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アケボノ

ルスツ㉒

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「私ね、ずっとひい君のことが好きだった。」

ついに言ってしまったその言葉は、取り返しのつかない私の未来を照らしていた。

 絶対に嘘をつかないと思っていた。だって、私の大事な人だから。本当に大切にしたい人だから。それだけ特別な人だから。

「知ってたよ。」

ひい君が放った一言はそれだった。

「ずっと前から知ってて、ずっと前から見ないふりをしてきた。それで桜と出会って、やっと分かった。きいとはそういう関係じゃないって。今の関係が壊れてしまうのが嫌だったんだろうな。」
「じゃあ、私は何なの?」

私はひい君とはそういう関係になりたかった。私の何気ない日常の一部にひい君がいて、ひい君の何気ない日常の一部に私がいたかった。

 でも、ひい君は私と違った。そういう関係じゃない?私の今までは思い上がりだったの?

「きいは…大切な幼馴染だ。俺の傍にずっと居てくれる。こんな俺のだらしない日常の一部に入ってきてくれる。そんな幼馴染だ。」
「でも、私はそんな繋がりよりももっと深い繋がりが欲しいの!」

感情が昂って自然と大きい声が出てしまう。そんな私をひい君はまっすぐ見た。

「やっぱりか。嘘つかんくてええのに。」
「え?」

私の嘘がバレた?そんな訳ない。私、そんな感じのことは何も…いや、言ったな。

 急に涙が溢れだしてくる。本当は嘘なんかつきたくなかった。でも、もう遅いんだ。

「ごめん。嘘ついて。」
「いいよ。俺の事を考えて、その結果なんだろ。ありがとな。」

そう言ってくれるひい君の胸に縋り付く。ひい君が着ているジャージは濡れてしまうだろう。でも、そんな私をひい君は優しく抱きとめた。

「ごめん、ごめん、ごめんなさい…」
「いいよ。全部吐き出して。」
「ひい君のこと困らせちゃうけどいい?」
「いいよ。」

絶対顔は見せられない。でも、見せたい。私の最後の勇姿を。私がどれだけ強くなれたかを。

 私はひい君の胸から1度離れた。

「ひい君。好きだよ。ずっと前から。」
「知ってる。でも、ごめん。その気持ちには応えられない。」
「それでいいよ。もしも今ので揺れてたら、私が叩き直してあげないといけなくなっちゃうから。」

涙は止まった。笑えた。

 その後2人でエントランスまで歩いて別れた。女子が男子のフロアに行くことはできないから。

 ドアをノックする。中になぜかいた楓がドアを開けてくれた。

「おかえり。」

部屋に1歩足を踏み入れた瞬間涙が溢れだしてきた。
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