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ウソツキ

オトコハ③

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―ピーンポーン

緩い雰囲気のインターホンが鳴る。音変わったか?

『はーい!』
「きい、来たぞ!」
『待っててね~!』

家の中からドタドタと音がする。ちょっとしてからドアが開いた。

「おっはよー!」
「よっ、今日も元気やな!」
「人は毎日元気じゃないと!」
「そう言ってる奴がクラスで1番静かとかウケるわ~。」
「それ言うなし!」

最近きいとは、小学生の頃のノリに戻ってきている。まぁ、今までも近いものだったが、より軽いノリになってきたというか。

「それ言うなら、ひい君も桜たちとしか喋ってないやろ。」
「あいつら以外と喋る必要ないからな。」
「うわっ、超ひねくれ発言。録音しといてよかったぁ。」
「ちょっ、消せって。」
「その右手に持ってんのを渡してくれたらいいよぉ。」

あんまり見えないように体の後ろに隠していたが、バレていたか。渡すつもりだったし、今でもいいか。

「はいはい、これホワイトデーな。」
「ニシシ。ありがと。」
「どいたま。」

中身は普通のチョコレート。家には杏と桜がいるから隠すのに気を遣ったが、ここまで持ってきたら何ともない。中身はもちろんチョコレート。ちゃんとお高めのやつを買った。値段が物を言うはずは無いが形だけはな。

「おぉ美味しそう!ありがとね!」

きいは何故か暗い表情だ。本当に女心ってやつ理解不能だ。

「どうする?うちでお昼ご飯食べてく?」
「そうだな。ちょうど腹減ってきたし。たまにはそういうのもアリかな。」
「じゃあ入った入った!」

とりあえず、桜に連絡をとって中に入る。返事は『うい』だけだった。

 ぶっと2人で遊んでいたのに、豹変したというのはこういうのだと思う。ダボッとした部屋着にエプロンをしてキッチンに立つきいは、制服とはまた別の魅力がある。エプロン、恐るべし。実際、素材はいいんだから、それなりの格好をすればモテると思うんだが、そんなことは本人には言えないので黙っておこう。

 俺の記憶では、調理実習でダークマターを作りまくってたのが新しいが、今日のはちゃんとしたやつが出来ていた。

「最近オムライス作れるようになったんやで!ええやろ!」
「あの頃と比べたらな。」
「ぐうの音も出ません。」
「まぁ、成長したってことで。」

いつもの距離感、いつものテンポ。俺たちはこれでいい。心からそう思った。
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