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セナカヲ

俺たちは京都③

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 今回の目的はお参りなどではない。ここに来るのはあくまで先生から出されたクエストをクリアするためだけで、あとは戸津井さんが言っていたように御守りを買うことくらいだ。

「学業成就の御守り1つください。」
「はい、400円ね。」

舞台に上がるとすぐ、戸津井さんは御守りを買いに行き、船戸さんは何やら景色とスマホを照らし合わせていた。

「何してんの?」
「ん?このシーンと景色合わせて、どこでキスしたんかな?ってやってるだけやで。」

船戸さんのスマホにあるのは、俺でも知ってるような有名なシーン。高校生探偵の主人公とその彼女がこの清水の舞台でキスしているシーンだった。

「写真撮る?」
「いや、もうちょっとここの角度が…ここだ!

船戸さんはベストポジションを見つけたようで、撮影を始めた。船戸さんのこういう一面を見ることが今までなかったので、新鮮だ。

 ひとしきり撮影が終わったあとは順路に従って歩くだけ。仁王門に戻ってきた頃には時間は9時半過ぎになっていた。

「もうそろそろ戻らんとやばいかもな。一応1回は集まらないとあかんもんな。」
「んじゃ、戻るか。」

俺たちは元歩いてきた茶わん坂に戻る。ここからは下り坂だが、駅まではそれなりに距離があるので、駅に着いた頃には全員疲労困憊だ。

「電車来る!早く早く!」
「そんなスピードで階段降りられへんて!」
「うおぉぉぉ!」
「くるみ凄い。なんで動けんの?」

ちょうど来ていた準急になんとか乗り込み、一駅。祇園四条に着いたらうちの学校の生徒が何人もいた。どうやらこの時間に来る生徒は多いみたいだ。

「みんな今からクエストなんやろうな。俺たちみたいに先に行っときゃよかったのに。」

周りに聞こえない程度の声で聡が呟く。確かに俺たちがやったことは効率こそいいものの、正式には認められてない。いわゆるズルであり、あまり褒められることではないのだ。

 集合は鴨川のほとり。そこに先生たちが集まっているので、点呼をしに行く。それから回り始めるのだ。

「由良班来ましたー!」

戸津井さんがそんなことを言いながら階段を降りて、先生に知らせに行く。その後ろを俺たちはついていく。

「来たな。お前らはどこ行くんや?」
「一応予定では二条城です。余った時間は考えます。」
「おう。気をつけてな。」

そんな感じで点呼は終わり、俺たちは自由になった。

「ほんなら予定通り二条城行くか。三条で乗り換えたらいいからこっちやな。」

俺たちはまた京阪電車の祇園四条に向かう。

「じゃあ行こー!」

戸津井さんのそんな声と共に。
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