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第15話:国王警備隊長のマクシミリアン様がポール様に怒られているのを聞いてしまう

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 次の日。
 私はそわそわしている。

 今夜、アラン様が帰って来られる。
 私を抱いてくれるかしら。
 ドキドキしている。
 
 その事を想像して、身体が熱くなる。
 ああん、あそこが熱くなっていく。
 内股にまで愛液が……やだ、すごく濡れてる。私って、本当にいやらしい女……。

 もう、会議室の掃除も手に付かないわ。

 そして、カミーユ様に怒られてしまった。

「どうしたの、フランソワーズ。またいろんなはしたない行為でも考えていたのかしら」
「あ、あの、申し訳ありません……」

「会議室の清掃、やり直し!」
「は、はい、わかりました、カミーユ様!」

 はしたない行為を考えていたのは事実なんで、怒られても仕方がないか。
 私が会議室の掃除を再びしていると、隣の部屋から大声が聞こえてきた。

 隣の部屋はポール様の執務室だ。
 ポール様の怒鳴り声が聞こえてくる。

「だから、あんたは国王警備隊長だろう。城外に出た時には、常に国王陛下の側にいなくてはいけない隊長が、なんで、別荘での兄貴の暗殺未遂事件の時に全然違う場所にいたんだよ!」
「いえ、何か胸騒ぎがしまして、外の見回りをしておりました」

 どうやら、相手はマクシミリアン様らしい。

「見回りなんて、部下にまかせればいいじゃないか。なんで隊長自ら、しかも一人で海岸の方まで行ったんだよ」
「いえ、ちょっと気が抜けておりまして、まさか、人間たちの暗殺部隊が国王陛下の別荘に近づいているとは思いませんでした」

「おいおい、胸騒ぎがしたんだろ。それで何で、暗殺部隊が近づいているとは思いませんでしたってことになるんだよ。危険が近づいてきたからそう思ったんだろ。兄貴が強くなかったら人間たちに殺されてたぞ」
「えーと、いや、とにかく申し訳ありません。この件についてはアラン国王陛下からも叱責を受けております」

「それから、何でフランソワーズをあっさりと助けたんだよ。国王陛下の暗殺部隊の一員だぞ。普通、その場で殺害しないか」
「そうですね、まあ、事情を聞こうと思いまして」

 部屋の扉が開いている。私はちらっと隣の部屋の様子を伺う。ご立腹のポール様に対して平身低頭のマクシミリアン様。私にはマクシミリアン様がとてもスパイには見えなかった。

「後、何で銀製の武器を保管したんだよ」
「銀製の武器は吸血鬼に危険なんで、それをうまく防御できる武器か防具の研究をしたかったんです。結局、廃棄されてしまいましたが」

「それで、ナイフを一本失くしてしまったのか」
「それが、いつの間にか無くなっていたんですよ」

 なんだか頭をかいているマクシミリアン様。

「うーん、まあ、いいや。もう下がっていいよ」
「はい、失礼いたします」

 マクシミリアン様が部屋を出て行く。
 私は気になって、ポール様の部屋の扉を叩く。

「誰だ」
「あの、フランソワーズですが、入ってよろしいでしょうか」
「ああ、いいよ」

 中に入ると、なんだかゴチャゴチャした部屋だなあと思った。
 アラン様の執務室と違って、全く整理されてない。
 ポール様らしいなあと私は思った。

「なんだい、フランソワーズ」

 ポール様はさっきまでは怒っていたようだけど、また、いつものようにヘラヘラ顔に戻っている。

「あの、大変申し訳ありません。隣の会議室を掃除していたら、ついお話の内容が聞こえてしまって」
「ああ、別に構わないよ。で、なんだい」

「私が捕まった時なんですけど、マクシミリアン様にとっては、私は単なる不審者ということで捕まえたんだと思いますけど。あの時、マクシミリアン様は、アラン様が私たち人間の暗殺部隊に襲われていたってことをまだ知らなかったはずです。私がアラン様を暗殺に来たとは思わなかったんじゃないでしょうか」

「そうなんだよなあ。国王の側から遠く離れて、海岸をほっつき歩いていたってことなんだよなあ。警備隊長が何やってんだって話だよな。で、君を見た時、マクシミリアンはどんな顔をしてたんだ」

「びっくりされてました。それで剣で戦ったんですけど。あっさり剣を叩き落されて捕まってしまいました」
「そうか。まあ、今夜、兄貴が帰って来るから、いろいろと相談するよ、マクシミリアンのことも含めてな。そして、その後はお楽しみだなあ、フランソワーズ、って、俺っていやらしいなあ、ホント。いやあ、悪い、悪い」

 私は思わず顔を赤くする。

「もう、ポール様……」
「あはは、いや、とにかく要注意人物ってことだなあ、マクシミリアンは」

「そう言えば、ポール様は相手が何を考えているかわかるってことでしたけど、マクシミリアン様の考えはわからないのでしょうか」
「あの人、俺より年上なんだよ。だから何を考えているのか、わからないね。まあ、そんなわけでもういいかな、俺も珍しく忙しくてな」
「はい、失礼いたします」

 私はポール様のお部屋から出た。

 それにしても、スパイとマクシミリアン様を疑っているなら、あんな風に怒るのはまずいんじゃないかなあと私は思った。スパイなら、そのまま泳がせて監視したほうがいいんじゃないかと思ったけど、単なるメイドに過ぎない私としては意見するのは失礼だと思ってやめておいた。ただ、ポール様は切れ者と思っていたけど、やっぱりいい加減な人なのかなあとも思ってしまった。

……………………………………………………

 その夜。

 国王陛下用の馬車でアラン様が戻ってきた。
 私はいつものように最後尾でお出迎えをする。

 アラン様がやって来た。
 私を見るとにこやかに笑う。

「やあ、フランソワーズ」
「お帰りなさいませ、アラン様」
「今夜もよろしくね」

 そう言って笑って立ち去っていくアラン様。
 私の胸はさらにドキドキしている。

 もう、周りの吸血鬼たちの視線も気にならない。
 早く、私を抱いてほしい。
 激しく……もう、ありとあらゆる行為で、私を絶頂へ突き上げてほしい。
 いやなことを、何もかも忘れさせてほしい。

 その事を考えて、また、あそこが濡れてくる。
 私って本当に淫らな女だわ……。

 私は部屋に戻って、身体をきれいにする。
 そして準備が終わった後に思い出した。

 タバコケース。
 今夜、渡してみよう。

 アラン様、受け取ってくれるかしら。
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