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ミカヅキ

answer①

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「あの、2人とも、ちょっといい?」
「「ん?あぁ、橋本さんか。」」

私の書いた詞を曲にしてくれる日置くんと、歌い手の志原くんに声をかける。2人はどちらかと言うと私寄りで、いつも2人で教室の端っこで喋っている。でも、作詞組の残り物になった私を拾ってくれた。まぁ、仕方なくなんだろうけど。

「音楽の課題の分の、書けたから。ちょっと見てほしくて。」

私は作詞をした画面を表示させたスマホを2人に渡す。2人は難しい顔をしながら読み始めた。

 じっくりと3分ほどかけて読み、日置くんが私の方を見る。少し遅れて、志原くんも顔を上げた。

「これは、どういう曲?」

日置くんが口を開く。何も知らない日置くんからしたら、私がどういう気持ちでこの歌詞を書いたのか分からないだろう。

「H組の有田さんって知ってるよね。」
「もちろん。」
「後夜祭で司会しとった人やろ。」
「うん。今はどこにいるか分からないけど。」

2人は少し驚いたような表情を見せる。2人が知らないのは無理もない。なんせ、このクラスという狭い世界の中でずっといたんだから。

「もしかして…」
「そう。桜が私の…私たちの『届きそうで届かない相手』。それとこの曲は私の懺悔でもあるの。そうでもなきゃ、私はこんな歌詞、書かない。」

私のこの熱は伝わったかな?伝わってくれるといいな。

「全員に届くわけじゃないってこと、分かってるよな。もちろん、出来る限りのことはするけど、それでも無理なこともある。『届けたい歌』と『届く歌』は違うねん。」

たしかに、この企画の問題点は届かない可能性があるということ。というか、届かないのがほとんどだ。

「私はどうしてもこの歌を『届けたい』。『届く』のは1人で十分。たとえ、どんなけの人に批判されても構わない。1人の心に響いてくれるなら。あと、こうでもしないと、前に進めない気がするから。」

この歌は、桜のために書いたけど、私のために書いた歌でもある。桜ならそのこともしっかりわかってくれるし、全ての思いを汲んでくれる。だから桜だけには届くと信じている。

「分かった。あとで、この曲のイメージ教えて。」
「ありがと。」
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