9 / 38
******
しおりを挟む
お金を払い、チューリップの可愛い柄が沢山ついたショッパーに商品を入れてもらった。これだけで、気分が弾んだ。昨日に引き続き、心がスキップした。浮き立ったまま、飛んで行きそうだ。自分でも、驚喜に近い表情になっている意識があった。
(いやいや、浮かれてはいけない)
自分に言い聞かせる。昨日に引き続き、楽しいことが続いたけれど、毎日こういう訳にはいかない。明日からは通常、家で過ごすことになる。受験に向けてきっちり勉強をすることも大事だ。
(そうだ。せっかく来たんだから)
自然と足はもう一つ上の階のエレベーターへ向かっていた。本屋へ行き、大学受験用の資料を探してみようと思った。高三間近でこんなことをするのは、遅すぎるかもしれない。今まで進路と言ってもピンと来なかった。今、目的が決まったらすぐに行動し、勉強するのもアリだと思う。三階のフロアも、いくつかアパレルショップのテナントがあった。奥はレストラン街になっている。三階の方が何故か二階よりもテナントが少なく、開放感があるように感じられた。その一角に割と大き目の本屋があった。ショッピングモールによくありがちな構図だ。客入りはまばらだった。平日に来ると、こんなに空いていることが不思議だ。
奥にある、参考書や受験のコーナーへ行く。そこの中に全国大学案内というものを発見した。全国にどんな大学があるのかネットで調べたほうが早いけれど、こういう本を見るのも大事だ。割と分厚めの本だ。ここは東京都内と行っても西の端の方だ。渋谷へは電車一本で行けるが、神奈川県を横切って行く。都内の中心の大学へ行くよりも、横浜近辺の大学へ通うほうが近いだろう。
(神奈川県内の大学も、調べてみるか)
その本は都道府県別になっていて、探しやすかった。神奈川県のところをチェックする。服飾系の大学はあるだろうか。東京まで出れば必ずあるだろうけれど、自宅から通学することを考慮すると、近い方が良い。ペラペラと流すように目を通すが、今のところ分からなかった。
(女子大とかでも良いんだけどな)
今度は女子大を中心に探してみる。一つのページが目に入った。
『M女子大』
その大学は一応、名の知れた名門の女子大だった。総合大学で、色んな学部がある。文学系の学科から、理系、薬学部まであった。神奈川や東京、千葉のほうにもキャンパスがある。
「家政学部、服飾学科……」
誰の耳にも聞こえないように、ポツリと独り言を呟いた。女子大には家政学部があるところもある。ここの大学の家政学部には栄養士を目指す、栄養管理学科、そして服飾学科があった。被服を理解するために、服の素材、デザイン、服飾造形表現に必要とされる技術を学べると書かれている。
更にここの大学を卒業した卒業生の著名人も掲載されていた。作家や、アナウンサーの名が書かれてあり、その次の名前に目を瞠った。
『金崎路子』
私でも知っている、有名デザイナーだった。東京と大阪に金崎さんが作った洋服のショップがあることは、私でも知っている。東京の有名なお嬢様学校の、中学高校の制服のデザインも、金崎さんであることはよく知られている。制服が可愛いと人気で、受験の倍率も高い。
体と胸が熱くなった。そうか、あの方の母校だったのか。私はその大学案内の本をそっと置き、次に大学入試シリーズで有名な本を探す。各、志望校の大学の過去の入試問題をまとめた本だ。志望大学の出題形式や傾向が分かり、本番のシミュレーションもできることで、受験するなら是非買っておきたい。大学別になっており、国公立大や私立の一流大学の名前がズラリと並んでいた。その中で『M女子大』と書かれた本を見つけた。家政学部の主な入試科目は、国語と英語、生物だった。パラパラとめくってみる。入試問題だけあり、難しそうな問題もむろんあるが、頑張れば解けそうだ。
「よし」
志望校決定。その本を握りしめ、レジへ向かった。姉がくれたお小遣いの中から、千五百円を支払った。緑のビニール袋に入れてもらった本を店員から受け取り、本屋を後にした。
(いやいや、浮かれてはいけない)
自分に言い聞かせる。昨日に引き続き、楽しいことが続いたけれど、毎日こういう訳にはいかない。明日からは通常、家で過ごすことになる。受験に向けてきっちり勉強をすることも大事だ。
(そうだ。せっかく来たんだから)
自然と足はもう一つ上の階のエレベーターへ向かっていた。本屋へ行き、大学受験用の資料を探してみようと思った。高三間近でこんなことをするのは、遅すぎるかもしれない。今まで進路と言ってもピンと来なかった。今、目的が決まったらすぐに行動し、勉強するのもアリだと思う。三階のフロアも、いくつかアパレルショップのテナントがあった。奥はレストラン街になっている。三階の方が何故か二階よりもテナントが少なく、開放感があるように感じられた。その一角に割と大き目の本屋があった。ショッピングモールによくありがちな構図だ。客入りはまばらだった。平日に来ると、こんなに空いていることが不思議だ。
奥にある、参考書や受験のコーナーへ行く。そこの中に全国大学案内というものを発見した。全国にどんな大学があるのかネットで調べたほうが早いけれど、こういう本を見るのも大事だ。割と分厚めの本だ。ここは東京都内と行っても西の端の方だ。渋谷へは電車一本で行けるが、神奈川県を横切って行く。都内の中心の大学へ行くよりも、横浜近辺の大学へ通うほうが近いだろう。
(神奈川県内の大学も、調べてみるか)
その本は都道府県別になっていて、探しやすかった。神奈川県のところをチェックする。服飾系の大学はあるだろうか。東京まで出れば必ずあるだろうけれど、自宅から通学することを考慮すると、近い方が良い。ペラペラと流すように目を通すが、今のところ分からなかった。
(女子大とかでも良いんだけどな)
今度は女子大を中心に探してみる。一つのページが目に入った。
『M女子大』
その大学は一応、名の知れた名門の女子大だった。総合大学で、色んな学部がある。文学系の学科から、理系、薬学部まであった。神奈川や東京、千葉のほうにもキャンパスがある。
「家政学部、服飾学科……」
誰の耳にも聞こえないように、ポツリと独り言を呟いた。女子大には家政学部があるところもある。ここの大学の家政学部には栄養士を目指す、栄養管理学科、そして服飾学科があった。被服を理解するために、服の素材、デザイン、服飾造形表現に必要とされる技術を学べると書かれている。
更にここの大学を卒業した卒業生の著名人も掲載されていた。作家や、アナウンサーの名が書かれてあり、その次の名前に目を瞠った。
『金崎路子』
私でも知っている、有名デザイナーだった。東京と大阪に金崎さんが作った洋服のショップがあることは、私でも知っている。東京の有名なお嬢様学校の、中学高校の制服のデザインも、金崎さんであることはよく知られている。制服が可愛いと人気で、受験の倍率も高い。
体と胸が熱くなった。そうか、あの方の母校だったのか。私はその大学案内の本をそっと置き、次に大学入試シリーズで有名な本を探す。各、志望校の大学の過去の入試問題をまとめた本だ。志望大学の出題形式や傾向が分かり、本番のシミュレーションもできることで、受験するなら是非買っておきたい。大学別になっており、国公立大や私立の一流大学の名前がズラリと並んでいた。その中で『M女子大』と書かれた本を見つけた。家政学部の主な入試科目は、国語と英語、生物だった。パラパラとめくってみる。入試問題だけあり、難しそうな問題もむろんあるが、頑張れば解けそうだ。
「よし」
志望校決定。その本を握りしめ、レジへ向かった。姉がくれたお小遣いの中から、千五百円を支払った。緑のビニール袋に入れてもらった本を店員から受け取り、本屋を後にした。
2
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる