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ミカヅキ

プレゼント⑥

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 この1年半、桜にはがきが届くことは1度もなかった。なのにこんな時期に届くなんてどういうことだろう。

 とりあえず取り出して見てみる。日付は夏休み中になっていた。そして宛名は桜本人。差し出したのは有田杠葉となっている。桜の親戚か何かか。それなら苗字は富貴のはず。離婚したとか何かか。

 俺がこのはがきを見たことがないということは受け取ったのは杏か桜。

「なぁ杏。このはがき見たことあるか?」

階段の上から頭だけ出して聞いてみる。すぐに杏は階段の下にやってきて俺が持っているはがきを見るが、よく見えなかったらしく階段を上がってきた。

「ああこれ!夏休みに届いたやつや!確か宛名は桜さんやったやろ?」

杏はこのはがきを見たことがあるらしい。それを桜に渡したってことだ。それをいなくなってからもずっと残していたってことになる。

 ただし、このはがき、裏に何も書いていない。真っ白なのだ。ということはこの表面に何か意味があることになる。でもここに書いているのは名前と住所だけだ。

「もしかして、そういうことなのか?」

俺の足は考える前に動き出していた。階段を駆け降りてリビングに入る。

「もしかしたら桜の居場所が分かったかもしれん。」
「ほんまに?」
「このはがきに書いてあるこの住所。っぽいだろ?」

はがきの桜の親戚と思わしき名前の隣に書いてある住所。あの日、桜は大阪市内方面の電車に乗った。ということは、そっちを経由したら行きやすいってことなのだ。

 そしてその住所は福井県の小浜町のものだ。サンダーバードで福井まで行ってそこからローカル線で行けるはず。桜もそうやって行くはずだ。

「で、行くの?」

楓がそうやって聞いてくる。

「もちろん。行くさ。」

そうやって答えると誰かが俺の服の裾を摘んだ。振り向くときいがいた。

「どうした?」
「ん?あっ!ごめん。行ってきて。ちゃんと連れ戻してきて。」

きいは顔を赤くして焦って手を離して、恥ずかしそうに頬をかいた。

「年始には連れ戻す。約束するわ。」
「杏ちゃんは私のところで預かるね。」
「きい姉の家久しぶりだぁ!って楽しめないんだけどね。」

じゃれ合う2人を微笑ましく見ていると誰かが俺の肩を叩いた。奏だった。

「ちゃんとしてこいよ。」
「あぁ、分かってる。」

何をかは言わないけど、俺の心の中で1つの決着をつけることが決まった。
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