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教室に戻ると、早速道徳兼学級会が開かれた。自分についての話なんて面倒くさいものだ。
「皆、今から何を話そうとしてるか、分かるな?」
教室が静まり返った。クラスの子全員が、先ほどの出来事を見ている。先生はクラス全員を一通り一瞥してから、続けた。
「吉田と一年生の女子は先生に言いに来てくれた。笹村、岩田、久保田は止めに入ってくれた。他の者は何をやっていたんだ」
しん。と教室の中が、静まり返る。それはそうだけど、突っ込むところはそこ? と心の中で呟いた。他の子はどうしていいか分からずオロオロしていた子もいただろう。いざとなったら頭が回らない子もいるものだ。
「良いか! 皆は受験生だ。この一年で、大学受験について全てが決まる大事な時期だ! バカなことをやってると、推薦を希望している者は推薦出来ないし、内申書にも響くぞ! いじめなんてしてるとな、後々自分に返って来る! 今は人のことに構っていないで、全力で自分のに関して頑張る時期だからな、皆、それを忘れるな! 分かったな! いじめは、起訴されなくても警察に逮捕されなくても、犯罪になることだってある。もう高校三年生にもなったら、それが分からないとダメだからな!」
すると、皆がぼそぼそと、はい。と小さく順番に返事をし始めた。
「それと」
先生は咳ばらいをしてから、私のほうを見た。
「先ほど、笹村から聞いた。和田は笹村の妹さんを助けたそうだ」
「え」
クラス一同、驚きの声を漏らし私のほうへ視線が集まる。別に悪いことをした訳じゃないけれど、下を向いた。羞恥と困惑で二の句が継げず、黙り込む。先生は笹村さんの小学生の妹さんが、同じ小学校の男の子にからかわれているところを私が助けたことを、皆に告げた。
「え、すごーい。めっちゃ優しい」
「和田さん、大人しいのに、凄く良い人じゃん」
そんな声が行き交う。二の句が継げず私はただひたすら、口を噤んだままだった。あの女の子が笹村さんの妹じゃなかったら、私は彼女らに池田さんや大林さんと共に、今もヒソヒソされていただろう。そして三人ともその一部始終を見ていなかったら、こんな風に庇ってくれなかっただろう。そう思うと複雑だった。私がよくやったと褒められても、素直に喜べない。
「そんな優しい和田が、何故、いじめられるのか」
先生が言うと、クラス全員が「そうだそうだ」と賛同した。
「前から思ってたけど、平林さんってちょっと勉強が出来るからって、図に乗ってたよね」
「言える。いつも偉そうだし、何様のつもりって感じ」
私の前の席の女子達がそんな会話を交わす。
色々考えると、気分は沈んだままだった。それで英雄扱いされても、ちっとも嬉しくはなかった。
「皆、今から何を話そうとしてるか、分かるな?」
教室が静まり返った。クラスの子全員が、先ほどの出来事を見ている。先生はクラス全員を一通り一瞥してから、続けた。
「吉田と一年生の女子は先生に言いに来てくれた。笹村、岩田、久保田は止めに入ってくれた。他の者は何をやっていたんだ」
しん。と教室の中が、静まり返る。それはそうだけど、突っ込むところはそこ? と心の中で呟いた。他の子はどうしていいか分からずオロオロしていた子もいただろう。いざとなったら頭が回らない子もいるものだ。
「良いか! 皆は受験生だ。この一年で、大学受験について全てが決まる大事な時期だ! バカなことをやってると、推薦を希望している者は推薦出来ないし、内申書にも響くぞ! いじめなんてしてるとな、後々自分に返って来る! 今は人のことに構っていないで、全力で自分のに関して頑張る時期だからな、皆、それを忘れるな! 分かったな! いじめは、起訴されなくても警察に逮捕されなくても、犯罪になることだってある。もう高校三年生にもなったら、それが分からないとダメだからな!」
すると、皆がぼそぼそと、はい。と小さく順番に返事をし始めた。
「それと」
先生は咳ばらいをしてから、私のほうを見た。
「先ほど、笹村から聞いた。和田は笹村の妹さんを助けたそうだ」
「え」
クラス一同、驚きの声を漏らし私のほうへ視線が集まる。別に悪いことをした訳じゃないけれど、下を向いた。羞恥と困惑で二の句が継げず、黙り込む。先生は笹村さんの小学生の妹さんが、同じ小学校の男の子にからかわれているところを私が助けたことを、皆に告げた。
「え、すごーい。めっちゃ優しい」
「和田さん、大人しいのに、凄く良い人じゃん」
そんな声が行き交う。二の句が継げず私はただひたすら、口を噤んだままだった。あの女の子が笹村さんの妹じゃなかったら、私は彼女らに池田さんや大林さんと共に、今もヒソヒソされていただろう。そして三人ともその一部始終を見ていなかったら、こんな風に庇ってくれなかっただろう。そう思うと複雑だった。私がよくやったと褒められても、素直に喜べない。
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先生が言うと、クラス全員が「そうだそうだ」と賛同した。
「前から思ってたけど、平林さんってちょっと勉強が出来るからって、図に乗ってたよね」
「言える。いつも偉そうだし、何様のつもりって感じ」
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