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「毒、入ってるな」
「……そうだね」

 呆れて言葉が出なかった。
 ソラナが戻ってきて、あいつは何だと珍しく怒っている様子に話を聞いたところ、僕たちはテオに騙されているのだと力説されたという。僕はせっかく冷やした頭にまた血が上っていくのがわかって、この怒りはもう何をしても収まらないと悟った。
 話に一区切りつけて、放り出されたお菓子の箱を開けてみると、お菓子からはしないはずの匂いが漂う。
 僕たちは幼少期に毒の訓練を受けている。いつ何があるかわからないから、毒の匂いや、見た目、効き目を理解し、少量の毒を取り込んで訓練をした。だから、そういうことは見れば多少わかるのだ。
 これは、彼女が置いていったものだが、そもそも、よく食べ物を持ってきたものだ。王族が食べ物をそうやすやすと受け取るとでも思ったのだろうか。まぁ、実際こうして受け取っているのだが。

「これはチャンスだ」

 そうソラナがつぶやくのを聞いて僕は一つ覚悟を決めた。彼女がやりたいことなんて、すぐにわかってしまった。そのシナリオを途中まではなぞってあげよう。そうすれば、きっと不十分だった鍵も十分になる。
 これは、恐らくテオを傷つけてしまう。テオを悲しませるし、不安にさせるだろう。事前に話しておけば、それも少しで済むかもしれないが、きっとこのことを聞いたらテオは止めるだろうから、ことを進めるには秘密にしないといけない。それでも、テオを守るために。テオを、あの家から救うために。
 テオに、たくさん心の中でごめんねを言った。全部終わったら、きちんと話して、謝って、たくさん抱きしめるから。テオは怒るかな。呆れて、口をきいてくれなくなる、とかだったら、悲しいな。
 全部終わったら、テオのどんな感情でも受け止めるから。だから、どうか、僕を信じてほしいと、そう思った。
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