229 / 739
ムカシハ
最強の闘い⑤
しおりを挟む
昔はこんなに他の誰かを見ようとは思わなかった。
「作詞家くん、かっこいい?」
「ゆーちゃん、何言ってんの!?そんなこと思ってるわけないやん!」
確かに、他の男子より数パーセントだけはかっこよく見えるけど、そんな一際目立ってとかちゃうし!
「あっ、また当てた。」
さっきからずっと一進一退の攻防が続いている。予選のときは久志の独壇場だったが、今はそれに慣れたのか、そうはいっていない。ずっと調子が良かったあの曲がるボールも捕られるようになってきたし、なんというか、普通になった感じだ。
それにしても、何で久志のことが自然と視界に入るようになったのだろう。気づけば追っちゃってるというか、なんというか…
「…………」
今はいいや。試合見とこ。
〇〇〇〇〇
「ッチッ」
また捕られた。さっきから決まんねぇ。試合ももうすぐ後半やのに、そこまで差が開いてねぇ。
「焦んな。もうすぐあれが入ってくる。」
「分かってる。」
審判の手にソフトバレーボールが握られたのが見える。
「あれさえ入ってくりゃあ。」
少しずつ削られていく仲間たちを見ながら、俺はそう呟いた。
〇〇〇〇〇
何とか攻略できた。
「ハァハァ」
それにしても、この試合は疲れるな。体力がみるみる減っていく感じがする。
「また減った。」
もう何人目かも分からない。内野から外野に出ていく奴らを見るのは。
審判がソフトバレーボールを投げこもうとする。
「ソフトバレーボール投入!」
放送部のアナウンスが聞こえてきて、ボールが俺たちの方に飛んできた。
〇〇〇〇〇
相手から飛んできたソフトバレーボールは力なく落ちてくる。それを俺はしっかりとホールドし、助走距離をとった。
何かやってくるなという目をする奏。当たり前だろと目を合して返す。試合は盛り上がっているはずなのに、何故かここだけ音がないみたいだった。
ボールを握る。今まで2試合、あの無回転ボールは見てきただろう。でも残念だな。キレが違ぇんだわ。
俺が投げたボールは、少し上の方に飛ぶ。そして、奏の手前で、何かに吸い込まれるように落ちていく。ほんの0.5秒の間の出来事だ。1度でも瞬きしたら、もうついていけない。そして、追い討ちをかけるように右に曲がる。奏はその動きについていけず、ボールを零した。
「ウォォォォォォォォ!」
「なんやあれ!」
「やってた他2人と全く違ぇ!」
外野が盛り上がっている。それでも、俺は奏から目を離さない。
奏が外野に出る。そして、ソフトバレーボールを持った。
「作詞家くん、かっこいい?」
「ゆーちゃん、何言ってんの!?そんなこと思ってるわけないやん!」
確かに、他の男子より数パーセントだけはかっこよく見えるけど、そんな一際目立ってとかちゃうし!
「あっ、また当てた。」
さっきからずっと一進一退の攻防が続いている。予選のときは久志の独壇場だったが、今はそれに慣れたのか、そうはいっていない。ずっと調子が良かったあの曲がるボールも捕られるようになってきたし、なんというか、普通になった感じだ。
それにしても、何で久志のことが自然と視界に入るようになったのだろう。気づけば追っちゃってるというか、なんというか…
「…………」
今はいいや。試合見とこ。
〇〇〇〇〇
「ッチッ」
また捕られた。さっきから決まんねぇ。試合ももうすぐ後半やのに、そこまで差が開いてねぇ。
「焦んな。もうすぐあれが入ってくる。」
「分かってる。」
審判の手にソフトバレーボールが握られたのが見える。
「あれさえ入ってくりゃあ。」
少しずつ削られていく仲間たちを見ながら、俺はそう呟いた。
〇〇〇〇〇
何とか攻略できた。
「ハァハァ」
それにしても、この試合は疲れるな。体力がみるみる減っていく感じがする。
「また減った。」
もう何人目かも分からない。内野から外野に出ていく奴らを見るのは。
審判がソフトバレーボールを投げこもうとする。
「ソフトバレーボール投入!」
放送部のアナウンスが聞こえてきて、ボールが俺たちの方に飛んできた。
〇〇〇〇〇
相手から飛んできたソフトバレーボールは力なく落ちてくる。それを俺はしっかりとホールドし、助走距離をとった。
何かやってくるなという目をする奏。当たり前だろと目を合して返す。試合は盛り上がっているはずなのに、何故かここだけ音がないみたいだった。
ボールを握る。今まで2試合、あの無回転ボールは見てきただろう。でも残念だな。キレが違ぇんだわ。
俺が投げたボールは、少し上の方に飛ぶ。そして、奏の手前で、何かに吸い込まれるように落ちていく。ほんの0.5秒の間の出来事だ。1度でも瞬きしたら、もうついていけない。そして、追い討ちをかけるように右に曲がる。奏はその動きについていけず、ボールを零した。
「ウォォォォォォォォ!」
「なんやあれ!」
「やってた他2人と全く違ぇ!」
外野が盛り上がっている。それでも、俺は奏から目を離さない。
奏が外野に出る。そして、ソフトバレーボールを持った。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
善意一〇〇%の金髪ギャル~彼女を交通事故から救ったら感謝とか同情とか罪悪感を抱えられ俺にかまってくるようになりました~
みずがめ
青春
高校入学前、俺は車に撥ねられそうになっている女性を助けた。そこまではよかったけど、代わりに俺が交通事故に遭ってしまい入院するはめになった。
入学式当日。未だに入院中の俺は高校生活のスタートダッシュに失敗したと落ち込む。
そこへ現れたのは縁もゆかりもないと思っていた金髪ギャルであった。しかし彼女こそ俺が事故から助けた少女だったのだ。
「助けてくれた、お礼……したいし」
苦手な金髪ギャルだろうが、恥じらう乙女の前に健全な男子が逆らえるわけがなかった。
こうして始まった俺と金髪ギャルの関係は、なんやかんやあって(本編にて)ハッピーエンドへと向かっていくのであった。
表紙絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストです。
世見津悟志の学園事件簿
こうづけのすけ
青春
高校二年生の世見津悟志が紡ぐ、怪奇なことがよく起こるこの学校と地域の伝承伝説に触れてゆく。個性豊かなクラスメイトと、土地を訪ねるごとに関りを持つ人々。世見津悟志が、青春と怪奇な世界とを行き来する学園青春サバイバルサスペンス。
漫才部っ!!
育九
青春
漫才部、それは私立木芽高校に存在しない部活である。
正しく言えば、存在はしているけど学校側から認められていない部活だ。
部員数は二名。
部長
超絶美少女系ぼっち、南郷楓
副部長
超絶美少年系ぼっち、北城多々良
これは、ちょっと元ヤンの入っている漫才部メンバーとその回りが織り成す日常を描いただけの物語。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。
電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。
ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。
しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。
薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。
やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
なかたにりえ
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
陰キャには陽キャの彼女はできないと仮定する
136君
青春
高校2年理系コースに進んだ主人公、橘悠人は根っからの陰キャだ。休み時間はカバーの被ったラノベを読み、学校が終わったら一人で帰る。昼飯も一人で食べ、学校で口を開くのは授業で当たったときくらいだ。
そんな悠人の隣に座っているのは渡月ちはや。クラスの一軍女子に位置する陽キャで、ファンクラブもある。悠人はそんなちはやに話しかけられるようになった。
「陰キャ」と「陽キャ」の世界は2分されていると考える悠人。そんな悠人とちはやの時間がゆっくりと進み始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる