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41 その確信(サナ王女視点)
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帝国から戻ったルーツたちからは、あの魔力結界が世界中に向けて広がっているという報告が入った。周辺諸国が巻き込まれるのは時間の問題だ。魔力の規模からして、創造神サカズエまでも敵の手に落ちたと推測されている。
私たちは、ルーツたちが拠点にしていたという、帝国から離れたマーリの街へ移動することにした。
けれど、移動したところで何かできるのだろうか。もう、私たちの負けだと思う。あの魔力結界に突入できる人員は限られているし、オリジナルのルーツは私の召喚魔法さえも退ける魔道士。さらにブラストやヒルデといった強者も控えているのだ。
私は自室で、バスティアンと共に暗い雰囲気にいた。
「バスティアン、今から何かできると思う?」
「分からない。帝国にいる親や親族とも連絡がつかないし、もうどうしていいのか……」
「うん……」
二人でベッドには腰掛けているものの、バスティアンは私といつもより距離を取っている。私もだ。とてもじゃないけど、前みたいにする心境ではない。
「思うんだよ。君がルーツと再会した時点で、私が身を引いていれば、あるいは別の道が開けていたんじゃないかと」
「……私とルーツをくっつけてれば良かったっていうの?」
それは私も考えてしまったことはある。でも、やっぱりそんなはずは無いんだ。それは、思い上がりだ。
「私たちは、一体何だったのだろうな……」
そう言うと、バスティアンは静かに私に手を伸ばしてきた。
「……やめて。そんな気分じゃない」
「くっ!!」
「え、ちょ……。きゃっ!!」
バスティアンに押し倒され、私は声を上げた。
「ち、ちょっと、やめてよ! 私たちがこんなことしてたから!!」
バスティアンが私の着衣に手をかけ、私はその手を掴んでやめさせようとする。
「やめて! バスティアンは、それでいいの!?」
「今、関係をやめたところで、一体何になるって言うんだ! だいたい、元はと言えば、君が……!!」
バスティアンはそこで動きを止め、叫ぶのもやめた。
「何よ? 言いなさいよ。元はと言えば、何?」
バスティアンを誘ったのは私、そう言いたいの? 言えばいい……。それが事実だ。ぐうの音も出ない真実。新しい恋に浮かれてあなたに想いを告げたのは私。さあ、そう言いなさいよ!
「…………」
バスティアンは私の着衣を離すと、静かに立ち上がった。扉の方に歩き、壁を頭突きする。
「すまない……」
そう言い残し、バスティアンは出て行った。
私はベッドで仰向けに天井を眺める。もう疲れた。今更、何もかも取り返しがつかない。
どのくらいそうしていたのだろうか。私は心がグチャグチャなまま、乱れた着衣を正すと、起き上がって部屋を出た。目的もなく、ただ館内を歩いた。誰かと通りすがっただろうか。それも認識できない。
そして、無意識のうちに辿り着いたその部屋を、私はノックした。返答は無い。いないのだろうか。
「……」
私はニーベ村で教わった解錠魔法を唱え、ドアの鍵を開けてしまった。こんなの、許されないことだ。静かにベッドに近づくと、布団が膨らんでいた。いなかったのではなく、寝ていたのか。
「どうしたんですか?」
「!?」
聞こえてきたのは男の声ではなかった。ここは、ルーツの、もう一人のルーツの部屋だったはず。
布団を上げ、寝ていた人物が起き上がる。もう一人の私、サナだった。
「……そっか、ルーツとあなたは同室だったのね」
「はい、そうさせてもらいました」
「……ごめんなさい、勝手に解錠魔法なんか使って」
「ちょっとビックリしました。難しい魔法を知っているんですね」
サナは立ち上がり、椅子を用意する。
すると、ルーツも部屋に戻ってきた。解錠魔法を感知したらしい。やっぱり、このルーツも凄い人だ。
「サナ王女、少し、話しましょう」
サナが私を見る。その真っ直ぐさと気高さに私は慄く。
この娘からは、私と全く違う強さを感じる。魔道士として強いというだけではない。確かな心の強さを感じる。
きっとその強さは二人の絆が育んだのだ。私が選んだ道とは違って。そう考えたら、目頭が熱くなってきた。
「ぅう……。ぅわあああぁぁぁ……!」
私は声を上げて泣き始めた。
悲劇のヒロインを気取ってオリジナルのルーツの絶望に気づけず、彼の心をさらに傷つけたこと。ルーツの憎しみが、世界を危機に陥れているという事実。そして何より、目の前の少女がオリジナルだったなら、そうはならなかったという確信。
沢山の感情と後悔が押し寄せ、わけも分からず泣いた。
私たちは、ルーツたちが拠点にしていたという、帝国から離れたマーリの街へ移動することにした。
けれど、移動したところで何かできるのだろうか。もう、私たちの負けだと思う。あの魔力結界に突入できる人員は限られているし、オリジナルのルーツは私の召喚魔法さえも退ける魔道士。さらにブラストやヒルデといった強者も控えているのだ。
私は自室で、バスティアンと共に暗い雰囲気にいた。
「バスティアン、今から何かできると思う?」
「分からない。帝国にいる親や親族とも連絡がつかないし、もうどうしていいのか……」
「うん……」
二人でベッドには腰掛けているものの、バスティアンは私といつもより距離を取っている。私もだ。とてもじゃないけど、前みたいにする心境ではない。
「思うんだよ。君がルーツと再会した時点で、私が身を引いていれば、あるいは別の道が開けていたんじゃないかと」
「……私とルーツをくっつけてれば良かったっていうの?」
それは私も考えてしまったことはある。でも、やっぱりそんなはずは無いんだ。それは、思い上がりだ。
「私たちは、一体何だったのだろうな……」
そう言うと、バスティアンは静かに私に手を伸ばしてきた。
「……やめて。そんな気分じゃない」
「くっ!!」
「え、ちょ……。きゃっ!!」
バスティアンに押し倒され、私は声を上げた。
「ち、ちょっと、やめてよ! 私たちがこんなことしてたから!!」
バスティアンが私の着衣に手をかけ、私はその手を掴んでやめさせようとする。
「やめて! バスティアンは、それでいいの!?」
「今、関係をやめたところで、一体何になるって言うんだ! だいたい、元はと言えば、君が……!!」
バスティアンはそこで動きを止め、叫ぶのもやめた。
「何よ? 言いなさいよ。元はと言えば、何?」
バスティアンを誘ったのは私、そう言いたいの? 言えばいい……。それが事実だ。ぐうの音も出ない真実。新しい恋に浮かれてあなたに想いを告げたのは私。さあ、そう言いなさいよ!
「…………」
バスティアンは私の着衣を離すと、静かに立ち上がった。扉の方に歩き、壁を頭突きする。
「すまない……」
そう言い残し、バスティアンは出て行った。
私はベッドで仰向けに天井を眺める。もう疲れた。今更、何もかも取り返しがつかない。
どのくらいそうしていたのだろうか。私は心がグチャグチャなまま、乱れた着衣を正すと、起き上がって部屋を出た。目的もなく、ただ館内を歩いた。誰かと通りすがっただろうか。それも認識できない。
そして、無意識のうちに辿り着いたその部屋を、私はノックした。返答は無い。いないのだろうか。
「……」
私はニーベ村で教わった解錠魔法を唱え、ドアの鍵を開けてしまった。こんなの、許されないことだ。静かにベッドに近づくと、布団が膨らんでいた。いなかったのではなく、寝ていたのか。
「どうしたんですか?」
「!?」
聞こえてきたのは男の声ではなかった。ここは、ルーツの、もう一人のルーツの部屋だったはず。
布団を上げ、寝ていた人物が起き上がる。もう一人の私、サナだった。
「……そっか、ルーツとあなたは同室だったのね」
「はい、そうさせてもらいました」
「……ごめんなさい、勝手に解錠魔法なんか使って」
「ちょっとビックリしました。難しい魔法を知っているんですね」
サナは立ち上がり、椅子を用意する。
すると、ルーツも部屋に戻ってきた。解錠魔法を感知したらしい。やっぱり、このルーツも凄い人だ。
「サナ王女、少し、話しましょう」
サナが私を見る。その真っ直ぐさと気高さに私は慄く。
この娘からは、私と全く違う強さを感じる。魔道士として強いというだけではない。確かな心の強さを感じる。
きっとその強さは二人の絆が育んだのだ。私が選んだ道とは違って。そう考えたら、目頭が熱くなってきた。
「ぅう……。ぅわあああぁぁぁ……!」
私は声を上げて泣き始めた。
悲劇のヒロインを気取ってオリジナルのルーツの絶望に気づけず、彼の心をさらに傷つけたこと。ルーツの憎しみが、世界を危機に陥れているという事実。そして何より、目の前の少女がオリジナルだったなら、そうはならなかったという確信。
沢山の感情と後悔が押し寄せ、わけも分からず泣いた。
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