上 下
713 / 739
ノンビリ

one flame⑱

しおりを挟む
「あ~、疲れた。最近キツすぎん?」
「しゃーないやん。冬の泳ぎこみやで。」
「それにしてもキツいな。去年よりキツい。」
「やっぱそうなん?」

練習終わり、ストレッチをしながら話す。話しているのは真奈と藍さんと憲士だ。掃除の班が一緒なのもあり、この代になってから結構喋っている。

 3年生たちが引退して、クラブの雰囲気は変わった。3年生がいたときは、友達みたいな先輩が多くて、それにつられてクラブの雰囲気も明るくなっていた。体操のときは声を張ってなんか勝負始まってたし、クラブ後のシート引きももっと笑いながらやってた。

 でも、この代になってからはグループごとに固まっている気がする。3年生が上手くまとめてたって感じはあったけど、ここまで分かりやすく変わるとは。

「奏さんがおる時はな、あの人のタイプに合わせてたところあるから。」
「どんなタイプ?」
「ちょっと遅めのペースでずっとぐるぐるしてた。その方が楽しかったけど。」

3年生は引退してから誰1人として1回も来ていない。来てとは頼んでいるみたいだが、みんな忙しいみたいだ。

 真奈の分のストレッチもしてから立ち上がり、ペアストレッチを始める。肩周りと背中は重点的にやって、足のストレッチに移った。

 練習も夏からはだいぶ変わっている。私たちの目指している水泳が『引き算の水泳』なら、先生たちの目指す水泳は『足し算の水泳』。キックのメニューがちょっと多くなっている気がする。けどそれは他のチームよりはマシだ。Distanceはまだキックが少ない方で、sprintは練習全部がキックだったこともあるくらい。

「今年は頼んでみよっかな?」
「何を?」
「憲士も来るか?奏さんがたった3日間で速くなった先生の練習。」
「何それ。奏さんがそんなことなる練習って絶対キツいやん。」
「キツいどころの問題ちゃうみたいやで。合宿が楽に思えたって言ってたし。」

藍さんは笑いながらそんなことを言う。気にならないわけがない。

「真奈も来る?絶対おもろいで。」
「私はパス。おもろいやろうけどな。」
「そっか、残念。」

 目の前では豪快にシートが引かれていく。笑い声が聞こえるがどこか遠い気がする。なんだろうな。こんな感覚は初めてだ。心の底から水泳を楽しめていない。そんな気がしてならない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

善意一〇〇%の金髪ギャル~彼女を交通事故から救ったら感謝とか同情とか罪悪感を抱えられ俺にかまってくるようになりました~

みずがめ
青春
高校入学前、俺は車に撥ねられそうになっている女性を助けた。そこまではよかったけど、代わりに俺が交通事故に遭ってしまい入院するはめになった。 入学式当日。未だに入院中の俺は高校生活のスタートダッシュに失敗したと落ち込む。 そこへ現れたのは縁もゆかりもないと思っていた金髪ギャルであった。しかし彼女こそ俺が事故から助けた少女だったのだ。 「助けてくれた、お礼……したいし」 苦手な金髪ギャルだろうが、恥じらう乙女の前に健全な男子が逆らえるわけがなかった。 こうして始まった俺と金髪ギャルの関係は、なんやかんやあって(本編にて)ハッピーエンドへと向かっていくのであった。 表紙絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストです。

漫才部っ!!

育九
青春
漫才部、それは私立木芽高校に存在しない部活である。 正しく言えば、存在はしているけど学校側から認められていない部活だ。 部員数は二名。 部長 超絶美少女系ぼっち、南郷楓 副部長 超絶美少年系ぼっち、北城多々良 これは、ちょっと元ヤンの入っている漫才部メンバーとその回りが織り成す日常を描いただけの物語。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。

電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。 ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。 しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。 薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。 やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。

M性に目覚めた若かりしころの思い出

なかたにりえ
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

陰キャには陽キャの彼女はできないと仮定する

136君
青春
高校2年理系コースに進んだ主人公、橘悠人は根っからの陰キャだ。休み時間はカバーの被ったラノベを読み、学校が終わったら一人で帰る。昼飯も一人で食べ、学校で口を開くのは授業で当たったときくらいだ。 そんな悠人の隣に座っているのは渡月ちはや。クラスの一軍女子に位置する陽キャで、ファンクラブもある。悠人はそんなちはやに話しかけられるようになった。 「陰キャ」と「陽キャ」の世界は2分されていると考える悠人。そんな悠人とちはやの時間がゆっくりと進み始める。

俺たちの共同学園生活

雪風 セツナ
青春
初めて執筆した作品ですので至らない点が多々あると思いますがよろしくお願いします。 2XXX年、日本では婚姻率の低下による出生率の低下が問題視されていた。そこで政府は、大人による婚姻をしなくなっていく風潮から若者の意識を改革しようとした。そこて、日本本島から離れたところに東京都所有の人工島を作り上げ高校生たちに対して特別な制度を用いた高校生活をおくらせることにした。 しかしその高校は一般的な高校のルールに当てはまることなく数々の難題を生徒たちに仕向けてくる。時には友人と協力し、時には敵対して競い合う。 そんな高校に入学することにした新庄 蒼雪。 蒼雪、相棒・友人は待ち受ける多くの試験を乗り越え、無事に学園生活を送ることができるのか!?

処理中です...