陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

ムカシハ

初回授業again②

「んで、曲のイメージは？」
「「任せる！」」


「って言われてもなぁ…」

ファミレスから帰ってきて自室。作詞ノートではなく、裏紙を机の上に置いて、頭を抱えている。

　正直、曲のイメージが湧かない。いつもなら桜か自分のことを書くことが多いが、今回ばかりは戸津井さんの高2デビューのための曲。戸津井さんの特徴を書けたらいいのだが、俺自身あまり知らないので、それが余計に悩む要因だ。

　戸津井さんのイメージとしては『陰キャ』、『演技が上手い』くらい。『仮面を被る』ってより『その役になりきる』って印象だ。俺にはなれなかったタイプの陰キャ。桜はどっちかいうと『仮面を被る』タイプの陰キャで、そっちの方が話しかけやすいのは本当だ。

　そんな人を『ぼっち』の俺が書けるのか？こればっかりは俺の想像力に任せるしかない。

　俺が歌詞を書くときは、メロディーも一緒に流しながら書くことがほとんどだ。指でリズムを作って、それに当てはめる。今回もそれは試したが、それでも浮かばなかった。それなら、完全詞先で書いた方が…

『僕は暗いままさ
　誰にも触れられないほどに
　憐れんだ目を　しないでくれよ
　僕が惨めみたいじゃないか
　特に光らないさ
　擦っても綺麗にならないし
　それならいっそ　割って捨ててよ
　僕はそれがいいさ

　君のさらけだしたその心を
　舐め合えたなら

　僕は
　光の仮面を隠せずに
　傷ついた心隠せずに
　引き攣った笑顔作って　夢を見てる
　きっと
　素直に笑い合えたのなら
　隠さず言葉交わせたなら
　君の顔を見れたはずさ


　僕の居場所はないさ
　時間が過ぎていくほどに
　蔑んだ目を　しないでくれよ
　僕は僕で頑張ってんだ
　別に構わないさ
　ただ独りいつものヒステリー
　忘れちゃったよ　記憶にないよ
　ただ話しかける言葉

　君のさらけだしたその心を
　舐め合えたなら

　僕は
　言葉の剣先を隠せずに
　態度の銃弾を隠せずに
　君が傷ついたのを見て　笑ってる
　きっと
　偽善者なんていなくなれば
　同情が全てじゃなくなれば
　僕の居場所はあった


　君のさらけだしたその心を
　触り合えたなら

　僕は　君と
　楽しかったなら笑い合い
　悔しかったなら慰めて
　肩を抱き寄せあって　泣いている
　きっと
　探していたのはこれなんだと
　分かっててもなおつけるのは
　光の仮面だけ』

出来た歌詞は、さっきファミレスで作ったグループに送る。1分もしないうちに『既読2』になり、

『KaKo:あとで音も送って
　　　   軽くイメージできてるやろ』
『くるみ:由良君の私に対するイメージよw』

ひとまず、この歌詞でいいみたいだった。