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ウソツキ

キュウソク!!

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「奏!交換しよ!」
「ん?ほらよ。」

私は奏が差し出した豆腐豚まんをパクッと齧る。私の抹茶まんも差し出すと、奏はそれを齧った。

「おいひいね!」
「こっちもいいな。」

抹茶の苦味にほんのりと混じる豆腐の甘味を噛み締めて、三年坂を降りる。こっちの坂は人でいっぱいで、少し気を抜くとはぐれそうだ。

「入りたいところあったら何時でも言えよ。」

そんなこと言いながらさりげなく手を握ってくれる私の彼氏を横目に見ながら、良さげな店を探す。

「ここ入ろ!」

と私が指さしたのは漬物屋。最近はここの店の漬け物はスーパーで売っているが、やっぱり種類が少ないし。こういうところで買いたかったし。

「あぁ、朝のご飯のあてがなくなってきたのか。」
「そこ当てんな。」

奏は中に入るなり、ゆず系のやつを片っ端から見ていた。

「奏、悩まないの?」
「この店、八坂神社の近くにもあるだろ。そっちによく行くから。」
「ふぅーん…オススメある?」
「『むらさきの』にはハズレは無いし、『たけのこかつお』は美味いぞ。」
「じゃあそれと、この『ゆずの香り』にしておこ。すみませーん。」

私は奏のオススメと、奏が買ってたやつを買って、店を出た。なんか、奏の顔が赤いな。

「どうしたの?」
「別に。」

握る手は熱かった。

 電車に揺られて帰り道。乗り換えるのがめんどくさかったので準急だけで帰っている。萱島までは各停だから、最寄りの光善寺まで全部止まる。

「ねぇ、奏。なんで文Iにしたの?理系行けるでしょ。」
「……………」
「私に合わせようとした?」
「……………」

もしそうなら、なんか嫌だ。一緒になれるかもしれないけど、嫌だ。

「俺さ…」

奏が消えそうな声で口を開く。

「本が好きなんだ。書くのじゃなくて読むのが。それで現国その点数かよって感じだけど、これから、色んな作品に出会ってそれを読みたい。その行間を読みたい。だから文I。」
「そっか、なら良かった。私のせいじゃなくて。」
「んな訳ねぇだろ、バ楓。」

私は奏の肩に頭を倒す。茜色の太陽だけが私たちを照らし、車輪の音が一定のリズムで聞こえてくる。

「私が書くの好きなの知ってるでしょ。」
「あぁ、知ってる。」
「また今度、読んでよ。小説好きとして。」
「いずれな。」

繋いだ手を強く握って、私は眠りについた。
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