドワルドから離して、少し離れた部屋の隅へと連れていく。


「嬢ちゃん、あれは普通に言っても聞きやしねぇぞ。嬢ちゃんと睡眠で嬢ちゃんを取る奴に、休めと言ったって効果はねぇよ。しかも嬢ちゃん、疲れてんなら暫く来るなみたいな事言ってるから、余計に無理だ」

「でも、あのままでは心配ですっ!エドワルド様は慣れているのかも知れませんが、あのまま放って置く事なんて出来ません!」

「そこでだ。嬢ちゃんは、リリー奥さんがジルの旦那に膝枕してたの見て、将来の旦那に出来たら良いなみたいな事言ってたろ。今がその時だ!公爵様は来年の今頃には確実に嬢ちゃんの旦那になってるし、嬢ちゃんの夢も叶う。それに、公爵様が嬢ちゃんの膝で休むって事は、前言撤回するって事だから、嬢ちゃんが公爵様を翻弄出来たって事になる。どうだ?良い案だと思わないか?」


 それを聞いたリラの目は、嬉しそうに輝き出すが、少しだけ不安もあるようだ。


「ですが……断られたらどうしましょう……」

「無い無い。天地がひっくり返ったってそれは無い。あるとすれば、公爵様が記憶喪失になった時ぐらいだ。それも多分、最初の頃ぐらいだけだと思うがなぁ。悪戯さえしなけりゃ、次回もやってやるって言ってやりゃあ良い。ただし、嬢ちゃんに悪戯やり過ぎると、俺が嬢ちゃんとマッドを交代させるって言ってたって事は、公爵様に言うんだぞ?」

「……分かりました。頑張って、エドワルド様と交渉してみます!……ですが、そっ……その時間は、二人切りでも構いません、よね?」


 リラはエドワルドと二人切りになりたいようだ。見られるのが恥ずかしいのもあるだろうが、多分これは、リラの望みでもあるのだろう。


「分かった分かった。ちょっとぐらいならイチャついても見逃してやる。ただし、公爵様には内緒な?また暴走されると嬢ちゃんじゃあ止められないからな」


 満面の笑みを見せるリラの頭を撫でて、エドワルドの方へと促すダン。

 リラに甘過ぎると言うなかれ。リラは今まで、我儘らしい我儘は殆ど言った事が無いのだから。あるとすれば、周囲の人の為であり、役に立つ為と言った自身の望みと呼べないような物ばかり。そうなると、どうしてもリラの望みは叶えたいと思うのが、エヴァンス家に仕える使用人達の、リラを主人あるじとする者達の願いだから。
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