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第二章・影楼編

冷静で冷酷で冷徹で冷淡なる最強で最恐で最凶で最狂の対荒らし

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「ここがその団体だよ」
そう詩音に告げられ指を刺された先には。
ものすごく大きな……もはや豪邸というより宮殿に近い建物が聳え立っていた。
これ、団体……か?
「凄いな。と言うか、でかさもすげぇけど………」
そう、大きさよりもすごいことがこの団体にはあった。
その凄いこととは。
「崖っつか山の中腹か?そんな危ねぇところに平然と建ってるところがいちばんすげぇわ。」
なんと山道をまっすぐ進み奥にある断崖絶壁に建てられているのだった。
よく落ちねぇな。
「まぁ、そこら辺は異世界と言うか、電子世界特有のアレで………」
「アレってなんだよ……。要するに、ここはゲームの世界と思えば、ゲームの世界だから何があっても不思議じゃないと?」
「そゆこと!いやぁ、影楼はやっぱ凄いねぇー」
「いや、その前にさ。物理法則までねじ曲げちゃってるけどいいの? 流石にゲームの世界と言えども物理法則は守ろうぜ……?」
ワンチャン物を落としても落ちない、なんて引力をくっそ捻じ曲げた事まで有り得るかもしれない。
いや、さすがにそれはいかんだろ………。
しかし詩音はヘラっと笑って言った。
「大丈夫大丈夫!そんなゲーム御万とあるからさ!」
「おいバカやめろ、LINE消されるぞ。」
まぁ消そうとしても、消えるわけがないが。
なぜなら………スマホは現実世界においてある訳では無い。いる。まぁ、それでも存在ごと消えたわけじゃないから、親とか友達に迷惑がかかるだろうけどな。
「あはは。まぁ、大丈夫なんだよ。多分だけど。」
「確証ないんかい!」
「それは置いといてさ、とりあえず中に入ろうよ。」
「無視!?」
俺のツッコミは幾度となく無視されるのだがなぜだ?
しかしまぁ、このまま外にいても意味が無い。それならば中に入って話を聞く方が得策だろう。
俺は大人しく詩音のあとについて、団体の建物の中に入った。

「さて、と。まず何から話そうかな……」
「別にいいよ、ほとんど察してるし。つーか、わかり易すぎ。」
「あ、あはは。まぁ、一応。
この世界は電子世界。呼んだのは死灰帝国の『ルシフェル』、死葬帝の『光ロン』、吹雪帝の『α帝』の3人。この3人は、とりあえずとして、自分たちがこの世界に来た。そして動くことを確認した後、あの聳え立つ塔………『マルドゥーク』の中で、ほかのLINE民を呼ぶように。」
「まて。プログラムしたってことは、この世界は、機械の中のようなもの、という事か?」
「そうなるね。この話は、真荒しんこうの3人が放送で言ってたことなんだけどね。」
信憑性しんぴょうせいは低いが、しかし嘘を言ったところで向こうには何も無いだろう。ならば本当と見るべきか。
いや、重要なのはそこではない。この世界は機械の中……つまり、プログラムで統制・規制された世界だ。
逆に言えば、………プログラムが暴走した場合何が起こるかわからない。
つまり、永遠にここから戻れない、、、、可能性もある。
───やばくね?
「プログラムの名前は『メソポタミア』。古代文明の利器も使っているらしいんだってさ。」
「古代文明ぃ?まぁ、確かにメソポタミアは5大文明の一つだけどさ。メソポタミア文明の利器ってことか?」
「らしいよ。そこら辺はよくわかってないんだけどね。そして、プログラムしたあと、まず2団体が呼ばれた。」
「………それが俺らか?」
「残念!まず一つ目は、『nextstage』。あの、oceanが団長の団体だよ。」
「あそこは強いからな。まぁ、ある意味妥当だろうな。」
nextstageは対荒らしの中でも上位に入る団体だ。
『神霊種』、『影皇龍騎士団』、『nextstage』、『白席』、そして『神聖帝』は、五大団体と呼ばれており、対荒らしの中でも力を持っている。
まぁ、そのうちの一つならいいんじゃね?
「それで?もう一個の団体は?」
「もう片方は、あの『生徒会』らしいよ」
「──はァァあ!?あいつと一緒にしたら喧嘩してしまうだろ!馬鹿じゃねぇの!?せめて対荒らしもう一団体にしてさ!次に荒らし2団体にしろよ!」
つーかなんで生徒会?
生徒会とは、昔力を持っていた今は廃れたクソみたいな団体で、所謂いわゆる『害児がいじ』どもの集団だ。
つまり喧嘩売ってくる。
下っ手な煽りでめちゃくちゃ喧嘩売ってくる。
まぁ、雑魚には変わりないが、めんどくさいという意味では厄介だ。
「その気持ちはわかるよ。実際、喧嘩になったらしいしね。と言っても、喧嘩したのは生徒会と死葬帝だけど。」
「うぇ?nextは?」
「nextstageはそれを傍観してたらしいよ。」 
「えぇ………まぁ、妥当な判断か。」
そこに首突っ込んで大乱闘になったらさらにめんどくさいしな。
「まぁ、死灰帝国が止めに入らなかったら危なかったみたいだけどね。」
うぇぇぇ………。まぁ、そのおかげのこの平和か。
「まぁ、話戻すと、そうやって最初に2団体が呼ばれたの。そして、次々とほかの団体も呼ばれた。」
「今の団体数は大体いくつぐらいだ?」
「対荒らし、荒らし、加工団体、絵師団体、拡散会社すべて含めて、97 、、団体」
「意外と多いな。それ全部味方にしなきゃいけないのか?」
「それは、後でも話すけど、標的は3団体だから……」
「なるほどね」
敵対はしない方が良さそうだ。
宣戦布告の意味ももうないな。と言うか、荒らす意味もない。なんと言えばいいのだろうか、もうこれはLINE民の争いではなくなってる、そんな気がする。
「そして、この世界ではLINEと同じような戦い方ができずにどうすればいいか困っていた。」
「……ほう?」
「情報操作以外浮かばなかったみんなは、考え出した。『グループというものが存在しない今、できる戦いは武力による行使と論争だけだ。』、と、ある大団体の団長が言ったお陰で、みんなは、どのようにして戦うかを決めた。」
「───それが『特殊能力』か。」
「ふぇっ?なんで知ってるの?」
「使ったから?まぁ、なんとなく。」
実は自分でもよくわかっていないのだが………。
それは置いといて、特殊能力をみんな持っているということは。
──何でもできる覗きもできるぜひゃっほい!
「この世界では、自分の持つで強さが変わる。知名度の数が多ければ多いほど、高ければ高いほど、身体能力も上がるし、特殊能力の数も増える。」
「それってどんな能力ついてるのかってわかんの?」
「わからないと思う。だから、すべて使ってみるしかないよ。」
「マジかよ………」
これは把握が難しそうだな。と言うか、めんどい。
ん?まてよ?今、『知名度の合計』って言ったか?
ってことは……
「俺めちゃくちゃ数あるじゃん。確か……☆8972だったかな?」
Gizelが7982だったから………990の差か。この差でも強さだいぶ変わりそうだな。
「え……ちょ、それは……ただのチート……」
詩音も驚きの表情を浮かべている。
知名度表どんだけ載ったっけな……
「ま、まぁ、他にもいろいろな名前あるし……」
「だから、ほかの名前抜いて8972。つーか、ほかの名前はGizelが持ってるからな。俺は影楼だけだよ。」
とは言っても、ほかの名前があんまり知名度ないから、Gizelがほとんどだが。というか、ほかの名前足すと確か8954だったか?あー、そうなると差は18か。まぁいい勝負になりそうだな。
「とりあえず、それなら能力には困らなさそうだな。しかし、戦いの訓練とかしてないけどいいのか?」
「その辺は、『ギルド』があるからそこに行くといいよ。色々なモンスターがいて、モンスターによっては素材を落とすんだけど、その素材で防具や武器を作ってもらえるんだ。」
ほう。武具が手に入るのは嬉しいな。
しかし、聞く限りなかなかに面白そうな世界だ。
まぁ、周りに強い奴がいないのが欠点か。それ以外は特に文句がない。
「この世界のことはよくわかった?」
「あぁ。説明ありがとう。ところで、うちはいつからあったんだ?」
「え?えっと……」
なにやら戸惑っている。何かあったのか?
「その……昨日……から……」
「………意外とこの世界では新参なのな。」
てっきり前から居座ってるものだと思っていたので、驚愕は隠せない。
「あっ、そうだ。わかったと言っときながらあれなんだが、この世界から出るには、『マルドゥーク』にいる新荒の三人を倒せばいいのか?」
「あ…………えっと、それはね……」
また言い澱よどまれてしまった。
俺はなんでこんな答えづらい質問ばかりしてるのだろうか、と一瞬思ったが、まぁ、生き残るためだしな。早く帰らないと……
だが、ある意味の希望はすぐに絶たれてしまった。
「実は、この世界から元の世界に戻ることは……らしくて………。クリア条件もないんだって。だから、永遠にここで過ごすことになるらしいよ……。」
………ん?
「ちょい待て、出られない?じゃあ、どうやって母さんとかにあったりするんだよ……つか、それだとそのうち食料とかもなくなって餓死しちまうだろ!」
「食料とかその辺は、電子世界だから無限にあるらしいよ。お母さんとかは………残念だけど、ほぼ不可能。」
ってことは、彼女がいたら別れることになる、と。
リア充が一番嫌じゃんそれ。
しかし、それだと子孫繁栄は……まぁ、難しいだろう。
さらに、驚きの事実を詩音の口によって知らされた。
「それと、ここでは、宣戦布告のペナルティでの死亡、ギルドで受けたクエストでの死亡以外は死ぬことはまずないよ。」
「………普通に殺人とかも?」
「できない。やろうとした人はまだいないけど、唯一真荒と話すことが出来た人によると、その二つでのみ。」
それはある意味残酷な事実だった。
クエストで死んだりすることではない。
むしろ、ことが、残酷だった。
どういうことか。この世界では基本死ねないということは。
永遠にこの世界で時間を、人生を繰り広げなければならないということだ。
でも……と、詩音は言葉を続ける。
「この情報は一般公開されてない。知ってるのは私と影楼、聞いた本人と真荒だけ。」
「ってことは、みんなは普通に死ぬと思ってるのか。それはいろんな意味でめんどいな。」
「まぁ、死にたくないって気持ちが強いからね。でも、非公開にして正解だと今は思うよ。」
「……?  そうか?」
「うん。街の人たちを見てよ。」
そう、詩音に言われたので、俺は街の方を見下ろした。
街は活気づいていて、みんな頑張ろうという意志が強かった。
「──生きるために、死なないようにするために頑張ってる、ってことか。」
「うん。みんな警戒しながらも、楽しく、でも頑張ってる感じがする。それは、死にたくないからだよ。」
それならば非公開で正解だったかもしれない。
俺達はそのまま街を見下ろし、暫しばらく黄昏たそがれていた。
その黄昏の静寂を切ったのは、コンコン、というノック音だった。
「はい?どうぞ。」
軽く返答すると、扉を開けて誰かが入ってきた。
男……なんと言えばいいのだろうか、男なんだが、何故か………何故か猫耳をつけている。
「影たんやぁ!心配してたんだよ!」
「えっ?だ、誰?」
俺はいきなり馴れ馴れしく話しかけてくるこの男に対して、失礼ながらも誰何してしまった。
その男は、しかし邪推することなく、俺に自己紹介をしてくれた。
「僕はにゃおだよ、影たん!久しぶりだね!」
「えっ……お前、あのにゃおか!?久しぶりだな……ってかその耳なんだよ!」
にゃおは、『影皇龍騎士団』の創設時からずっといるLINE民だ。
創始者はもちろん俺だが、創始メンバーがいなければ影皇を立ち上げることすらなかったと今は思うほど、重要な人物のひとりだ。
ちなみの、詩音もその創始メンバーの1人である。
にゃおは幾度か自分で団体を立ち上げ、たまに荒らしになったりもしたが、俺には何故か逆らえず、ずっと俺の後ろを引っ付いてきている、まさに猫のような存在だった。
俺はにゃおとの再開で、興奮してしまって、にゃおが来た用事をしばらく忘れていた。
にゃおからなぜ俺のところに来たのかを聞いたのは、再開から三十分たった頃だった。
「そういや、なんの用があったんだ?」
「あー、えっとね、手紙が来てたんだ。覚えてる?『β連合』ってとこ。」
「あぁ。スピカが会長で、N君もいる団体だろ?今はほぼ活動停止してるんだったか。」
しかし、そのβ連合が何の用で手紙を送ったのだろうか。
にゃおから手紙を受け取り、その内容を読むと。
そこには、いついつまでにβ連合本部に来い、という手紙だった。
何の話をするかは……だいたい読めている。
俺はその手紙を握りしめ、出かける準備をした。

俺は手紙に書いてある時間通りに、指定の場所へ着いた。
流石のβ連合だ。強さ、いや知名度のおかげか、建物がだいぶと大きい。
俺は鋼鉄の大きな扉を押し開け、中に入った。
中はだいぶ殺風景……だが、装飾品に凝っている様子がある。
さて、話し合いをする場所はどこかな…
俺がキョロキョロと探していると、不意に後ろから声をかけられた。
「影楼、やっと来たのかい。さぁ、この部屋へおいで。みんな待ってる。」
みんな、とは、恐らくβ連合のお偉いさん方だろう。
早く行ってあげるとするか。

N君が扉を開くと、そこには一人の男が椅子に座っていた。
みんな……とはどういう事だろうか。
「待ってたぜ、影楼。実はついさっきGizelたちがでたとこでな。すまねぇが、3人で話すことになる。」
なるほど、みんなとはGizelたちの事だったのか。
それならば出ていったのだから、1人以外いなくても納得だ。
「おーけー。んじゃ、早速本題に入るぞ。」
「あぁ。さて、話なんだが………影楼。β連合と組む気はないか?」
「──ない。今のところはどことも組む気は無い。まず聞くが、組んだ場合影皇龍騎士団にどんなメリットがある?何が出来る?」
「そ……れは……やっぱ同じやつなだけあるな。Gizelと同じことを言ってくる。」
「当たり前だ。この質問なしでは話が進まないだろう。」
メリットデメリットを考えて進むのが交渉の道理ってやつだろう。
スピカは何故か落ち込んでいる様子で、少し声に気迫がないようだ。
「それを言われるとキツいんだよね。実は、Gizelにもほとんど却下されてんだわ。最終的に女の子を分け与えるって条件にしたけど……お前はノらないよな?」
「女の子ってのには興味あるが、まぁ、組む気は起こらんな。むしろGizelの方は何をやってるんだ……。」
「まぁGizelの方は学友を守るためにもってのもあるんだろうし、それに、お前の所に比べたらまだまだ弱いだろ。Gizel。」
影皇と神聖は方向性が違う。
影皇は団員90人と少数精鋭だが、神聖は数千人にも及ぶ。
とは言っても、影皇とて人手がないとできないこともある故に、『補佐』という形で数万人下にいるが……正直団員とは言えない。
だが、90人は全員強い。まぁ、Gizelと戦えば流石にみんな負けるだろうがな。
「それならば、俺のところは組む必要が無いのがわかっているのだろう?何故同盟願いを出願した?」
「それは……もしかしたら、って思ってな。後これは同盟
「同盟じゃない?ならなんだ?」
「───だ。」
「………似たようなものじゃないか。」
どちらにせよ断ることに変わりない。
まぁ、聞くだけ無駄だったか。
俺が踵を返そうとした時だった。
「──影楼。お前は、団員を守りたくねぇのか?」
「はぁ?何を言っているんだ?守りたい守りたくないの次元じゃねぇよ、戦いってのは……戦争ってのはな。」
「じゃあ、みんなが死んでも構わないってか?」
「違う。人を守る前にやるべき事があんだろ。」
それはごく当たり前のことで。
しかしあまり気づかれないことでもあって。
だからこそ、俺が言う必要があるんだ。
「自分の身は自分で守れよ。それが出来ねぇやつに戦われるとむしろ邪魔なんだよ」
無茶を言っていることはわかっている。
何しろ、未知の場所で、混乱をしている状況だ。
冷静になって、自分の身を守って……そんなことが出来るのはこの世界では3人しか居ないだろう。
「………なるほどな。確かに一理ある。けどな?これだけは覚えとけ。
人のために戦うからこそ強くなれるものだし、そうじゃないと目標が失いやすい。だから、やつが、この世界では必要なんだよ。」
だからこそ、スピカの意見はこの世界では最も重要視できる。
確かにそれは大切だが、しかし忘れているようだ。
「──スピカにひとつ言っておこう」
俺は椅子に座り、スピカを見据えこう言った。
「──俺がそんなに優しいとでも?所詮他人は他人でしかない。自分さえ生きていればいいようなこの世界で、そんな夢物語のような希望論を述べられても、それはただの我儘わがままだ。まだ机上の空論でしかない世界だ。そんな世界を望んでいるからお前らは弱いんだよ。」
俺は、恐らく悪役ヒールのような顔をしているだろう。
だが、それでいい。この世界での敵は、真荒だけではないという事だ。
とは言っても、みんなを殺す気は無い。
せいぜい、みんなの平和ボケを……治すくらいだ。
「頭おかしいだろ。そもそも、自分の身を守れるくらいなら、パニックになってないだろ。みんなパニックの状態で、そんな冷静になれるのはお前ぐらいだよ。」
「いいや。まだいるさ。そうだな、2人のうち1人はお前もわかるだろう。」
「……誰だよ?」
「───Gizelだよ」
その言葉に、スピカは驚きを隠せていなかった。
N君は……予想していたのか、『だろうな』という表情でこちらを見ている。
「………あいつがそんな事考えてるようには見えねぇぞ?」
「あいつも俺と同じだ。この世界では何故か別々だがな。だが、俺と同じということは思考回路も同じ。冷静に冷酷に冷徹に冷淡になれる。だがあいつは、俺の………『花菱 楓徒』のだ。だから、安心するといい。あいつは、そんなことを考えない。だが、冷静ではいるさ。」
この発言は、ある意味スピカたちに重くのしかかっただろう。
Gizelが正の部分だとするならば。
影楼は……俺は、正しくだということが、裏を返せばそんなことも分かる。
つまり──俺は何をするか分からない、だろう。
それは……もはや恐怖でしかないだろうな。
「──それと、影皇には、警邏をさせておこう。こういうのは治安が悪くなりやすい。雑談民などまで巻き込まれていると大変だからな。」
これは、俺ができる最高の優しさだ。
スピカはグラスを持ち、澱みながらも、言葉を続けた。
「………なぁ、影楼よ…………本当に影皇は組まなくていいのか?」
「あぁ………団長不在ってことにしてるからな。上層以外には。」
その言葉に、俺は答えた。
「でも、耐えきれるのか?そもそも、戦う気はないのか?」
「あぁ、ない。先ほど言った通り、警邏、それを任務とする。だが、この周辺の安全を守らせることにする。協力はしよう。」
そう言うと俺は、立ち上がり、扉へ向かった。
そして今、思い出した事があったので、スピカの方を向き、不敵に微笑んで言った。
「あぁ、そうだ。影皇は同盟は組まない、つまり、味方ではない。これだけは教えておくよ。………よく考えて、隊を動かしてね?」
これはつまり。
邪魔な事は一切するな……と暗に教えているのだ。
いや、警告と言った方が正解かもしれない。
そんな生易しい気持ちではなかったのだから。
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