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 私は桃色と白のグラデーションの羽を持つカモメの夢を見ていた。カモメたちが飛ぶ空は青い空が何処までも続いていた。これを見るときは大体良いことがあることだ。

「伊織!起きろ!学校に遅れるぞ!」

 1階から父親の怒鳴り声が聞こえたと同時に、枕元に置いてあった目覚まし時計が高らかに部屋に鳴り響いた。

「ふわ・・・・・・。やばっ!こんな時間!」

 目覚まし時計を勢い良く叩いて覗き込むと、遅刻寸前だった。急いで制服を着て、昨日の夜のうちに準備しておいた教科書を鞄の中に突っ込んで、充電器からスマートフォンを引き抜き、スマートフォンも充電器も入れると急いで階段を駆け下りた。

「おはよう、父さん。お兄ちゃん」

 リビングに入るとウインナーの焼ける良い匂いがしていた。

「また寝坊かい?お姫様」

 チュッと額にキスをされて、抱き上げられた。顔面偏差値86の兄が優しい笑みを浮かべていた。学校ではツンツンしているが、私には優しくしてくれる。

「一緒に食べよう」

 家族3人が揃ってご飯を食べるのが、10年前からの習慣だ。母と姉が死んでからずっとだ。

「いただきま~す!」

 カリカリに焼かれた食パンに齧り付いた。パリパリに焼かれたウインナーに齧り付くと肉汁がはじけ出た。

「伊織、口についてる」

 兄の光樹が私の口に手を伸ばして、パンのカスを取ってくれた。それをいつも通り自分の口に持っていて食べた。

「ありがと、お兄ちゃん」

 完食すると洗面所に駆け込むと、歯磨きと洗顔を終わらして玄関に走って行った。

「学校まで送って行くから、ちょっと待ってろ」

 顔面偏差値84の父がスーツを着ながら、リビングから叫んだ。

「父さん、ネクタイ貸して」

 私は父にネクタイを結んで、鞄を渡した。

「父さん、僕も乗せてってくれ」
「早く乗れ」

 家の扉の鍵を閉めて私と兄が乗ると、父の愛車はすぐに発進した。

「伊織、後ろを向いて。髪、結んであげるから」

 兄から貰ったリボンで髪を結おうとすると、兄にリボンを取られた。兄のこんな一面を見られるのは私と父だけだ。

「できたよ、女の子なんだからもっと綺麗にしないと」

 兄に撫でられると、その大きくて優しい手に安心する。これで彼女がいないのが驚く。

「行ってこい」

 学校の正門に車を止めて貰うと、車から降りて深く大きなため息をついた。正門から校舎に向けてずらりと〖光樹先輩❤love❤〗と書いた団扇を持った女子生徒と、〖伊織先輩❤love❤〗、〖大好き❤愛してる❤〗などと言う男子生徒がいた。

「お兄ちゃん・・・・・」
「耐えよう、休み時間には会いに行くから」

 私の学校は学年ごとに校舎が違うから、兄がこちらに休み時間ごとに会いに来てくれる。

「おっは!」 

 肩を誰かに叩かれて振り返ると、幼なじみで大親友の佐野在真さのあるまだった。兄の視線が一瞬きつくなった気がしたが、気のせいとする。顔面偏差値75。ちなみに私は顔面偏差値89の美女だ。

「おはよう、在真。今日も元気そうね」
「なあ、聞いてくれよ!昨日の女は最悪だったんだ!」

 知らねぇよ、んなもん。お前の女遊びに興味ねぇっつうの。

「いきなり、なんの話よ。お兄ちゃんに殺されるわよ」
「今すぐ、殺しても良いんだが」

 振り返るとお兄ちゃんが凄い剣幕で立っていた。

「お兄ちゃんっ!ほら、生徒会があるんでしょ」
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