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インタイ

おはなし②

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「ちょっと話があんねんけど。」

そう切り出した俺はやらかしたと思った。絶対に今じゃない。そんな気がしたからだ。でも、1度話し始めてしまったからには、もう後戻りできない。

「俺さ、国学社進む気あんまない。」
「は?」

うちの高校は大学の附属校。内部入試のシステムがあって、もちろん通常の入試よりは難易度が低く、落とすためのテストじゃなくて、あくまで選定するためのテストだ。

「だから、国学社に進む気あんまない。」
「それだけ言われても納得出来るわけないやろ!」

楓は珍しく声を荒げた。拳を強く握り、涙目になりながら俺を睨んでいる。

「ずっと2人で一緒に通ってきて、大学でもそうだと思ってた。大学の近くのアパートに引っ越して同棲とか、そんなことも考えてた。でも、それは私の思い上がりやったんか?」

俺の胸ぐらを掴みながらそうやって俺に訊いてくる。そして、俺の胸に顔を埋めた。

「奏は私と一緒にいたくないんか?」

消えてなくなりそうな声。触れたら壊してしまいそうな身体。俺はそれを優しく包んだ。

「いたい。いたいけど、それだけやったら、俺は俺になれへん気がするんや。ずっと水泳やってきて、水泳以外何も知らんかった。でも、いざ水泳辞めるとすると、俺って何が残るんかなって思ってん。」
「それで?」
「俺さ、何か書きたい。俳句でも、短歌でも、詩でも、歌でも、小説でもなんでもいい。ただ書きたい。」
「ほんなら文学部でええやん。」
「それはさ、仲間内での評価も入ってくるやん。俺が欲しいんは世間からの評価やねん。」

確かに創作系のサークルに入るのも悪くないと思う。お互いに高めあって、それでさらにいいものが作り上げられるのなら、それは万々歳だ。

 でも、俺の性格上それは向いてないと思う。馴れ合いみたいになって、結局ほぼ成長しないのがオチだと思う。だから、退路を断ちたい。

「とりあえず、夏休みにあるコンテストとかに応募してみる。それで俺の力を把握する。まず入選しないとあかんねんけどな。」
「それで?」
「ほんで、大学行くかを決めるのはそれからや。もしかしたら行かんかもしれんし、行くかもしれん。やから国学社に進む気あんまないんや。」

俺はこの結論に至った理由を説明する。そしたら楓は安心した笑顔になった。

「そか、ならまだ一緒に通えるかもしれんねんな。」
「それはこの夏のコンテストにことごとく落ちまくったらやからな。間違えても期待すんなよ!」
「期待して待ってるわ。」

2人で笑い合い、そのまま俺たちは身体を重ねた。
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