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インタイ
いんたい⑥
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飛び込んでドルフィンを6回打つ。そして浮き上がってきて、3ストローク目で呼吸した。
長い旅の幕開けだ。約20分の間、俺はこのレーンで泳ぎ続ける。地区の時は短水路だったが、この中央大会は長水路。その分死ぬほど疲れるわけで、俺の体力ならあまり続かない。
でも、心地いいペースなんかで行ってはベストは出ない。ある程度疲れるくらいのスピードを意識して泳いでいく。
最初のターン。そのときに俺は自分の状況をやっと理解した。
(置いていかれてる。ヤバい。)
隣のレーンのやつとはベストタイムは1分半離れている。それに加えて前半を突っ込むって言っていたからある程度予想はしていたが、まさか全員に置いていかれているとは思わなかった。
一応、隣のレーンのやつのキックの水飛沫は見えているから、それについて行けば…なんて考えは甘かった。たった50mで1m以上差をつけられている俺が、そのペースについていけるわけが無い。
結局置いていかれてしまった。
(ここからは一人旅か。)
応援してくれているみんながいるとか、そんな主人公みたいなことは言えない。何がどう転んだって結局泳いでいるのは俺だけで、タイムをどうにかできるのは俺だけだ。応援しているから分かっているが、どんなに大きな声を出したって、水の中には聞こえることはほぼない。自分の体が波にぶつかる音と、腕を戻した時にたつ飛沫の音しか聞こえてこない。
100mのターンに入る頃には、もう完全に置いていかれていた。
左手でラスト1掻きを掻いて、ターン動作に入る。ゆっくりしたいところだが、ここの時間をも短くしないとベストなんか出やしない。また浮き上がって泳ぎ始める。
身体の異変を感じ始めたのはちょうど400mを過ぎたあたり。
(脇痛え。疲れ始めてる。)
脇の筋肉が疲れ始めた。背中と脇とを両方使いながら泳いでいたが、脇の筋肉の限界が近づいてきたようだ。
(あと1kmもあるのに。くそっ。)
試合前の準備を怠った訳ではない。ただの俺の筋力不足。でも、今更後悔したって遅い。今できることを考える。
そのとき、ある言葉を思い出した。
『練習で楽できんで試合で楽できるわけないやろ。』
1年生の時の冬休み。合同練で言われた言葉だ。そのときの泳ぎを頭の中にイメージする。たしか…
(乗っかる泳ぎ。)
最近はしていなかった泳ぎ。だからこそ、今だからこそやるしかない。
ターンを回って泳ぎをリセットする。キャッチの位置をさっきより高く、水の上を滑るように泳ぐイメージで。
(楽になった。)
キックはある程度打たないと浮かないが、背中の負担は格段に違う。やはりこの泳ぎが1番だ。
長い旅の幕開けだ。約20分の間、俺はこのレーンで泳ぎ続ける。地区の時は短水路だったが、この中央大会は長水路。その分死ぬほど疲れるわけで、俺の体力ならあまり続かない。
でも、心地いいペースなんかで行ってはベストは出ない。ある程度疲れるくらいのスピードを意識して泳いでいく。
最初のターン。そのときに俺は自分の状況をやっと理解した。
(置いていかれてる。ヤバい。)
隣のレーンのやつとはベストタイムは1分半離れている。それに加えて前半を突っ込むって言っていたからある程度予想はしていたが、まさか全員に置いていかれているとは思わなかった。
一応、隣のレーンのやつのキックの水飛沫は見えているから、それについて行けば…なんて考えは甘かった。たった50mで1m以上差をつけられている俺が、そのペースについていけるわけが無い。
結局置いていかれてしまった。
(ここからは一人旅か。)
応援してくれているみんながいるとか、そんな主人公みたいなことは言えない。何がどう転んだって結局泳いでいるのは俺だけで、タイムをどうにかできるのは俺だけだ。応援しているから分かっているが、どんなに大きな声を出したって、水の中には聞こえることはほぼない。自分の体が波にぶつかる音と、腕を戻した時にたつ飛沫の音しか聞こえてこない。
100mのターンに入る頃には、もう完全に置いていかれていた。
左手でラスト1掻きを掻いて、ターン動作に入る。ゆっくりしたいところだが、ここの時間をも短くしないとベストなんか出やしない。また浮き上がって泳ぎ始める。
身体の異変を感じ始めたのはちょうど400mを過ぎたあたり。
(脇痛え。疲れ始めてる。)
脇の筋肉が疲れ始めた。背中と脇とを両方使いながら泳いでいたが、脇の筋肉の限界が近づいてきたようだ。
(あと1kmもあるのに。くそっ。)
試合前の準備を怠った訳ではない。ただの俺の筋力不足。でも、今更後悔したって遅い。今できることを考える。
そのとき、ある言葉を思い出した。
『練習で楽できんで試合で楽できるわけないやろ。』
1年生の時の冬休み。合同練で言われた言葉だ。そのときの泳ぎを頭の中にイメージする。たしか…
(乗っかる泳ぎ。)
最近はしていなかった泳ぎ。だからこそ、今だからこそやるしかない。
ターンを回って泳ぎをリセットする。キャッチの位置をさっきより高く、水の上を滑るように泳ぐイメージで。
(楽になった。)
キックはある程度打たないと浮かないが、背中の負担は格段に違う。やはりこの泳ぎが1番だ。
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