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コタエハ

俺たちは答えを知らない⑩

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「あの5人大丈夫かな?」
「大丈夫ちゃう。あの5人やし。」

教室作業をしながら新宮くんとそんなことを話す。今日は楓が何か思い詰めたような顔をしてた。おそらくバンドのことなんだろう。

「私たちが何か出来ることってないかな?」
「ないんちゃう?知らんけど。でも、1回先聞いてみたくない?」
「確かにそうかも。確かオリジナルばっかやから、私も聞いたことないのばっかやろうし。」
「どっかのタイミングで頼むか。」

 ダンボールで文字を型どって切るだけの作業。周りはほかのことをしていて、でも教室は騒がしい。文化祭って感じになってきた。

「これで3年目やな。」
「短かったねぇ。でも、結構充実してたかも。」
「それ言うんはまだ早いやろ。」
「それはそう。」

ちょっと前までは新宮くんと2人で話すことなんてできなかったのに、今は普通に喋れている。というか、新宮くんのコミュ力に助けられてるって感じだ。

「やっぱいつまでも新宮くんやったらなんか変やな。カレンって呼んでいい?」
「ええよ。じゃあ俺はみんなに倣ってきいって呼ぶわ。」

カレンは嬉しそうに笑う。そんなもんなのか。たぶんそんなもんなんだろう。

「そういえば、私たちと出会ったときから音羽と仲良かったやん。2人ってどんな感じの出会いやったん?」
「おお、なっつい話しすんなぁ。映画館ときやろ。まあ、音羽ちゃんに出会ったんはもうちょい前やってんけどな。」

カレンは昔のことを思い出すように話を始めた。

 作業が終わって、今日は珍しく5人が練習しているスタジオの最寄り駅に行った。

「こんなことすんのなんか珍しくない?」
「それはきいのほうやろ。いっつもやったら家帰ってごろごろしてるんとちゃうんか?」
「なんも言えへんわ。実際そうやから。」

あのあと、私とひい君の昔話もした。幼稚園から小学校までのことを話したら、腹を抱えて笑ってた。

 カレンはコーヒーを飲みながら、駅の壁にもたれる。

「これは音羽ちゃんには言うて欲しくないねんけどな。」
「ん?」
「日本来てよかったわ。みんなとも会えたし、何より音羽ちゃんに会えた。絶対言わんといてな。」

カレンはニカッと笑う。

「言わへんよ。絶対に。」
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