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アケボノ

買い出し⑤

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 ラーメンを2つ持って帰ってくると、桜は満足そうな顔を浮かべた。

「おかえり~。」
「塩と醤油、どっちがいい?」
「こういうの結局塩に落ち着くねんなぁ。塩ちょーだい!」

塩ラーメンを桜に渡し、俺の目の前に醤油ラーメンを置く。2人の間には餃子の皿を置いた。

「気が利くねぇ。」
「なかったら『なんでないん?』って言われてる未来が見えてた。」
「たしかに言ってるわ。絶対。」

割り箸をパキッと割って、手を合わせる。

「「いただきます!」」

 れんげでスープをすくって飲む。チェーン店だから味が変わるはずがないが、少し前よりも美味しくなった気がする。

 麺をすすってみたら、やっぱりいつもの味で、少し落ち着いた。

「ちょっとちょーだい!」
「はいよ。」

そう言われたので、ラーメン鉢を桜のほうに寄せる。すると少し不満そうな顔をした。何を望んでいるかは手に取るように分かる。けど、恥ずい。周りには家族連れがいっぱいいる中で、つまりは食べさせてくれってことだろ?そんなの、俺の心臓が持たない。

 でも、桜は待っているだけだ。自分で食べようとなど微塵も思っちゃいない。

(やるしかないのか…)

俺は麺を何本かつまんで、持ち上げる。すると桜が近づいてきたので、その口に入れた。

「こっちもやっぱいいな。」

ご満悦そうだ。俺は心臓が張り裂けそうだが。

「じゃあ私のもあげるね。はい、あーん!」

こいつ、マジかよと思いながら、桜の顔を見てみると、さすがに恥ずかしそうだ。「早く!」って目で言っているのが分かる。

「あーん。」

そうやって食べてみると、いつもよりも少し美味しく感じた。なんの効果だろうか?

「美味し。いと美味し。」
「それはよきですな。」

 それからは学校生活のことを色々喋って、全部食べきった。餃子も半分こして、同じタレにつけて食べた。これで恥ずかしがらないのは、長く一緒に生活しているからだと思う。

「んじゃ行くか。」
「やね。食器返してきて。」
「えーっ。」

今度は食器を返す羽目になって、桜の食器を受け取る。俺はお盆を2つ持って、返却口に向かった。

「ごちそうさまでした~!」
『ありがとうございました!』

厨房の人全員がそう答えてくれる。やっぱりこういう店はこれがあるから気持ちいい。

 フードコートの入り口の方に行くと、桜が立って待っていた。やっぱり少し他の男どもが変な目で見てるのが気になる。けど、その笑顔は俺だけに向けているから、少し安心だ。

「行こっ!」
「ああ。」
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