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キザムノ

呼び出し⑤

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 買っちった!ちょっと高かったけど買っちった!釣り行くお金が足りなくなるかもしれんけど、そこはお年玉でどうにかしよう。

「買ったのか?」
「うん!」

右手に持った買い物袋を見せると、微笑んでくれる。幼馴染補正が入らないにしてもかっこいいと思うねんけどなぁ。「かっこいい」って言ったら「はぁ?」みたいな顔されるし。

「そういえば、ひい君はどっか行きたいところないの?」
「ん~、そうだなぁ~、あっ!」

ひい君が見ているのはスポーツ用品店。ひい君はもう泳いでないはずだけど…

「奏の誕プレと杏に買っていいか?」
「おぉ、杏ちゃんなら私からも買いたい!もうすぐ引退試合やろ?」
「じゃあ杏のは半分ずつ出すか。奏のは?」
「私からもなんか1つ買ってく。」
「じゃあ行くか。」

 中に入って最初に行ったのは、ジャージとかTシャツとかのコーナー。水泳部は水中にいるはずなのにTシャツはいくら持ってても困らないらしい。なんせ、陸上でストレッチするときに、プールサイドでするから汗まみれになるんだと。

「こんなの似合いそうだな。」
「私はこっちが似合いそうだと思う。」

ひい君が選んだのは黒と赤のTシャツ。胸元にスポーツブランドのロゴがプリントされている、至ってシンプルなやつだ。それに比べて私のは…

「お前の奏のイメージってどんなんやねん。」
「このTシャツを見た時に、着てる姿がパッと思いついて、笑っちゃったから。」

黄色一色のド派手なやつ。真ん中にドドーンとスポーツブランドのロゴがプリントされていて、しかも黒いから超目立つ。どちらかと似合うというより面白いになってる気がする。

「それで笑われる奏の姿を見てみたい。」
「やろ。」

私の意図が分かったのか、2人で悪そうに笑う。この結果は楓に聞かないとな。

 そして、杏ちゃんのを選びに行く。どうも目星はつけていたらしく、その方向にスタスタと歩いていった。

「ものは決まってるから、あとは色だけなんだよな。」

手に取ったのはふくらはぎサポーター。レース前につけていると足が楽になるとかなんとか。そんなことを楓が言っていた気がする。

「1番オーソドックスなのは黒。でも、このメーカーといえば青。んで、杏といえば?」
「柔らかい系の色。」
「なんだよなぁ~。」

ひい君はヘロヘロとへたりこんでしまう。何かを思いついたようにまた立ち上がった。

「性能的にはこれ。必然的に青になる。クラブジャージの色が黒だから合わせるなら黒がベター。値段は…それくらいはいいや。」

いいお兄ちゃんしてるなって思う。だって、妹の引退試合のためにここまでするなんて、私には考えられないもん。

「じゃあ、私なら目立たないものの方がいいかな?」
「きいはそうなのか?」
「少なくとも私は。」

ひい君は少し悩むと、黒いのを掴んでレジの方に行った。

「やっぱりきいに相談して良かったわ。」

ニシシと笑うひい君。やっぱりズルいよ。
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