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イツモノ

私の幼馴染

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 6時間目が終わるのもあっという間だった。

「はぁ…どんな顔して会えばいいんだか。」

いっそ1人で帰ろうかと思っていると、

「きい、帰るぞ。」

こういう時に限ってひい君が早く来る。私は精一杯の作り笑顔をして、

「今行く。」

とだけ。今日の帰り、大丈夫かな?

 私たちは2人で学校を出た。

「桜は?」
「今日は友達と遊びに行くんだと。」
「あぁ、小倉さんか。」
「そそ。」

いつぶりだろうか。ひい君と2人で並んで歩くのは。少なくともここ最近はなかった気がする。

 あんな夢を見たから、ひい君の顔が見れない。知らん間に夢で見たひい君に重ね合わせてしまうから。

 そうだ、こっちの世界が夢なんだ。だって、あんなに鮮明に見える夢があるとは思えないから。そうだ。そうに違いない。

「どした?」
「んーん。何も。痛てっ!」

電柱にぶつかったら痛かった。あぁ、現実なんだなと少し悲しくなる。今はこの瞬間を楽しもう。それしかない。

 電車の中でも結局目を合わせられなかった。

「なんかあったんか?」
「ん?」

さすがにひい君のことだよとは言えない。今はこの関係を続けることが最善だ。この関係がもし壊れたら、私はどうなってしまうか分からない。

「何も。」

今は何も言わない方がいい。そう信じてる。でも、ひい君が離れちゃうのは嫌だからな。

「ねぇ、ひい君はずっと一緒にいてくれる?」

今日初めて目を合わせて訊く。ひい君は少し戸惑っているような顔をしたかと思えば、すぐに口を開いた。

「友達って思ったより弱い繋がりでさ。なんかあったらすぐ離れて、接点がひとつ見つかるだけで嬉しくなって、それでくっつく。そんな関係なんやと思うねん。」
「せやな。」
「俺たちってさ。その力が人一倍弱くて、だから、友達って友達も少ないし。去年のクラスのヤツって覚えてるか?」
「ほとんど覚えてないね。」
「結局そんなもんなんよ。俺たちって多分これからもこんな感じやろうから、やから何人かは味方でいないとなってな。」
「…………」
「まあ、こんな事言うのは恥ずくて今すぐ死にたいくらいやねんけどさ。俺はずっときいのそばにいる。ずっと、ずっとだ。絶対とは言えないのがちょっと頼りないけど、できるだけな。やって、幼馴染なんやし。友達とはちゃうくて、そんなんよりもっと強い力で繋がってんねんから。」
「…だね。私も、ずっとひい君のそばにいる。幼馴染なんやから。」

あぁ、“幼馴染”か。
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