氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

本編

7 (ジーン視点)

　リラは全然解っていない。自身の容姿の良さと、自身に関する事以外の頭の良さを。

　リラは普通の男では太刀打ち出来ない程賢いのだから。

　男の中には賢い女は可愛くないと言う阿呆もいるが、それ等は単に、己の馬鹿さ加減を知られたくないか、器が小さいだけの話だ。

　幼少の頃にリラに暴言を吐いた、とある貴族の子息は、二度とリラの前に現れないようきっちり手を打った。ただ、その時の奴に言われた暴言を真に受けたのだろう。リラが、自身の容姿を極々平凡かそれ以下だと思い込み、家族や使用人が訂正するも、それは身近で親しい仲だからと本気で勘違いしたまま今に至る。

　リラが泣きながら、醜くてごめんなさいと言った時は、奴を闇に葬っておけば良かったと、何度か後悔した程だ。まぁ、後に報復として、それに近い事をしてやりはしたが。

　リラはエヴァンス家に時折生まれる才能のある者だ。それだけを理由にする者も、それを解りもしない者にも、リラをくれてやる気はない。そう思っていたのに、よりにもよって、あの王弟公爵がリラを望むだなんて。

　今までリラと接触する事自体殆どなかったというのに、いきなり求婚だなんていつからだ？どこまで気付いてる？他の奴なら簡単に粗探しが出来るというのに、あのエドワルド公爵はそれが出来ない。

　彼は王位に興味は無く、兄が王になり、王子が産まれて直ぐに王位継承権を放棄し公爵となったが、兄とは違う王の資質を持つ者だ。

　ただ、人にも物にも執着した事が無く、人当たりは良いが、深入りする者は悉ことごとく退けられる。

　実際、王子時代に娘を差し出そうとした者や、王位争いを唆そそのかす者、取り入ろうとした者達が多く存在したと言われていたが、今や彼の周りに居るのは真面目に政務に携わる者達ぐらいだろう。彼は優秀な政務官として王の片腕を担い、支えているのだ。

　あれは私とは少し違うが、有言実行の相当な腹黒策略家だぞ。その彼が、エヴァンス家の宝であるリラを望むだなんて、何の思惑だ……。

　リラは嫁がせずに、私が気に入った男を婿入りさせる気でいたと言うのに、何だって元王族の王弟公爵がリラを狙う？しかも、弟想いで未だに結婚していない弟を心配していた国王陛下に話を通し、嬉々とした王からの打診にするなんて、断る事も潰す事も出来ないじゃないか。

　悪名名高いリラに、臆する事無く求婚する行動力には評価出来るが、その理由が、利用出来るからとかなら、私は本気で潰しに掛かるからな？


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　※補足として、リラの兄の一人称は間違いではありません。
　僕＝家族や極限られた人の前のみの本心＋プラス猫かぶりモードで、私＝公の場や腹黒思考の時の本性＋冷酷モードです。二重人格とまではいかないものの、公私を完全に分けてるように見た目は見えますが、重度のシスコンなので心の中では、リラ中心に回ってたりします。