上 下
487 / 716
アケボノ

ルスツ⑫

しおりを挟む
 目を覚ますと知らない天井だった。

(そういや修学旅行に来てるんやったな。)

ベッドからもぞもぞと出て時間を確認する。

(4時か。寝たんがだいたい12時過ぎやから4時間も寝れたんや。)

最近は眠りが浅くなってきて、寝れても5時間とかだからいつもよりはマシに思える。2人の寝てるのを邪魔しないように軽く足元が見える程度の電気をつける。

 結局最後の試合は俺たちの勝利で終わった。取って取られての展開で、結局最後に裏取りを決めて俺たちが3対2で勝ったのだ。

(今日は俺たちは早い方やな。記念写真の撮影があるとかなんとか。そんなことよりも早く滑りたいねんけど。)

部屋のソファーに自分の分の着替えを置いて、その横に座る。ソファーは窓側だから少し寒い。

(…甘酒飲も。)

持ってきているフリーズドライタイプの甘酒を取り出し、紙コップに入れ、お湯を注いだ。これを持ってきているスプーンでかき混ぜると甘酒の完成だ。

(あったか。)

飲めば体の芯から温もっていき、身体が目覚めてきた。昨日の疲れは若干残っていて、軽い重たさと痛みがある。

 俺はこんな感じで起きて寛いでいるのに、横の2人は全く目覚める気配がない。そこまで深く眠れるのっていいな。

 そんな感じで甘酒を飲んでいると通知がきた。

SaKu:『起きてる人~!』

桜も目覚めたようだ。時間は4時半すぎ。桜はたしかいつもこの時間に起きて勉強しているはずだから、そのリズムが身体に染み付いているんだろう。

Q:『起きてるで』

とりあえずそうやって送ってみたけど既読が『1』しかつかない。ってことは全員寝てるのか。

 すると次は桜から電話がかかってきた。急いでイヤホンをつけて電話に出る。ビデオ通話だ。

『もしもーし。急にごめんね。』
「俺の部屋2人とも寝てるからそんなでっかい声で喋られへんで。」
『いーのいーの。ちゃんと聞こえるから。私にはどんなに小さな声でも。』

しれっとドキッとさせてくるのはいつもの桜っぽい。てか、こんな感じのことっていつも言わんよな。いつもはもうちょい態度とかで…

(そうか。今は朝。朝テンションみたいなやつが深夜テンションみたいにあるんか。)

1人で納得して、そのまま続ける。

「んで、どーしたんや?」
『ん~。昨日結局あの1回しかまともに話せてないから声聴きたくなっちゃった。』
「普段から一緒に生活してると、声聴かん方が少ないもんな。」
『それな。男女間で部屋移動出来たらええのに。』
「普通に部屋移動しても先生怒んのにそれは無理やろ。さすがに。」
『言ってみただけ!』

桜が画面の奥でむんってしている。めっちゃ可愛いけどあえて言葉には出さない。そういうのはちゃんとしたときに取っておきたいから。

 それにしても桜、眠そうだ。さっきから瞬きのテンポが遅くなっている。

『久志と喋ってたらなんかねむくなってきた。』
「もう1回寝とくか?今日もあるし。」
『やな…じゃあまた後でね。』
「おやすみ~。」

そうして通話を終えて、背もたれにもたれる。

「へぇ~、いっつもそんな感じなんや。」
「知らんかったなぁ。」

さっきまで寝ていた2人はもう起きていて、俺の事をニヤニヤして見ている。

「なんや。」
「「なーんにも。」」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜

赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。 これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。 友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!

処理中です...