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18 謎の魔道士(サナ王女視点)
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私はバスティアン、ジャック、リリィと共に第8層を走った。召喚魔法も温存できているから、破壊神の配下ともこのまま戦えるはずだ。
「リリィは、知っていたのか?」
「うん……」
ジャックとリリィが言った。バスティアンとのこと、ジャックにも後でちゃんと説明しないといけない。
「ごめんなさいジャック。こんな時じゃなく、もっと早く言うべきだった」
「……後でしっかりと聞かせてほしい」
「ええ」
そこで会話を打ち切り、私たちは走り続けた。
一本道だというのに長い通路だ。マップは頭に入れてあるからこういう道があるのは知っていたが、これだけ走っても奥が見えないとは。
しかし、徐々に私にも闇の魔力が感じ取れるようになってきた。他の皆も同じらしく、全員で走るのを止め、歩きに切り替えて静かに近づいた。
「バスティアン、どうする?」
「先手必勝だろう。召喚魔法の準備を」
「分かったわ」
私はいつでも召喚魔法を発動できるように右手に魔力を込めた。
「ん、誰かいるぞ?」
「破壊神の配下?」
ジャックとリリィが呟いた。確かに私たちの目の先には、緑がかった服を着た人間がいる。体格からすると男だ。しかし、闇の魔力は彼が発生源ではない。それはもっと前方だ。
「ようやくご到着か、サナ王女とその仲間たち。待ちくたびれたぜ」
男は低くて通る声で話しかけてきた。振り返ったその顔には、戦いでついたと思われる古傷が多数あり、左目には眼帯をしている。
「何者だ……」
バスティアンが剣に手をかける。封鎖しているはずのダンジョン内にいた怪しげな男だ。私にも警戒心が渦巻き、ジャックとリリィも武器を手にしている。
「反帝国同盟の一人、ブラスト」
「反帝国同盟だと!?」
「そんな人がどうしてここに!?」
「あれに用があってな」
ブラストと名乗った男は、自分の後ろを親指で指した。私の目がブラストの前方を注視する。
「あ、あれは!?」
私は思わず叫んだ。そこには魔物が倒れている。闇の魔力が漏れ出ているところを見ると、破壊神の配下に間違いなかった。
「お前が倒したのか?」
「いかにも。この俺一人に倒されるような弱い魔物だった」
「一人で倒した……!?」
そんなはずはない。この魔物から溢れている魔力は明らかに先日の大悪魔ジャークゼンより遥かに上だ。それをたった一人で倒しただなんて!?
「破壊神に敵対しているということは、私たちと目的は同じなの?」
リリィが言った。
「敵対ではないさ。俺たちは破壊神トコヨニの協力者だ」
「な!?」
「お前が!?」
「俺たちの存在は知っているらしいな。この魔物を倒したのは、力を吸収するためだ」
「力を吸収……?」
「既に創造神サカズエの使徒に倒されたことのある魔物など、また敗北するのが関の山だ。利用価値はない。しかし、その力を吸収して集めれば、より有用に使うことができる」
「そ、そんなことが!?」
「そもそも、どうして破壊神の味方などしているの?」
「どうして、か。それを説明する権限は俺には無いなぁ。どうします、旦那?」
ブラストが魔物の方を見て声を上げた。
「え!?」
先ほどまで誰もいなかった魔物の隣に人がいる。いつの間に現れたのか! 見れば、バスティアンも私と同じように驚愕の表情を浮かべていた。
その人物は黒い外装を羽織っていて男か女かも分からない。右手に紫色の水晶を持っており、魔物に向かってかざすと、魔物が身体ごと吸収されてしまった。
「世界の破壊が目的だから。それだけで十分ではないか?」
その声は雑音まみれだ。しかし音の低さから男であることは推測できる。こちらに振り返ると、外装のフードの中に黒いモヤが渦巻いており、顔を確認することもできなかった。
「くはは、違ぇねえ!」
ブラストが豪快に笑うと、黒い外装の男がブラストの隣まで歩いてきた。
「私は魔道士オーデルグ」
鳥肌が立つ。オーデルグと名乗ったこの男の魔力を肌で感じる。恐らくあの黒いモヤは闇の魔力だ。視認できるほどの強大な魔力。それは、この魔道士がかつてない強敵であることを意味している。
「なぜ、世界の破壊などと?」
バスティアンが冷静な声で言う。だけど、それは緊張している時の声だ。バスティアンも相手の強さを感じ取っているんだ。
「動機まで語る必要はないな。知りたければ我々を拘束して尋問してみてはどうだ?」
「……破壊神の協力者というなら私たちの敵だ。そうせざるを得ないようだな」
「はっはっは、やめておいた方が良いぜ! オーデルグの旦那の強さは一級品だ。返り討ちに遭うだけだぞ!」
ブラストのその言葉は、自分は手を出す必要がないという意味合いだった。
舐められたものね!
私はまず召喚魔法を使うべく、右手を前に突き出した。
「うっ!?」
しかし、召喚魔法は発動しなかった。オーデルグの右手から放たれた闇魔法が私の右手に当たり、まとわりついた。右手に魔力を流そうとすると吸収されてしまう。
「これで君はしばらく右手で魔法は使えぬよ」
「このぉ!」
私は左手に杖を持ち、火魔法を仕掛けた。それを開戦の合図とばかりに、バスティアンとジャックが距離を詰める。オーデルグは火魔法を弾き飛ばしたが、バスティアンとジャックの攻撃を避けなかった。そのまま二人の攻撃が当たる。
「なに!?」
「手応えがない!」
二人の武器が突き刺さったオーデルグの身体は霧のように消えてしまった。
「反応が鈍いぞ」
オーデルグはバスティアンとジャックの後ろに姿を現し、二人に両手を向けた。
「危ない!」
リリィがオーデルグに魔法攻撃をする。私も一緒に火魔法を撃った。しかし私たちの魔法はオーデルグの背中でかき消されてしまった。オーデルグは意に介さず魔法を発動し、バスティアンとジャックが吹っ飛ばされる。
「ぐあっ!!」
「うわあっ!!」
「バスティアン!?」
「ジャック!?」
私とリリィはたまらず声を上げた。
「前衛でも魔法への備えは必要だ。君たちにはそれが全く足りていないな」
オーデルグは余裕の声色でバスティアンたちに向けて言った。そして、私たちの方に振り返る。
「さて、君たち魔道士の肉弾攻撃への備えはどうかな?」
オーデルグは左手の拳を握ると、その左腕全体が大きな触手に変貌した。
「なっ!?」
「一体、どうやって!?」
人とは思えないその現象に、私たちは驚きを隠せない。オーデルグは左手を振り抜いた。触手と化したその腕が伸び、私たちの右方向から迫ってくる。
私は風魔法による大ジャンプでそれをかろうじて避けた。しかし、リリィには直撃してしまった。
「ぅあ!!」
リリィの身体が吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「リリィ!?」
「残るは君だけだぞ」
「くっ!?」
触手による薙ぎ払いを、私は風魔法を使って何とか避ける。ダメだ、こんな防戦一方では! 疲弊したら避けきれない!
攻撃だ、攻撃に転じるしかない! 次の攻撃を避ける時にオーデルグの方へ飛ぶ。そして攻撃魔法を仕掛けるんだ!
オーデルグは再び触手を振り抜いてきた。それに合わせ、私は風魔法を発動した。しかし、薙ぎ払いが来ない。フェイントを入れられてしまった。慌てて別方向に飛んだが、オーデルグは待っていたかのように薙ぎ払いを繰り出した。触手が私の腹部に直撃する。
「がはっ!?」
身体がそのまま地面に投げ出された。腹部に喰らった衝撃で息ができない。私が身体をピクピクと痙攣させることしかできなくなったところで、オーデルグが左腕を元に戻したのが見えた。
「けっ。まるで話にならねえな」
見ていただけのブラストが呟いた。
「ここで君たちを殺すつもりはない。だが、この体たらくでは、今回の大戦は創造神サカズエの敗北だな」
オーデルグはゆっくりとブラストの方へ歩き出した。
「ま、待って……」
「決して止められぬよ、君たちには。せいぜい世界の終わりまでに何をするか考えてみることだ」
オーデルグがブラストの隣で右手を地面に向けると、二人の足音に魔法陣が出現した。そして、二人の身体が消えてしまった。
「て、転移……。そんなことまで……」
私は倒れ込んだ。
完敗だ……。ルーツとブルーニーがいないとはいえ、破壊神討伐チームの上位の実力者が揃ったこのメンバーであそこまで歯が立たないなんて。
ついに姿を現した破壊神の協力者。破壊神の配下を吸収して新しい力に変えようとするその手口。そして、オーデルグと名乗ったあの魔道士の異常な強さ。
今この場に倒れている私たちだけではなく、後に報告を受けるチームメンバーにも衝撃を与えることになるのだった。
「リリィは、知っていたのか?」
「うん……」
ジャックとリリィが言った。バスティアンとのこと、ジャックにも後でちゃんと説明しないといけない。
「ごめんなさいジャック。こんな時じゃなく、もっと早く言うべきだった」
「……後でしっかりと聞かせてほしい」
「ええ」
そこで会話を打ち切り、私たちは走り続けた。
一本道だというのに長い通路だ。マップは頭に入れてあるからこういう道があるのは知っていたが、これだけ走っても奥が見えないとは。
しかし、徐々に私にも闇の魔力が感じ取れるようになってきた。他の皆も同じらしく、全員で走るのを止め、歩きに切り替えて静かに近づいた。
「バスティアン、どうする?」
「先手必勝だろう。召喚魔法の準備を」
「分かったわ」
私はいつでも召喚魔法を発動できるように右手に魔力を込めた。
「ん、誰かいるぞ?」
「破壊神の配下?」
ジャックとリリィが呟いた。確かに私たちの目の先には、緑がかった服を着た人間がいる。体格からすると男だ。しかし、闇の魔力は彼が発生源ではない。それはもっと前方だ。
「ようやくご到着か、サナ王女とその仲間たち。待ちくたびれたぜ」
男は低くて通る声で話しかけてきた。振り返ったその顔には、戦いでついたと思われる古傷が多数あり、左目には眼帯をしている。
「何者だ……」
バスティアンが剣に手をかける。封鎖しているはずのダンジョン内にいた怪しげな男だ。私にも警戒心が渦巻き、ジャックとリリィも武器を手にしている。
「反帝国同盟の一人、ブラスト」
「反帝国同盟だと!?」
「そんな人がどうしてここに!?」
「あれに用があってな」
ブラストと名乗った男は、自分の後ろを親指で指した。私の目がブラストの前方を注視する。
「あ、あれは!?」
私は思わず叫んだ。そこには魔物が倒れている。闇の魔力が漏れ出ているところを見ると、破壊神の配下に間違いなかった。
「お前が倒したのか?」
「いかにも。この俺一人に倒されるような弱い魔物だった」
「一人で倒した……!?」
そんなはずはない。この魔物から溢れている魔力は明らかに先日の大悪魔ジャークゼンより遥かに上だ。それをたった一人で倒しただなんて!?
「破壊神に敵対しているということは、私たちと目的は同じなの?」
リリィが言った。
「敵対ではないさ。俺たちは破壊神トコヨニの協力者だ」
「な!?」
「お前が!?」
「俺たちの存在は知っているらしいな。この魔物を倒したのは、力を吸収するためだ」
「力を吸収……?」
「既に創造神サカズエの使徒に倒されたことのある魔物など、また敗北するのが関の山だ。利用価値はない。しかし、その力を吸収して集めれば、より有用に使うことができる」
「そ、そんなことが!?」
「そもそも、どうして破壊神の味方などしているの?」
「どうして、か。それを説明する権限は俺には無いなぁ。どうします、旦那?」
ブラストが魔物の方を見て声を上げた。
「え!?」
先ほどまで誰もいなかった魔物の隣に人がいる。いつの間に現れたのか! 見れば、バスティアンも私と同じように驚愕の表情を浮かべていた。
その人物は黒い外装を羽織っていて男か女かも分からない。右手に紫色の水晶を持っており、魔物に向かってかざすと、魔物が身体ごと吸収されてしまった。
「世界の破壊が目的だから。それだけで十分ではないか?」
その声は雑音まみれだ。しかし音の低さから男であることは推測できる。こちらに振り返ると、外装のフードの中に黒いモヤが渦巻いており、顔を確認することもできなかった。
「くはは、違ぇねえ!」
ブラストが豪快に笑うと、黒い外装の男がブラストの隣まで歩いてきた。
「私は魔道士オーデルグ」
鳥肌が立つ。オーデルグと名乗ったこの男の魔力を肌で感じる。恐らくあの黒いモヤは闇の魔力だ。視認できるほどの強大な魔力。それは、この魔道士がかつてない強敵であることを意味している。
「なぜ、世界の破壊などと?」
バスティアンが冷静な声で言う。だけど、それは緊張している時の声だ。バスティアンも相手の強さを感じ取っているんだ。
「動機まで語る必要はないな。知りたければ我々を拘束して尋問してみてはどうだ?」
「……破壊神の協力者というなら私たちの敵だ。そうせざるを得ないようだな」
「はっはっは、やめておいた方が良いぜ! オーデルグの旦那の強さは一級品だ。返り討ちに遭うだけだぞ!」
ブラストのその言葉は、自分は手を出す必要がないという意味合いだった。
舐められたものね!
私はまず召喚魔法を使うべく、右手を前に突き出した。
「うっ!?」
しかし、召喚魔法は発動しなかった。オーデルグの右手から放たれた闇魔法が私の右手に当たり、まとわりついた。右手に魔力を流そうとすると吸収されてしまう。
「これで君はしばらく右手で魔法は使えぬよ」
「このぉ!」
私は左手に杖を持ち、火魔法を仕掛けた。それを開戦の合図とばかりに、バスティアンとジャックが距離を詰める。オーデルグは火魔法を弾き飛ばしたが、バスティアンとジャックの攻撃を避けなかった。そのまま二人の攻撃が当たる。
「なに!?」
「手応えがない!」
二人の武器が突き刺さったオーデルグの身体は霧のように消えてしまった。
「反応が鈍いぞ」
オーデルグはバスティアンとジャックの後ろに姿を現し、二人に両手を向けた。
「危ない!」
リリィがオーデルグに魔法攻撃をする。私も一緒に火魔法を撃った。しかし私たちの魔法はオーデルグの背中でかき消されてしまった。オーデルグは意に介さず魔法を発動し、バスティアンとジャックが吹っ飛ばされる。
「ぐあっ!!」
「うわあっ!!」
「バスティアン!?」
「ジャック!?」
私とリリィはたまらず声を上げた。
「前衛でも魔法への備えは必要だ。君たちにはそれが全く足りていないな」
オーデルグは余裕の声色でバスティアンたちに向けて言った。そして、私たちの方に振り返る。
「さて、君たち魔道士の肉弾攻撃への備えはどうかな?」
オーデルグは左手の拳を握ると、その左腕全体が大きな触手に変貌した。
「なっ!?」
「一体、どうやって!?」
人とは思えないその現象に、私たちは驚きを隠せない。オーデルグは左手を振り抜いた。触手と化したその腕が伸び、私たちの右方向から迫ってくる。
私は風魔法による大ジャンプでそれをかろうじて避けた。しかし、リリィには直撃してしまった。
「ぅあ!!」
リリィの身体が吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「リリィ!?」
「残るは君だけだぞ」
「くっ!?」
触手による薙ぎ払いを、私は風魔法を使って何とか避ける。ダメだ、こんな防戦一方では! 疲弊したら避けきれない!
攻撃だ、攻撃に転じるしかない! 次の攻撃を避ける時にオーデルグの方へ飛ぶ。そして攻撃魔法を仕掛けるんだ!
オーデルグは再び触手を振り抜いてきた。それに合わせ、私は風魔法を発動した。しかし、薙ぎ払いが来ない。フェイントを入れられてしまった。慌てて別方向に飛んだが、オーデルグは待っていたかのように薙ぎ払いを繰り出した。触手が私の腹部に直撃する。
「がはっ!?」
身体がそのまま地面に投げ出された。腹部に喰らった衝撃で息ができない。私が身体をピクピクと痙攣させることしかできなくなったところで、オーデルグが左腕を元に戻したのが見えた。
「けっ。まるで話にならねえな」
見ていただけのブラストが呟いた。
「ここで君たちを殺すつもりはない。だが、この体たらくでは、今回の大戦は創造神サカズエの敗北だな」
オーデルグはゆっくりとブラストの方へ歩き出した。
「ま、待って……」
「決して止められぬよ、君たちには。せいぜい世界の終わりまでに何をするか考えてみることだ」
オーデルグがブラストの隣で右手を地面に向けると、二人の足音に魔法陣が出現した。そして、二人の身体が消えてしまった。
「て、転移……。そんなことまで……」
私は倒れ込んだ。
完敗だ……。ルーツとブルーニーがいないとはいえ、破壊神討伐チームの上位の実力者が揃ったこのメンバーであそこまで歯が立たないなんて。
ついに姿を現した破壊神の協力者。破壊神の配下を吸収して新しい力に変えようとするその手口。そして、オーデルグと名乗ったあの魔道士の異常な強さ。
今この場に倒れている私たちだけではなく、後に報告を受けるチームメンバーにも衝撃を与えることになるのだった。
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