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セナカヲ

私は入学式①

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―青春なんてすぐ手に届くもので、でも遠くにあるものだ。神様の掌から零れそうなほどいる人々は、年齢が上がる度に持ち上げられている。そのうちの一つの区間が青春。

 でも、神様であってもそう上手くは持ち上げられない。途中のどこかで落ちてしまって、そのステージに上がれない人もいる。また掌の上が嫌になって自分から落ちる人もいる。

 私は1度落ちかけてしまった。だけど今は必死に指にぶら下がっている。そんな人だ。―




「おーい!早くした方がいいぞ。」
「分かってるって、ちょっと待ってぇ!」

私は初めて着るブラウスに袖を通す。手首のボタンを閉めて真っ直ぐ立ち、鏡を見ながらボタンを順番に閉めていく。1番上のボタンは空けておくことにした。そして紺色のスカートを履き、ブラウスをインする。紺色のハイソックスを履き、紺色のブレザーと臙脂色のリボンを手に持ってリビングに降りた。

「おはよ。」
「おはよ、杏。どうせ髪の毛いじるんやろ。さっさとやってこい。」
「言い方。じゃあ朝ご飯よろしくね。」
「うい。」

私は洗面所に行く。中学時代と何ら変わらない準備をして、最後にちょっとだけいつもと違うことをしようとした。

 真奈と2人で髪を伸ばし続けて、今はセミロングくらいの長さになっている。さすがにそれをそのまんまって…いるけど味気ないので、結んでみようと思う。

「無難にポニテ?それなら私の雰囲気的にはハイかな?いや、高校生なったし、ちょっと落ち着いた雰囲気のロー?ん~…」
「どうした?」
「あっ、桜さん!」

ちょうど桜さんが起きてきて、洗面所に入ってきた。

「髪の毛どうしようかなって思ってて。」
「あ~、じゃあちょっと私に任せてみて。」

桜さんは私よりちょっと背が高い。私の後ろに回って、櫛で髪をときながら、ハーフアップにしてくれた。

「私はこれがいいと思うけど。」
「おぉ~っ!」

私が私じゃないみたいだ。少し気分も大人っぽくなったような気がする。

「じゃあ私からの入学祝いあげよっか。はい、これ。」

渡されたのは白い箱。私はこの箱は何回も見たことがある。

「私とおそろいやで。」

それはヘアミストだった。桜さんとおそろいで、私も大好きな香りだ。

「じゃ、杏ちゃんが準備出来るまで待っとくから。」

そう言って桜さんは洗面所から出ていく。

 さて、これをどうしよっか。いつものやつを仕上げに吹きかけるのはちょっとな。

「じゃあありがたく使わせていただきます。」

私は箱を開けた。

 準備が出来たので、リビングに再び戻る。

「杏、食べるぞ。」
「うん。あっ、桜さん。ありがとう!」
「うん。どういたしまして。」
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